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ポスト・ジョンソンの中間ラップ

~スーナク候補が当確、残り1席をトラス・ベイドノック候補が争う展開か~

田中 理

要旨
  • ジョンソン首相の後継選びは、スーナク元財務相が議員票を固める一方、二番手につけるモーダント通商政策担当相の勢いが失速。党員による決選投票に進出するのは、スーナク候補が当確、残り1席を強硬離脱派が支持するトラス外相とベイドノック元レベリングアップ担当相が争う。強硬離脱派の票が5回目の投票で一本化するため、モーダント候補の決選投票進出は困難とみられる。決選投票の世論調査は、減税に消極的なスーナク候補がトラス・ベイドノックの両候補に敗れるものが多いが、やや差を詰めており、今後の選挙戦の動向次第で流動的。

英国では18日、ボリス・ジョンソン首相の辞任表明に伴う与党・保守党の後継党首選の3回目投票が行われ、リシ・スーナク元財務相、ペニー・モーダント通商政策担当相、リズ・トラス外相、ケミ・ベイドノック元レベリングアップ担当相の4名が19日の投票に残った(図表1)。2回目の投票で脱落した党内右派のスエラ・ブレイヴァーマン法務長官の支持票は、穏健派のスナク候補(前回より14票増加)、右派のトラス候補(7票増加)とベイドノック候補(9票増加)に分散した模様。二番手につけるモーダント候補(1票減少)、今回の投票で脱落したトム・トゥーゲンハート下院外交委員長(1票減少)は得票を減らした。

図表1
図表1

スーナク候補が順調に議員票を固める一方、ジェンダーを巡る発言や過去の閣僚職でのパフォーマンスが疑問視され、モーダント候補の勢いは失速気味だ。モーダント候補の失速は、党員を対象に誰が次期党首に相応しいかを尋ねた世論調査でも確認できる。党首選の開始直後はトップを走っていたが、最新の調査では3番手に転落した(図表2)。4人の候補は今後、議員投票でさらに2名に絞り込まれる。4回目の投票では、脱落した穏健派のトゥーゲンハート票をモーダント候補が集められるか、トラス・ベイドノックのどちらの右派候補が落選するかに注目が集まる。上位2名による決選投票に進出するのは、議員の幅広い支持を集めるスーナク候補が当確。残り1席を、穏健派のモーダント候補と、強硬離脱派が支持するトラス・ベイドノック両候補が争う。5回目の投票では強硬離脱派の票がトラス・ベイドノックの何れかに一本化されるため、モーダント候補が脱落する可能性が高い。党員による決選投票は、スーナク候補と強硬離脱派が支持するトラス・ベイドノックの何れかの候補の争いとなろう。ベイドノック候補に勢いがあるが、トラス候補との13票差を逆転するには、トゥーゲンハート票をどれだけ取り込めるかが鍵を握る。4回目の投票では、決選投票を睨んでスーナク票の一部が戦略的に別の候補に流れる可能性もある。

図表2
図表2

保守党員を対象とした決選投票の世論調査では、スーナク候補がトラス・ベイドノックの両候補に敗れるものが多い(図表3)。物価高騰による国民生活への打撃が続くなか、減税に消極的なスーナク候補には逆風が吹いている。ただ、両者の差がここにきて縮まっており、今後の選挙戦の動向次第で流動的とみられる。

図表3
図表3

以上

田中 理


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