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2025.10.14
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シリーズZ世代考(8)「就活だけではないZ世代のオヤカクとは?」
~結婚や資産形成などライフデザインへの親の影響~
西野 偉彦
- 目次
1. 内定・内々定の辞退者がいる企業は7割以上
毎年10月には多くの企業で内定式が実施される。内定式では、社長の挨拶や会社説明、内定者同士の交流会などが企画され、入社までのスケジュールの把握や認識共有などを目的に、各社で様々な取組みが行われている。
内定式の時期を迎えた企業にとっての懸念材料は「内定者の辞退」である。内定式から入社までは半年ほどあり、何らかの事情で内定辞退を選択する場合もある。内定者に辞退されれば、企業側は採用のコストを含めて損害を被りかねない。
実際、東京商工会議所が2025年に実施した調査によると、「内定・内々定の辞退者がいる」と回答した企業は、「内定・内々定者の半数以上の辞退者がいる」と「内定・内々定者の半数未満の辞退者がいる」を合わせて73.1%にのぼった(図表1)。

内定辞退の理由は多様だが、いわゆる「超・売り手市場」もその背景の一つといえる。2025年3月に卒業した大学生の就職率は98.0%に達し、好調を維持している(注1)。新入社員の初任給を30万円台に引き上げる企業が続出したことが話題になったように、人材獲得競争が激化するなかで、「内定を辞退しても他の企業に行けるのでは」と考える内定者も一定数いるようだ。
企業側も内定辞退の防止に向けた対策に取り組んでいる。採用担当者からの定期的な連絡や懇談会の実施などが挙げられるが、近年注目されているのが「内定者の親」に対して内定や入社に関する確認を行う、いわゆる「オヤカク」である。東京商工会議所による前述の調査でも、2025年新卒者の採用・選考活動において、企業は親など内定者・内々定者の親族等に対して、「自社へ入社することの意向確認や同意書の取り付け」や「自社の代表者等のメッセージの送付」など、様々な「オヤカク」を行っていることがわかる(図表2)。

2. Z世代の4割以上が「就活について親に相談したことがある」
現在、新規学卒者で就職活動の時期を迎えている世代は、いわゆる「Z世代」にあたる。Z世代は、定義が厳密に定められているわけではないが、おおむね「1990年代半ばから2000年代に誕生した世代」を指しており、2025年現在では10代後半から20代後半にあたる。生まれながらにしてインターネットが利用可能だったことから「デジタル・ネイティブ」といわれ、多様性を重んじる傾向などが指摘されている。
このZ世代が就職活動を行う際には親の影響があるようだ。第一生命経済研究所が2025年3月に全国の18~69歳の1万人に対して実施した調査によると、「就職活動の際、親に相談したり、エントリーシートなどを親に見てもらったことがある」と回答したZ世代(18~27歳)は、「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」を合わせて42.1%にのぼった。一方、Z世代の親にあたる団塊ジュニア世代(50~53歳)では、「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」の合計が24.8%となっている(図表3)。

このように、Z世代が就職活動を行う際には、親の影響が一定程度あることがわかった。こうした背景から、前述のように、Z世代が就職活動を行う企業の採用担当者が内定者の親に内定の確認や入社に向けた説明を行う「オヤカク」を通じて、親による内定辞退を防ぐ効果が期待されている。
就職活動における「オヤカク」については、企業だけではなく政府も紹介している。2025年3月、内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省が連名で、経済団体などに向けて2026年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する文書を発出した。そのなかで、「いわゆる『オヤカク』と称されるものについては、例えば、企業が保護者にも企業情報を提供するなど、入社に際しての保護者の不安を解消し、企業に対する理解を深めることを目的とするケースがある」と記載された(注2)。
3. 「資産形成も結婚も親から助言」というZ世代の特性
このように「オヤカク」は就職活動に関する用語であるが、親の影響はZ世代の就職活動に限らず、他にもライフデザインにおける様々な場面に及んでいる。第一生命経済研究所による前述の調査では、「お金の稼ぎ方や資産形成などについて、親から助言を受けたことがある」については、「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」を合わせてZ世代は42.5%で、その親にあたる団塊ジュニア世代と比較すると約17ポイント高い(図表4)。
また、「結婚の年齢や時期、相手などについて、親から助言を受けたことがある」についても、同じく「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」を合わせてZ世代は38.3%で、団塊ジュニア世代に比べて約12ポイント高くなっている(図表5)。


同じZ世代でも、就職活動と資産形成で「親から助言を受けたことがある」とする割合は、Z世代前期(23~27歳)よりもZ世代後期(18~22歳)の方が高い傾向にある。さらに次の世代(α世代)では、親の影響がより強くなることが予想される。
4. 「オヤカクが普通」の世代へのライフデザイン支援
Z世代が自身の就職活動や資産形成、結婚などのライフデザインを考える際に親の影響が強まっている背景にはいくつかの理由が考えられる。
第一に、不確実性と情報過多である。業界や働き方の変化が速く、終身雇用や年功序列などの前提が変わった結果、「何が正解なのか」が分かりにくくなった。SNSや就職活動サイトなどで情報過多となったことも含め、結果として経験が豊かな親が相談を受けやすくなっている。第二に、家計と生活コストの上昇だ。学費や家賃、物価が上がる一方で手取りは伸びにくく、若者だけで費用を負担するのが難しい。緊急時の資金や子どもの教育などで親の支援が必要となることを通じて、親の子どもに対する意思決定への関与が強まるとみられる。第三に、ライフコースの多様化である。転職・副業・共働きなど人生の選択肢が増えれば増えるほど、自分が目指したいライフデザインが難しくなり、親に助言を求める機会も増える。さらに、コロナ禍以降の社会の不安定さが、子どもにとっての「身近なセーフティーネット」としての親の存在感を押し上げたのではないか。加えて、前述のように、企業も内定辞退や早期離職を防ぐために「オヤカク」を行うなど、親の存在を意識した動きがある。
このような状況が複合的に絡み合った結果として、親は物理的・精神的を問わず「子どものメンター」としての存在感を増し、Z世代のライフデザインにおける意思決定に影響を及ぼす構図ができつつあるのではないか。
こうした背景をふまえ、Z世代のライフデザイン支援としては、親の影響力を考慮しつつ、本人の意思決定を中心に据えていくという視点が大切だ。まず、Z世代が自身のライフデザインについて考え、決定していくための土台を整えることが重要である。そのためにも、職業選択や資産形成、家族形成などのライフデザイン全般について「自分ごと」として学び、将来において適宜判断できるリテラシーを身に付ける機会を学校や地域などでより充実させることが必要だろう(注3)。
この視点は、民間企業が実施している施策にも欠かせない。たとえば、「オヤカク」は親に対する説明を働き方や福利厚生などの情報提供にとどめ、Z世代の内定者自身が最終決定を行うことができるサポートが必要だ。同年代の先輩社員が「内定者のメンター」になるなど、Z世代が抱く様々な不安に寄り添いつつも、自立的に解消していくための工夫が各社で求められる。
以上のような取組みを通じて、様々な場面における親の影響を適切な力に変えつつ、Z世代が自立したライフデザインを構築できるように多面的な支援を行うことが、「オヤカク世代」を考えるうえで重要な視点である。
【注釈】
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現行の学習指導要領における高等学校の家庭科(家庭基礎・家庭総合)にはライフデザインに関する幅広い内容が盛り込まれている。詳しくは文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説【家庭編】」参照。
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西野 偉彦
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

