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シリーズZ世代考(6)「本当にZ世代は政治に関心がないのか」

~投票先を見極めるリテラシーを身に付けるために~

西野 偉彦

目次

1.参院選で最も低い投票率はZ世代

Z世代は、定義が厳密に定められているわけではないが、おおむね「1990年代半ばから2000年代に誕生した世代」を指しており、2025年現在では10歳代後半~20歳代後半にあたる。生まれながらインターネットが利用可能だったことから「デジタル・ネイティブ」といわれ、多様性を重んじる傾向などが指摘されている。

これまで「シリーズZ世代考」と題して、多角的・多面的にZ世代について考察してきたが、本稿では参議院議員選挙に合わせて「Z世代と政治参加」を取り上げる。第27回参議院議員通常選挙(以下、参院選)は、2025年7月3日に公示され、同20日に投開票となった。選挙のたびに指摘されるのは、若者の低投票率である。総務省によると、3年前の2022年7月に実施された第26回参院選での投票率は、全体でも52.05%だったが、特に10歳代は35.42%、20歳代は33.99%となっており、Z世代の約65%が棄権した(図表1)。年代別の投票率で最も高い水準となっている60歳代は65.69%で、Z世代との間は30ポイント程度の開きがあり、世代によって政治参加に大きな差が生じている。

図表
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2.「政治に関心がある」Z世代の割合は他の世代と変わらない

Z世代は政治への関心がないことが原因で投票に行かないのだろうか。「若者は政治に関心がない」と指摘されることがあるが、必ずしもそうとはいえない。2025年3月に第一生命経済研究所が18歳~69歳の10,000人に対して実施した調査によると、「政治に関心がある」に対して、「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した合計割合は、Z世代(18歳~27歳)が44.9%で、他の世代と比較してもほぼ同水準である(図表2)。

図表
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たしかに、割合が最も高い60歳代(新人類世代)とZ世代を比べると10ポイント程度の差があるが、前述のように、実際の選挙(第26回参院選)の年代別投票率における差ほど開いていないことがわかる。

着目すべきは「政治への関心」だけではない。本調査では「自分が動くことで社会を変えることができると思う」についても聞いたところ、「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した合計割合について、Z世代(39.3%)は他の世代よりも高かった(図表3)。

図表
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もちろん、いずれの項目も全体的に高いとはいえないが、それでも一般的に指摘されているように、Z世代が他の世代と比べて「政治への関心がない」とは限らないことが本調査から示されている。

3.Z世代が「政治に関心があり、社会を変えられると思う」のに投票に行かない理由

このように、Z世代は「政治に関心がある」割合が他の世代とほぼ同水準であり、「自分が動くことで社会を変えることができる」割合は他の世代より高い傾向にある。それにもかかわらず、なぜZ世代の投票率は低いのだろうか。

拙稿「シリーズZ世代考(1)『なぜZ世代の投票率は低いのか』」でも述べたように、公益財団法人明るい選挙推進協会による2021年の調査をみると、Z世代の有権者の棄権理由は、割合が多い順に、「選挙にあまり関心がなかったから」(46.7%)、「仕事があったから」(37.8%)、「重要な用事(仕事を除く)があったから」(22.2%)、「政党の政策や候補者の人物像など違いがよくわからなかったから」(20.0%)となっている(注1)。このうち、1位の「選挙への関心」については、前述のとおり、第一生命経済研究所による調査で、Z世代の政治への関心が高まりつつあることが示唆されている。また、2位と3位の「仕事」「重要な用事」については、期日前投票の推進や利便性の高い投票所の増設などで、仕事や用事があっても投票が可能になる環境整備を図ることができるだろう。

棄権理由の上位4番目に挙げられている「政党の政策や候補者の人物像など違いがよくわからなかったから」についてこそ、Z世代が「政治に関心があり、自分が動くことで社会を変えることができると思う」にもかかわらず投票には行かない要因と考えられる。それは、この「政党の政策や候補者の人物像など違いがよくわからなかったから」という意見が、明るい選挙推進協会の同調査において、Z世代だけではなく幅広い世代における棄権理由としても挙げられているからである(注2)。つまり、低い投票率の背景には「政治への関心はあるがどこに投票すればいいのか、わからない」ということがあるといえる。

「政党の政策や候補者の人物像などの違い」を見極める力を身に付けるためには、どのようにすればいいのか。その一つが、主権者教育の充実である。主権者教育とは、「国や社会の問題を自分のこととして捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく」ための教育である(注3)。主権者教育は、2015年6月の公職選挙法改正(選挙権年齢引き下げ)に伴い、全国の高等学校などで本格的に実施されることになった。主権者教育の代表例として、各政党のマニフェスト(政権公約)を比較検討しながら投票について学ぶ「模擬投票」や、国会や地方議会で議論されている政策について考える「模擬議会」などが挙げられる。2022年度からは高等学校などに新科目「公共」が導入され、その中に主権者教育が位置付けられた。2023年5月に公表された文部科学省の調査によると、国公私立高等学校等のうち94.9%で主権者教育を実施している(注4)。

主権者教育をより充実させることによって「政党の政策や候補者の人物像などの違い」を見極める力を養うことができれば、「政治に関心があり、自分が動くことで社会を変えることができると思う」というZ世代は、選挙の際に投票に行くようになるのではないか。  

4.一人一人が「政党や候補者の違い」を見極める力を養うために

もちろん、主権者教育を行う主体は学校だけではない。自治体における投票率向上を推進する選挙管理委員会もその一つである。近年、国・地方を問わず、投票率は低下傾向にあり、各地の選挙管理委員会は様々な投票啓発の活動に取り組んでいる。

たとえば、東京都選挙管理委員会は、2023年5月から「MY争点オンライン」を公開した。これは、有権者が選挙に行く前に「自分の関心がある政策(争点)」について、必要な情報を取捨選択し、意見を持つためのウェブサイトである(注5)。年代にかかわらず全ての有権者が活用できるが、特にZ世代を主な対象としており、「政党の政策や候補者の人物像などの違い」を見極める力を身に付けることを目指している。

昨今の選挙では、SNSを中心に、政党や候補者などに関する様々な情報があふれ、いわゆる「選挙フェイク」と呼ばれる、事実と異なるフェイクニュースも飛び交う事態となっている。そのなかで有権者が「政党の政策や候補者の人物像などの違い」を見極め、自分なりの意見を持って投票に行くことは、Z世代に限らず、多くの人にとってこれまで以上に難しくなっているかも知れない。だからこそ、学校や自治体などが推進する主権者教育の重要性が一層増している。

2025年7月の参院選においても、有権者一人一人が「自分の関心がある政策(争点)」について、マスメディアやSNSなどを通じて必要な情報を収集し、熟考して投票先を選択するリテラシーが求められる。


【注釈】

  1. 公益財団法人明るい選挙推進協会「第49回衆議院議員総選挙 全国意識調査-調査結果の概要-」(2022年3月)より「年代別棄権理由」参照。

  2. 同上

  3. 総務省「常時啓発事業のあり方等研究会」より「最終報告書」(2011年12月)参照。

  4. 文部科学省「令和4年度主権者教育(政治的教養の教育)に関する実施状況調査の結果について」(2023年5月)

  5. 東京都選挙管理委員会「MY争点オンライン」参照。2023年5月の開設時に筆者が監修を担当した。

 

【参考文献】

西野 偉彦


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

西野 偉彦

にしの たけひこ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: 教育(子ども・若者の学校教育から社会人の学び直しまで)、Z世代やα世代の生活行動・価値観・社会参画

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