日銀 「便乗利上げ」を画策中か まずはYCC操作対象年限の短縮から

藤代 宏一

  • 本日の金融政策決定会合では金融政策の現状維持が決定された。注目のコア物価見通しは2022年度が+1.1%へと0.2%pt上方修正され、見通しのリスクは「おおむね上下にバランスしている」とされた。2022年度の「物価のリスク評価」では3名の委員が「上振れリスク」を指摘。輸入物価上昇を予想したとみられる。2023年度は+1.1%へと0.1%pt上方修正された。

  • 14日にロイター通信は英語版記事(のみ)で、日銀関係者の話として「2%の物価目標を達成する前に利上げが可能かどうかを検討している」といった趣旨の記事を報じた。これまで日銀は物価目標を達成する前に金融緩和の度合いを弱める考えはないと繰り返してきた一方で、フォワードガイダンスにそうした記述はなかった。当該記事は、理屈上いつでも利上げが可能であり、一見頑丈そうにみえるフォワードガイダンスに抜け穴があることを改めて認識させた。

  • 筆者は2023年4月の黒田総裁の任期満了に向けて、YCCを主軸とする現行の金融緩和策は修正機運が高まっていくと予想する。現在、世界的な金融政策の潮流は明確な引き締め方向にあり、日銀がそうした流れを好機と捉えて「便乗」する可能性は否定できず、既に画策中かもしれない。緩和修正の理由や動機を探している日銀としては、円安を悪とする声が最近になって増えていることも追い風だろう。実質実効為替レートでみた円の実力低下は、金融緩和の弊害とも一部で指摘されており、そうした空気がYCCの修正を後押しする。

  • マイナス金利撤回までの大きな順序としては、①長期金利操作の対象年限短縮(10年→5年)、②長期金利操作の終了、③短期金利の引き上げが想定される。日銀は2023年4月の黒田総裁の任期満了を見据えて、早ければ2022年度中にも①に向けた地均しを始めるのではないか。

  • 仮にYCC修正に踏み切るとしたら、日銀はどう説明するのか。それは「(政策修正に)金融緩和の度合いを弱める意図はない。修正した方が全体として緩和効果が高まると判断した」というこれまでと似た論法になるだろう。ETFの買入れ基準厳格化を決定した2021年3月19日の金融政策決定会合後の総裁記者会見でも、黒田総裁は「ETFの買入れを減らそうとか、あるいは出口とか、そういうことを考えているわけでは全くありません」、「むしろ今後とも、必要に応じて十分なETF買入れを行う、あるいは行えるように持続性と機動性を強化したということです」と説明した経緯がある。乱暴な表現であることを承知の上で言えば、日銀が「引き締めではない」といえばそれまでであり、YCC修正の根拠に持続的な物価上昇は必要ない。

藤代 宏一

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