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2025.02.05
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あなたの仕事、5年後も大丈夫?AI時代を生き抜くスキルとは
~WEF「Future of Jobs Report 2025」から考えるAI時代のスキルアップ戦略~
柏村 祐
1.世界経済フォーラムが見通す労働市場の未来
世界経済フォーラム(WEF)が発表した「Future of Jobs Report 2025」は、グローバル企業1,000社以上のデータにもとづき、2030年に向けた労働市場の大局を把握するための指標である。この最新報告書は、テクノロジーの進化のみならず、グリーントランジション、経済の不確実性、地政学的分断といった複数のマクロトレンドが、雇用や必要なスキルにどのような影響を及ぼすかを詳細に分析している。
近年、AIやロボットによる定型作業の自動化、ビッグデータ解析やサイバーセキュリティなど高度テクノロジー分野への需要の増加が、仕事の内容や働き方を急速に変化させている。これらの現象は、単なる技術革新だけでなく、環境対応型経済への移行、経済・社会の不確実性、さらには地政学的緊張などが複合的に絡み合っているためである。この報告書は、こうした大規模な変動のなかで、現状の職務がいかに変容し、どのスキルが今後市場で求められるかを明らかにすることを目的としている。
今後、定型業務の急速な自動化に伴い、AI、ビッグデータ、グリーン産業技術など新たな価値創出分野の専門人材の需要が高まる一方、創造的思考、レジリエンス、柔軟性、コミュニケーション能力といったヒューマンスキルの重要性も増すと予測される。本稿は、「Future of Jobs Report 2025」を出発点とし、今後数年から10年にわたる雇用市場の変容を捉えるとともに、個人および企業が市場価値を高めるための具体的な戦略および行動指針を考察するものである。
2.今後需要が高まる職種と求められるスキル
「Future of Jobs Report 2025」は、世界の雇用市場が2030年に向けて大きな構造転換期を迎えることを示している。国際労働機関(ILO)のデータと企業調査の結果を組み合わせた分析によれば、テクノロジーの進歩、グリーントランジション(環境対応型経済への移行)、経済の不確実性、地政学的分断などのマクロトレンドにより、現在の正式雇用(フォーマル雇用)全体の22%に相当する規模で雇用の新陳代謝が起こると予測されている。具体的には、1億7,000万(現在の雇用の14%相当)の新規雇用が創出される一方で、9,200万(同8%相当)の既存雇用が失われる見通しである(図表1)。この結果、差し引きで約7,800万(同7%相当)の純増となることが見込まれている。このような大規模な雇用の入れ替わりは、グリーン産業やデジタル産業といった成長セクターへの労働移動の必要性や、自動化による定型的業務の縮小などを示唆している。企業や労働者には、この構造的な変化に対応するための準備、特に新たなスキル獲得や人材育成が求められることになる。

注目すべきは、業種や職種による明確な二極化である。成長率が最も高い職種としては、ビッグデータ専門家(約120%の成長率)を筆頭に、フィンテック技術者、AI・機械学習スペシャリスト、ロボット工学エンジニア、ソフトウェア開発者などのデジタルテクノロジー関連職種が上位を占めている(図表2)。また、自動運転・電気自動車スペシャリストや再生可能エネルギーエンジニアなど、グリーントランジションに関連する職種も大きな成長が見込まれている。これらの職種の台頭は、企業のデジタルトランスフォーメーションの加速や持続可能性への取り組み強化を反映している。
一方で、郵便窓口係、銀行窓口係、データ入力係、レジ係、管理・秘書職、会計・経理事務員といった定型的な事務作業やルーチンワークを担う職種では、自動化・デジタル化の進展により大幅な雇用減少が予測されている。このような職種の二極化は、テクノロジーの進歩とグリーン化の潮流が、従来型の業務プロセスを根本から変革していることを示唆している。この変革の中で、2030年に向けて求められるコアスキルも大きく変化することが予測されている。

「Future of Jobs Report 2025」では、労働者のスキルについて、2025年時点のコアスキルと企業が認識する度合と、2030年に向けて重要度が増すと企業が予測する度合を軸に、4つの象限に分類している(図表3)。
最も注目すべき「Core skills in 2030」の象限には、AIとビッグデータ、テクノロジーリテラシー、創造的思考、レジリエンス、分析的思考、リーダーシップと社会的影響力、好奇心と生涯学習、システム思考、人材管理、モチベーションと自己認識といったスキルが位置づけられている。これらは現在も重要であり、かつ2030年に向けてさらに需要が高まると予測されるスキルである。また、「Emerging skills」の象限には、ネットワークとサイバーセキュリティ、環境保護・環境管理、デザインとユーザー体験、プログラミングなど、現時点ではまだコアスキルと認識されていないものの、2030年に向けて急速に重要度が増すと予測されるスキルが含まれている。
一方、共感と積極的傾聴、サービス志向と顧客対応力、リソース管理といった「Steady skills」は、今後も一定の重要性を保つものの、急激な需要増は見込まれていない。手先の器用さや感覚処理能力などの「Out of focus skills」も、相対的に投資優先度が低いと位置づけられている。
特筆すべきは、AI時代であるからこそ、デジタルスキルと同時にヒューマンスキルの重要性も増すという点である。企業と個人の双方に、これらのスキルトレンドを見据えた戦略的な学習投資が求められるといえるだろう。

具体的には、企業は従業員の継続学習を後押しし、テクノロジー導入や組織改革に柔軟に対応できる体制を整える必要がある。個人としてはAIやデータサイエンスなどの専門技術を積極的に習得しつつ、柔軟性やコミュニケーション力、リーダーシップといった人間ならではの強みを磨くことが欠かせないといえる。
3.行動変容で切り拓くキャリアの未来
社会が急速に変化する時代においては、単に変化を待つのではなく、自ら変化を創り出す姿勢が重要である。「Future of Jobs Report 2025」が示すように、デジタル産業やグリーントランジション関連の分野では大きな人材需要が見込まれる一方、多くの定型業務が自動化によって急速に縮小していく構造変化は避けられない。
このような環境下では、スキルの陳腐化も瞬時に進行する恐れがあるため、リスキリングやアップスキリングを継続的に行い、学んだ知識や技術を現場でどう活かすかが差別化の鍵となる。特にAIやビッグデータといったデジタルスキルを高めつつ、創造的思考やリーダーシップ、問題解決力などのヒューマンスキルを伸ばすことができれば、変化を機会へと転じ、周囲を巻き込みながら新たな時代を主導する存在へと成長できる。学びの方向性を明確にするためには、「自分はどの業界や社会的課題に挑戦したいのか」を想定したうえで、バックキャストして自らの学習計画をデザインすることが重要である。たとえば、AIエンジニアを目指すならプログラミング言語やデータサイエンスの基礎を押さえつつ、業界固有のアルゴリズムや関連法規を学ぶ必要があるだろう。また、組織マネジメントに興味があるなら、最新の人材育成手法や組織心理学を学びながら、デジタル時代に対応したリーダーシップモデルを構築することが求められる。物流やIT、建設、製造業など多様な業界で「AIをどのように活用すれば新たな価値を生み出せるのか」を考え、実際にAIに問いかけてアイデアを得るのも有効なアプローチである。

図表4に「急速に変化する環境で成功するためにどのスキルを優先的に学ぶべきか」を示したが、自分の目標や関心に照らし合わせながら、学習への投資や関連するコミュニティとの連携、成果の検証方法などを自ら設計することで、将来への不安は減少し、自分らしいキャリアの羅針盤を手にすることができるであろう。また、テクノロジーの進化によって、これまで安定しているとされた職種が消滅し、グリーントランジションやデジタルトランスフォーメーションの専門家が急速に台頭する姿は既に現実のものとなりつつある。これを脅威ではなくチャンスとして捉えるためにも、日々のリスキリングやアップスキリングを怠らず、ヒューマンスキルも併せて強化することが重要である。加えて、自分が磨いたスキルが「どのような課題を解決し、どのような人々を支えるか」を意識することで、キャリアは単なる仕事ではなく、自らの価値観や社会への貢献を形にするステージへと変わっていく。
繰り返しになるが、テクノロジーの急速な進展とグリーントランジションの推進は労働市場に大規模な構造変化をもたらす。特に、デジタルスキルとヒューマンスキルの相互補完的な重要性が増すため、個人は多様な能力の習得と継続的なスキルアップに取り組む必要がある。また、企業においては従業員のリスキリング支援や柔軟な組織づくりが競争力維持の要となる。「Future of Jobs Report 2025」は、これらのトレンドに適切に対応する戦略的な人材開発こそが、2030年に向けた持続可能な成長と社会の安定に寄与することを示唆している。急速に移り変わる未来に対して、自分の仕事を「大丈夫」にするかどうかは、まさに学習デザインと行動変容にかかっているのである。
柏村 祐
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。
- 柏村 祐
かしわむら たすく
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ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション
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