株高不況 株高不況

両論併記のFOMC 議事要旨 利上げは止めても利下げはしない

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月137程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは23年3月までにFF金利(誘導目標上限値)を5.25%へと引き上げるだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+0.4%、S&P500は+0.8%、NASDAQは+0.7%で引け。VIXは22.0へと低下。
  • 米金利カーブはブル・フラット化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.197%(▲5.9bp)へと低下。実質金利は1.475%(+0.0bp)へと上昇。
  • 為替(G10)はJPYが独歩安。USD/JPYは132半ばへと上昇。コモディティはWTI原油が72.8㌦(▲4.1㌦)へと低下。銅は8252.0㌦(▲69.5㌦)へと低下。金は1859.0㌦(+12.9㌦)へと上昇。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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経済指標

  • 12月米ISM製造業景況指数は48.4と2ヶ月連続の50割れ。生産(51.5→48.5)が50を割れ、新規受注(47.2→45.2)は一段と低下。反対に雇用(48.4→51.4)は50を回復。サプライヤー納期(47.2→45.1)は短縮し供給制約の解消を示唆。この間、在庫(50.9→51.8)は積み上がった。短期的な生産活動を予想する上で有用な新規受注・在庫バランスは低下。1月ISM製造業が3ヶ月連続で50割れとなる可能性を示唆した。

図表6
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図表7
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図表8
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  • 11月JOLTS求人件数は前月比▲0.5%、1046万件となり市場予想(1005万件)を上回った。経済活動全般が落ち込んでいるにもかかわらず、求人件数は8月以降、概ね横ばいで推移しており企業の採用意欲がなお強いことを示した。平均時給の先行指標として注目される自発的離職率は2.6%へと低下。もっとも、パンデミック発生前の水準をなお大幅に上回っており賃金上昇圧力が強く残存していることを示唆する水準にある。

図表9
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図表10
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図表11
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注目点

  • 12月13-14日に開催されたFOMC議事要旨が公表された。12月FOMCはそれまで4会合連続で75bpだった利上げ幅が50bpへと縮小した会合であり、それ自体はハト派方向への傾斜であった。しかしながら同時に発表されたドットチャートはタカ派的な仕上がりとなり、また経済見通しは悲観的な方向に修正され、インフレ沈静化に相応の代償を払うことをFedが覚悟していることを示した形であった。以下で、どのような議論があったのか整理する。

  • まず議事要旨の総括的意見として「インフレ抑制に向けた利上げを継続しつつも経済成長へのリスクを限定的とする方法で進められるよう、全ての参加者が積極的な利上げペースを緩める見解で一致した」、「参加者はインフレ率を目標である2%に戻すという強いコミットメントを再確認した」との記載があった。  

  • 次に景気についてはGDPでみた経済活動が2022年入り後に明確な減速基調にあるにもかかわらず、労働市場が依然として不可解なほどに堅調な状態にあるとの認識が示された。このことは賃金の上昇圧力が強く残存し(家賃を除いたベースの)コアサービス物価が高止まりすることを意味する。議事要旨では、複数の参加者が名目賃金とコアサービス物価が高止まりしていることに対して警戒を示していた。  

  • 景気に対する慎重論(≒ハト派)としては、低所得者層の貯蓄が従来予想していたよりも早いペースで減少していることに対して懸念が示された。マクロでみた貯蓄は経済全体を下支えすると期待されるものの、その大部分は高所得者層に保有されているため、インフレ率が高止まりし低所得者の生活が圧迫されると経済が混乱する可能性があるとの懸念であった。その上で金融引き締めが行き過ぎてしまった場合、それは高失業率等を通じて「最も脆弱な人々に最も大きな負担をかける」との懸念も示された。Fedが低所得者層の動向を特に注視している様子が窺える。

  • 政策金利の見通しについては「2023年にFF金利の目標を引き下げ始めることが適切であると予想する参加者はいなかった」と明記された。この文言には議事要旨内の随所で触れられている「誤解」に対する懸念が現れている。ここでいう誤解とは「利上げ幅縮小→金融引き締め停止→長期金利低下→資産価格反発」というルートで金融引き締め効果が一部相殺されてしまい、結果的にインフレ率が高止まりしてしまうことを指す。議事要旨には「複数の参加者が利上げペースの鈍化が物価安定目標達成に向けた委員会の決意の弱まりを示すものではないことを明確に伝えることが重要だと強調した」との記載があった。

  • 今回の議事要旨はタカ・ハトの両論併記となりバランス重視の姿勢が伺えた。過剰な金融引き締めが景気をオーバーキルしてしまうことに強い警戒感が示された反面、早期の引き締め停止(ないしは利下げ開始)がインフレ退治の失敗に繋がり、経済活動の混乱が長期化してしまうリスクに対する懸念も示された。金融政策の行方は引き続きインフレ次第であるが、筆者の感想として今回の議事要旨ではやや景気に配慮する姿勢が目立ったように思える。ISM製造業が2ヶ月連続で50を割れるなど景気後退を示唆するデータが増加していることに鑑みると、先行きは徐々に景気に配慮する方向へと傾斜していく可能性が高いと判断される。

藤代 宏一


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