日本株 半導体だけでは支えきれない

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年3月に利上げ開始、年後半にはQTに着手するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。NYダウは▲1.8%、S&P500は▲2.1%、NASDAQは▲2.9%で引け。VIXは28.10へと上昇。
  • 米金利カーブは中期ゾーンを中心に金利低下。利上げ観測がやや後退するなか、リスクオフの受け皿となった。債券市場の実質金利は▲0.494%(▲6.2bp)へと低下。
  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは115を割れた。コモディティはWTI原油が91.8㌦(▲1.9㌦)へと低下。銅は9929.0㌦(▲63.5㌦)へと低下。金は1900.7㌦(+30.5㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 OIS金利
米国 OIS金利

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

経済指標

  • 1月住宅着工件数は前月比▲4.1%と4ヶ月ぶりに減少も3ヶ月平均は増加基調を維持。着工許可件数は+0.7%と基調的な強さが続いた。建設資材と労務費の増加に伴い建築コストが増加し、直近では住宅ローン金利も上昇しているが、これまでのところ大きな影響はみられていない。なお、建設許可済みでありながら未着工の件数(受注残)は28万件へと増加。建設労働者不足が影響したとみられる。

住宅着工(許可)件数
住宅着工(許可)件数

住宅着工(許可)件数
住宅着工(許可)件数

未着工住宅件数
未着工住宅件数

注目ポイント

  • 日本の12月コア機械受注は前月比+3.6%と堅調。製造業が+8.0%と増加した一方、非製造業(船舶・電力除く)は▲0.1%と微減。製造業からの増加をよそに非製造業の停滞が続いている。製造業は電気機械を中心に、はん用・生産、非鉄金属、化学などが増加傾向にあり、ここ数ヶ月は自動車も復調気配にある。他方、内需の先行き不透明感は強く、非製造業の投資は控えめ。建設業、情報サービスなどが底堅く推移する反面、個人消費の停滞を背景に卸売・小売業の弱さが続き、全体として停滞している。先行きは、コロナ感染状況の好転に伴い内需が回復する下、非製造業の設備投資が復調し、全体として水準を切り上げていくと期待されるが、先行き不透明感が強いなか、投資計画が延期される可能性もある。なお、資本財輸出の先行指標である「外需」は前月比▲3.5%と3ヶ月ぶりに減少も高水準を維持。海外の設備投資意欲が維持される下で、一般機械の実質輸出(貿易統計ベース)は今後も底堅く推移する可能性が高い。

機械受注
機械受注

機械受注
機械受注

機械受注
機械受注

  • 株式市場との関連では、機種別の「電子計算機等」が注目される。半導体製造装置が含まれるこの系列は増加が著しく、水準は前回シリコンサイクルのピークを遥かに上回る水準にある。半導体そのものがシェアを失っても製造装置の競争力はなお健在であることを象徴している。ただし受注額の伸び率はさすがにピークアウト感が認められ、これが日本株の重荷になっていると考えられる。実際、「電子計算機等」の受注額と日経平均株価は共に下向きのカーブを描いている。

機械受注
機械受注

機械受注
機械受注

電子計算機等受注額・日経平均
電子計算機等受注額・日経平均

  • 半導体製造装置の受注動向は、電子部品や化学品(半導体部材)など広範なIT関連財と関係を有する。半導体製造装置を直接手掛ける企業の存在感は、必ずしも株価全体の方向感を決めるほど大きくはないが、関連企業を含めると日経平均に大きなインパクトを与え、結果的に両者が連動すると考えられる。半導体製造装置の受注急増が一服する局面において、株式市場では「広義半導体」関連銘柄の業績拡大期待が膨らみにくく、株価指数の牽引役が不在となる。中長期的にみて広義半導体が有望セクターであることに変わりはないが、現在の株価指数を持ち上げるにはエンジンの出力が足りない印象だ。

  • そうなると、日本株を支える役割として内需の重要性が増してくる。当然の結論であるが、今後、広義半導体銘柄の業績ダウンサイドリスクが高まったとしても、個人消費が回復し非製造業の業績ダウンサイドリスクが和らげば、株価指数は底堅く推移する。感染状況が好転した後、サービス業PMI、第三次産業活動指数などで個人消費の回復軌道を注視したい。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。