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2025.04.08
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サステナビリティ情報の開示と保証に関する検討への期待
~金融審のWG等における大局的な視点による戦略的議論を~
加藤 大典
- 目次
1.サステナビリティ情報の保証はより具体的な検討フェーズに
2024年2月、金融担当大臣から金融審議会に対して「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関する検討」が諮問され(資料1)、「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(以下、WG)が設置された。

WGは、2024年3月26日に第1回が開催されて以降、同年12月2日に第5回が開催された。第5回WGにおいて「保証範囲」「保証水準」及び「保証の担い手」について、それぞれ方向性が提示された。概略は次のとおりである。
「保証範囲」は保証適用義務化から2年間はScope1・2、ガバナンス及びリスク管理とし、3年目以降は国際動向等を踏まえて継続して検討する(注1)。
「保証水準」は限定的保証とし、今後、実務の状況や海外の動向等を踏まえ、合理的保証への移行の可否について検討する(注1)。
「保証の担い手」については、サステナビリティ保証業務を公正かつ的確に遂行するに足りる体制が整備されていることを条件に、監査法人に限定されない制度としてはどうか(注2)。
その上で、保証の範囲、水準、担い手といった大きな方向性についてはWGで議論しつつ、主に将来の法改正の検討に必要な事項など、具体的な詳細について「サステナビリティ情報の保証に関する専門グループ」(以下、専門G)を設置してさらに議論していくことが提案された。専門Gは現在までに、2025年2月12日と同年3月21日の2回が開催されている。
2.WGの示した方向性を網羅する十分な検討と、無用な制度移行リスクの回避を
第1回専門Gでは、「保証の担い手」に関して「サステナビリティ保証業務実施者に求められる規律の在り方」が議論された。これは第5回WGで示された「サステナビリティ保証業務を公正かつ的確に遂行するに足りる体制が整備されていることを条件に」という部分にフォーカスした議論を、という事務局の考えによるものと思われる。一方で「監査法人に限定されない制度としてはどうか」という点についてはまだ十分に触れられてはおらず、今後の専門Gで検討される必要があろう。
また、「規律の適切な在り方」マイナス「現行実務」イコール「制度移行リスク」と捉えれば、情報開示する企業は、(諮問にある)「建設的な対話」をもたらす「規律の適切な在り方」の実現に必要な制度移行リスクは受け入れようが、無用なそれは回避したいだろう。
例えば、開示の実務者の視点でGHG排出量に関連して考えると、「有価証券報告書のためには連結ベースでScope1・2等の限定的保証が、GXリーグのためには排出量規模等に応じて国内直接・間接排出量の合理的保証あるいは限定的保証が、CDPのAリスト入りのためには連結ベースでScope1・2の100%及びScope3の少なくとも1つのカテゴリーについて70%以上の排出量の検証が求められることになるが、それぞれ別の第三者に保証・検証を依頼することになるのか?」といったような疑問も感じているのではなかろうか。こうした点に関連してか、第1回専門Gでは「現在の任意保証と比較して実務にどういう追加負担があるかや、既存の実務を生かすような対応についての検討があると良い」(注3)といった意見も出されている。
「規律の適切な在り方」の検討を丁寧に、と同時に、現行実務の十分な確認と整理及び「規律の適切な在り方」で示される姿への新旧制度間のトランジションプランも、今後、専門Gで検討・整理される必要があろう。
3.信頼性の確保には、専門性の確保も必要
第2回専門Gでは、議論の一つとして「サステナビリティ保証制度を検討するに当たって考慮すべき事項」が挙げられ、その中で、「保証業務実施者が知識を習得し、保証実務経験を蓄積することを優先し、資格制度の要否については、将来の検討課題とすること」と提示された。これは、知識習得段階の保証業務実施者による保証でも当面は構わないので、第1回専門Gで提示されたロードマップ(資料2)のとおり、とにかく保証制度導入を進める、ということなのだろうか。
ここで再確認したいのは、今般の諮問は資料1のとおり、資本市場や投資家が必要とする情報を、開示する企業が信頼性を確保しながら提供できるように、開示や保証のあり方を検討してほしい、ということである。第2回専門Gの資料にあるとおり、サステナビリティ情報は分野が多岐にわたる上、その性質として、財務情報に比べ、将来予測情報、定性的、記述的情報が多い。開示されるサステナビリティ情報の信頼性を確保するための保証には、そうした特性の情報に関する専門性が必要であり、スケジュールありきの性急な保証制度の導入になるとすれば、それは好ましくない。保証に必要な専門性を確保するための資格制度等の具体的な仕組みの検討は、今回の専門Gで不可欠ではなかろうか。

4.国益や社会のサステナビリティの実現に向けた大局的な視点による戦略的な検討を
今回の諮問は、金融審議会に対するものであり、主として資本市場の一層の機能発揮の観点での検討が求められているものではある。しかし開示する企業は既に、「2」で触れたような保証、その対象となる開示、それらの元となるサステナビリティ取組みを進めてきている。今後さらに、例えば、GX2040ビジョンを踏まえた設備投資、排出量取引制度等といった脱炭素取組みに挑戦していくことが求められている。
民間企業のリソースが非効率に投下されるような事態は、社会の誰も望むまい。そうした事態は、社会のサステナビリティの実現への貢献も小さかろう。今般の検討が、有価証券報告書における開示とそのための保証にとって適切な制度設計につながり、ひいては国際競争力を持った実態経済の持続的成長や、社会のサステナビリティの実現といった観点にも資するものとなることを期待したい。そのためには、オブザーバー参加している他省庁の諸施策との関係性やシナジーも意識した、大局的な視点による戦略的な議論も必要だろう。
【注釈】
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2024年12月2日金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第5回)事務局説明資料P.10、P.21を参照した。
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2024年12月2日金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第5回)事務局説明資料P.13を参照した。
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2025年3月21日金融審議会「サステナビリティ情報の保証に関する専門グループ」(第2回)事務局説明資料P.2 を参照した。
【参考文献】
- 加藤大典(2024) 「【1分解説】GX2040ビジョンとは?」
加藤 大典
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

