- Market Flash
-
2022.06.01
金融市場
マーケット見通し
株価
為替
金利
景気後退懸念と金融政策 悪いは良い(Bad news = Good news)の時間帯か
藤代 宏一
- 要旨
-
- 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
- USD/JPYは先行き12ヶ月125程度で推移するだろう。
- 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
- FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施するだろう。
金融市場
- 前日の米国株は下落。NYダウは▲0.7%、S&P500は▲0.6%、NASDAQは▲0.4%で引け。VIXは26.2へと低下。
- 米金利はカーブ全般で金利上昇。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.653%(▲0.6bp)へと低下。実質金利は0.191%(+11.1bp)へと上昇。
- 為替(G10)はJPYが最弱。USD/JPYは128後半へと上昇。コモディティはWTI原油が114.7㌦(▲0.4㌦)へと低下。銅は9447.5㌦(▲95.5㌦)へと低下。金は1842.7㌦(▲8.6㌦)へと低下。
経済指標
- 5月米CB消費者信頼感指数は106.4へと4月(108.6)から小幅低下。期待(79.0→77.5)と現況(152.9→149.6)が共に悪化した。ドライブシーズンを迎えるなか、ガソリン価格上昇が景況感を圧迫したとみられる。雇用統計の先行指標として有用な雇用判断DIは39.3へと2ヶ月連続で低下し2021年5月以来の低水準へと下落。求人件数は歴史的高水準で高止まりしているものの、企業の先行き見通しが慎重化していることもあり、求職者優位の状況に変化が生じている可能性が示唆される。先行きの企業マインド慎重化を示すものとしてはNY連銀やフィラデルフィア連銀の製造業調査があり、6ヶ月先の業況や雇用を問う項目は何れも下向き基調にある。
- 3月ケース・シラー住宅価格指数は前月比+2.42%、前年比+21.17%と上昇再加速。3ヶ月前比年率では+24.74%へと伸びを高め、「家賃インフレ」のしぶとさを印象付けた。CPIにおける家賃は高止まりし、高インフレに寄与する構図が続くと判断される。もっとも、住宅ローン金利上昇によって消費者の住宅取得環境は悪化しており、そうした下で最近は新築・中古ともに販売件数は明確な落ち込を示している。販売件数の減少にやや遅れて住宅価格も上昇鈍化が予想される。
注目点
- 本日(6月1日)発表のISM製造業景況指数は「悪いは良い(Bad News=Good News)」の視点が有用だろう。予想コンセンサスは54.5と4月から0.9ptの低下。2021年11月まで60超の異例の高水準が続いた後は下降トレンドにあり、コロナ特需の終焉を物語っている。4月時点では雇用が50.9と50割れが視野に入る水準へと低下していたほか、生産は53.6、新規受注は53.5とそれぞれ水準を切り下げていた。ISM製造業景況指数のヘッドラインを構成するのは生産、新規受注、雇用、サプライヤー納期、在庫。ここからサプライヤー納期を除いた指数は4月時点で52.4まで低下しており、50割れが懸念される状況にあった。

-
金融市場目線では、ISM製造業の落ち込みは必ずしもネガティブではないだろう。景気の先行指標として代表的存在であるこの指標の悪化は、Fedのタカ派傾斜を抑制し得る材料になると考えられる。5月のヘッドラインが予想コンセンサスどおり54.5へと低下し、6月以降も低下が続き、夏場に50割れが目前の状況になれば、さすがにFedは景気に配慮する姿勢を強めると考えられる。現在のところFedはインフレ退治を最優先課題として、中立金利とされる2.4%を上回る水準へと政策金利を引き上げることを事実上宣言しているが、6月と7月に累積1.0%ptの利上げを実施し、政策金利(誘導目標上限)が2.0%に達すれば、利上げに「慎重さ」を求める声がFedの内外から上がるだろう。9月FOMCの利上げ幅を25bpに戻すのか、それとも50bpを継続するのか、その議論が最も活発になるであろう夏場にISM製造業が50を割れていれば、景気のオーバーキルを懸念する声が大きくなるのは自然な流れだろう。
-
実際、金融市場ではFedが金融引き締めの手を緩めざるを得ない状況に直面することを見越した動きもみられている。例えば、FF金利先物(23年6月限)は5月FOMC(3-4日)前後に3.3%程度まで上昇した後、現在は3%近傍まで低下している。この間の変化といえば、ボスティック・アトランタ連銀総裁が9月FOMCにおける利上げの「一時停止」の可能性に言及したことも重要だが、それよりもマクロファンダメンタルズの悪化が大きいだろう。経済指標は、消費者マインドの悪化が止まらないほか、住宅関連指標は急激な落ち込みを示すものが増えてきた。そこに製造業の景況感悪化を示すデータが加われば、市場参加者の関心は利上げ打ち止め時期とその水準に移行するだろう。政策金利の最高到達水準(ターミナルレート)に関する予想が安定すれば、長期金利の上昇圧力が一服し、金融環境の引き締まり度合いは緩やかになる。
藤代 宏一
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

















