工作機械受注が教えてくれる景況感 ピークアウト感鮮明

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月31,500程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年3月に利上げ開始、年後半にはQTに着手するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。NYダウは▲0.6%、S&P500は+0.1%、NASDAQは+0.6%で引け。VIXは19.20へと低下。
  • 米金利はカーブ全般で金利上昇。債券市場の実質金利は▲0.706%(+7.6bp)へと上昇。5年30年金利差は再び低下傾向。
  • 為替(G10通貨)はJPYとUSDが弱く、USD/JPYは114前半で越週。コモディティはWTI原油が83.8㌦(+1.7㌦)へと上昇。銅は9719.5㌦(▲239.0㌦)へと低下。金は1816.5㌦(▲4.9㌦)へと低下。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

米国 長短金利差(5年30年)
米国 長短金利差(5年30年)

経済指標

  • 12月米小売売上高は前月比▲1.9%と予想外に大幅減。ガソリンと自動車を除いた系列も▲2.5%と弱さは変わらず、GDP個人消費の算出に用いられるコア小売売上高は▲3.1%と大幅に減少。季節調整の難しさによって弱さが誇張された疑いはあるものの、インフレ率が高止まりするなか、消費者心理の悪化が消費を抑制した可能性が高い。実際、1月のミシガン大学消費者信頼感指数は68.8へと低下し、パンデミック発生後の最低付近へと落ち込んでいる。ガソリン価格の高止まりが消費者の体感物価を著しく押し上げ、マインド悪化を招いている様子が見て取れる。

  • 12月米鉱工業生産は前月比▲0.1%と微減。製造業生産は▲0.3%であった。自動車生産が▲1.3%と3ヶ月ぶりに減少し全体を下押ししたが、自動車以外も▲0.2%と増産傾向が一服。もっとも、先行きはサプライチェーン問題の解消と共に緩やかな増産が期待される。

米コア小売売上高
米コア小売売上高

米コア小売売上高
米コア小売売上高

ミシガン大学消費者信頼感指数
ミシガン大学消費者信頼感指数

消費者の予想インフレ率・ガソリン価格
消費者の予想インフレ率・ガソリン価格

米国 製造業生産
米国 製造業生産

注目ポイント

  • 日本の11月コア機械受注(内閣府公表、船舶・電力除く民需)は前月比+3.4%と2ヶ月連続増加。製造業は10月の▲15.4%から11月は+12.9%へと反発。非製造業は10月の+16.5%から11月は▲0.8%へと反動減。単月の数値は振れが大きく扱いにくいが、均してみれば製造業と非製造業は共に回復傾向にあると判断される。また資本財輸出の先行指標となる「外需」は前月比+0.7%と増加基調が続いた。海外におけるIT関連財の需要好調、自動車生産の回復が背景にあるとみられる。なお、機種別では半導体製造装置を含む電子計算機等の強さが続いた。

機械受注
機械受注

機械受注
機械受注

機械受注
機械受注

電子計算機等
電子計算機等

  • 12月工作機械受注(日本工作機械工業会)は前年比+40.5%へと伸び率縮小。単月の受注額は1391億円と高水準にあるものの、モメンタム鈍化が鮮明。筆者作成の季節調整値は前月比▲12.1%、1415億円と減少。国内向けは季節調整済み前月比▲8.9%、前年比+61.2%、外需は季節調整済み前月比▲13.9%、前年比+30.6%であった。

  • 外需は高水準を維持するも頭打ち感が鮮明。地域別詳細は確報を待つ必要があるが、11月までの傾向から判断すると米国向けと欧州向けの伸びが続いた反面、アジアが減少した可能性がある。国内向けは自動車からの受注が回復傾向にある一方、一般機械や金属機械は頭打ち感が強まった模様。

  • 工作機械業界は、その受注サイクルが世界経済の包括的指標であるOECD景気先行指数と連動するほか、アナリスト予想(TOPIX予想EPS)とも一定の連動性を有する。決して大きくはない業界規模でありながら世界経済の動向を掴むうえで優れた指標と言える。そこでサイクルの位置取りを確認するために縦軸に工作機械受注の水準(36ヶ月平均からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、現在は右上領域を左方向に進んでおり、最終局面にあると判断される。過去の経験則に従うなら、今後は高水準を維持するも下向きのカーブを描くと予想される。株式市場目線では、受注ピークアウトが警戒される時間帯に突入するだろう。

工作機械受注・予想EPS
工作機械受注・予想EPS

工作機械受注・予想EPS
工作機械受注・予想EPS

工作機械受注
工作機械受注

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。