株高不況 株高不況

弱まることはあっても止むことは期待しにくい株式市場への逆風

グローバル製造業PMI が50 を割れても金融引き締めは続く

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月133程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施。利下げは23年後半以降だろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+0.6%、S&P500は+0.7%、NASDAQは+0.6%で引け。VIXは25.5へと上昇。
  • 米金利カーブはベア・フラット化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.416%(▲3.4bp)へと低下。実質金利は0.897%(+8.7bp)へと上昇。
  • 為替(G10)はUSDが中位程度。USD/JPYは144前半へと上昇。コモディティはWTI原油が83.5㌦(+1.6㌦)へと上昇。銅は7810.5㌦(+188.0㌦)へと上昇。金は1710.6㌦(▲7.6㌦)へと低下。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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注目点①

  • ECB理事会は大方の予想通り75bpの利上げを決定し、中銀預金金利は0.75%とされた。ラガルド総裁は「今後数回(several)の会合で利上げを継続する」として、追加利上げを事実上確約。「数回」の定義については「2回を意味するかもしれないし、5回未満を意味するかもしれない」として曖昧さを残したが、ガス供給次第ではあるもののインフレ見通しが高止まりしている現状を踏まえると、年内の利上げ継続は既定路線と考えられ、次回以降も50~75bpの利上げ幅が有力視される。OIS金利から逆算した中銀預金金利の予想値は年末時点で1.75%程度、2023年央に2.4%程度となっている。

注目点②

  • 8月グローバル総合PMIは49.3となり2020年6月以来の50割れを記録。 製造業PMIは50.3、 サービス業PMIは49.2とそれぞれ7月から低下した。地域別の総合PMIは米国(44.6)が異例の低水準にあるほか、ユーロ圏(48.9)も軟調。アジアでは中国(53.0)が底堅さを維持した反面、日本(49.4)は50を割れた。

  • 製造業PMIの内訳は生産(50.0→49.4)が50を下回り、新規受注(48.9→48.2)は2ヶ月連続で50を割れた。雇用(50.4→50.4)は横ばい、中間投入を示す購買品在庫(52.1→51.6)は小幅低下、サプライヤー納期(57.2→55.2※筆者による符号調整済、数値上昇は納期長期化を示す)は短縮化した。昨年夏頃から異常値的な水準に上昇(長期化)していたサプライヤー納期がここへ来て短縮化したその背景は、半導体不足解消といったサプライチェーン修復要因も然ることながら需要減衰の影響が大きいと推察され手放しで喜べる結果ではない。

図表6
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図表7
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図表8
図表8

  • 世界的に財政政策の効果が剥落する中、主要国(除く日本、中国)の金融引き締め効果が発現し、財需要は明確な減少傾向にある。サプライチェーン修復に伴って自動車生産が回復傾向にある反面、IT関連財はコロナ特需の終焉と相まって減産傾向にある。台湾の製造業PMIが42.7(7月44.6、6月49.8)と異例の低水準に落ち込んだことがそれを象徴する。韓国(49.8→47.6)も弱かった。そうした下で生産活動の先行きを読む上で有用な新規受注・在庫バランスは45.5へと落ち込み、生産活動の更なる減速を示唆。それと整合的に受注残(49.5→49.2)が減少傾向にあることに鑑みると、グローバル製造業PMIの50割れは時間の問題と言っても過言ではない。生産活動が好転するには高インフレが終息し、米国や欧州における個人消費回復が必要となる。欧米のサービス業PMIが軒並み50を割れている状況で生産活動の復調は見込み難い。

図表9
図表9

  • 金融市場目線ではグローバル製造業PMIの基調反転を見るまで株式市場に対して強気になれない。過去、リーマンショック時を除くとグローバル製造業PMIの50割れは、政策当局が景気浮揚策(金融緩和、財政出動)を強化する時期に概ね一致してきたことから、株価の大底を拾う時機を推し量る上で有効な尺度であったが、今次局面においてそれが機能するかは微妙。PMIが50を割れたとしても、欧米中銀の金融引き締めが終わると考えにくく、株式市場への逆風は弱まることはあっても止むことは期待しにくい。

図表10
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藤代 宏一


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