日本病
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テーマ:6月短観から見た22年度業績見通し

~運輸、対個人・宿泊・飲食サービスに大幅上方修正期待。円高気味の想定レートにも注目~

永濱 利廣

要旨
  • 6月短観における22年度の収益計画によれば、売上高は増収幅拡大だが、経常利益については減益計画のままである。ロシアのウクライナ侵攻などに伴うコスト高に加えて、中国のロックダウンも重なったことで鉱工業の出荷在庫バランスがマイナスとなっており、循環的な景気後退への警戒が強まっていることが利益計画の足を引っ張っているものと推察される。
  • 売上高計画の上方修正が目立ったのが、ロシアのウクライナ侵攻に伴う価格上昇や代替需要が期待される「石油・石炭製品」や「電気・ガス」「鉄鋼」。中国ロックダウン解除に伴う世界的な部品不足緩和の恩恵を受ける「造船・重機、その他輸送用機械」や「生産用機械」の上方修正も期待される。
  • 経常利益計画を基に大幅上方修正が期待される業種を見ると、新型コロナに対する国民の恐怖心低下や観光支援策再開などに伴う経済正常化の恩恵を受けそうな「運輸・郵便」「対個人サービス」「宿泊・飲食サービス」、中国のロックダウン解除に伴う供給増が期待される「生産用機械」「繊維」と続く。
  • 大企業製造業の想定為替レートは、2022年度にドル円で116.6円/$、ユーロ円で130.4円/€だが、足元のドル円レートは130円台を大きく上回っている。中でも円高方向に今期の為替レートを想定しているのが、むしろ円安が恩恵になるとは限らない「宿泊・飲食サービス」だが、「自動車」をはじめとした輸出関連業種も足元よりかなり円高気味の水準を想定。
  • 今後、コロナの感染状況やロシアのウクライナ侵攻の動向、米国の景気後退懸念などによりリスクオフになり、各国中銀の金融引き締め姿勢が後退するなどして為替レートの水準が円高方向に進まなければ、こうした今期の為替レートを円高方向に想定している業種に属する企業を中心に今期業績が修正される可能性がある。

上方修正も増収減益計画は変わらず

7月1日と4日に公表された6月短観の大企業調査は、5月下旬~6月下旬にかけて資本金10億円以上の大企業約1900社に対して行った調査であり、先月公表された法人企業景気予測調査に続いて、今期業績予想の先行指標として注目される。

そこで本稿では、同調査を用いて、7月下旬から本格化する四半期決算発表で今年度業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。

資料1は、6月短観の調査対象大企業(全産業、除く金融)が計画する半期別売上高・経常利益前年比の推移を見たものである。まず売上高を見ると、22年度は下期にかけてプラス幅が縮小するものの、上期・下期とも上方修正となっている。

一方、経常利益を見ると22年度上期は前回から上方修正となったものの、22年度下期は大幅下方修正になっている。このことから、企業は四半期決算発表で22年度の企業業績見通しを引き続き慎重に出してくることが予想される。

資料1 大企業の半期別売上高と経常利益計画
資料1 大企業の半期別売上高と経常利益計画

つまり、産業全体で見れば、売上高の半期ごとの伸び率は前年比で上方修正される一方、経常利益については引き続き減益計画になっているということである。特に、年度明け以降は電子部品デバイスのみならず、鉱工業全体の出荷在庫バランス(出荷前年比―在庫前年比)のマイナス幅が拡大しており、ロシアのウクライナ侵攻などで輸入原材料価格が高騰しているところに中国のロックダウンが重なったことから、景気循環的に厳しい状況にあることも慎重な収益計画の後ろ盾になっている可能性がある。

出荷在庫バランス
出荷在庫バランス

売上高大幅上方修正の「石油・石炭」「その他輸送用機械」「電気・ガス」

続いて、6月短観の売上高計画を基に、大幅上方修正が見込まれる業種を選定してみたい。資料3は22年度の業種別売上高計画の前年比と修正率をまとめたものである。

結果を見ると、22年度は「物品賃貸」と「小売」を除く全ての業種で増収計画となる中で、最大の上方修正率となっているのが製造業の「石油・石炭製品」で+17.1%である。それに続くのが「造船、重機、その他輸送機械」の同+12.7%、非製造業の「電気・ガス」で同+9.7%である。

まず、「石油・石炭製品」や「電気・ガス」「鉄鋼」などについては、ロシアのウクライナ侵攻に伴う鉱物性燃料や金属の世界的な供給不足に伴う価格上昇や代替需要の増加が想定されている可能性が推察される。

一方、「造船・重機、その他輸送用機械」や「生産用機械」などでは、中国ロックダウン解除などに伴う世界的な部品不足の緩和等により、供給の拡大を見込んでいることが推察される。従って、次の四半期決算における業績見通しでは、こうした業種に関連する企業について売上高計画がどの程度上方修正されるかが注目されよう。

資料3 大企業の売上高計画(6月短観)
資料3 大企業の売上高計画(6月短観)

経常利益大幅上方修正期待は「運輸」「サービス」「生産用機械」

続いて、6月短観の経常利益計画から大幅上方修正が期待される業種を見通してみよう(資料4)。結果を見ると、上方修正率が最も大きいのは新型コロナに対する国民の恐怖心低下や観光支援策再開等による経済正常化を期待する「運輸・郵便」「対個人サービス」や「宿泊・飲食サービス」となる。それに続くのが、中国のロックダウン解除に伴う供給増が期待される「生産用機械」や「繊維」となる。

このように、次の四半期決算で経常利益見通しの上方修正が期待される業種としては、新型コロナに対する国民の恐怖心低下や観光支援策再開等よる経済正常化期待の恩恵を受けることが期待されるサービス関連産業に加えて、中国ロックダウンの解除の恩恵を受けやすい製造関連等が指摘できる。

資料4 大企業の経常利益計画(6月期調査)
資料4 大企業の経常利益計画(6月期調査)

為替レートの変動で業績が修正される可能性も

なお、6月短観の収益計画では、企業の想定為替レートも公表されることから、業種別の想定為替レートも今後の業績見通しの修正の可能性を読み解く手がかりとして注目したい。

資料5にて実際に今年度の想定為替レートを確認すると、大企業製造業における事業計画の前提となる想定為替レートはドル円で116.6円/$、ユーロ円で130.1円/€となっている。しかし、足元のドル円レートは130円台を大きく突破している。

中でも、製造業で足元のドル円レートよりも特に円高で今期の為替レートを想定しているのが「宿泊・飲食サービス」の113.0円/$、「情報サービス」の114.9円/$となっている。

なお、輸入依存度の高い内需関連産業は円安でむしろ業績の下押し要因となる企業も含まれており注意が必要だが、特に輸出関連の製造業が116円/$台と円高気味の想定をしていることに注目すべきだろう。

以上の結果を踏まえれば、今後はコロナの感染状況やロシアのウクライナ侵攻の動向、更には米国の景気後退懸念などに伴うリスクオフを通じて、各国中銀がこれまでよりも金融引き締めに後ろ向きな姿勢を示す等して為替レートの水準が円高方向に進まなければ、こうした今期の為替レートを円高方向に想定している業種に属する企業を中心に今期業績が修正される可能性があることにも注目すべきだろう。

資料5 大企業の想定為替レート(22年度)
資料5 大企業の想定為替レート(22年度)

永濱 利廣

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済長期予測、経済統計、マクロ経済の実証分析

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