ライフデザイン白書2024 ライフデザイン白書2024

障害者の心身をポジティブにするパラスポーツ

~ライフパフォーマンスの向上に向けて〜

後藤 博

目次

1.パラスポーツが注目される理由

パラスポーツは、広く障害者スポーツを意味する言葉である。ただ、障害者だけが行うものではなく、障害の有無に関わらず参加者が共に楽しむことができるよう、障害特性に応じた配慮から、ルール変更等も含めて工夫されたスポーツと捉えられている。

パラスポーツは、参加する障害者の身体能力や競技力や目的によって3つに分類される。具体的には、リハビリテーション治療の延長上にある「リハビリテーション・スポーツ」、健康増進やスポーツを通した社会参加を目的とする「市民(生涯)スポーツ」、さらには順位・成績を競う「競技スポーツ」である(注1)。

オリンピックと同時期にパラリンピックが開催されることもあって、近年パラスポーツの認知度が高まっており、多くの人が観戦・体験する機会が増えている。

2.障害者のライフパフォーマンスを高めるパラスポーツ

パラスポーツには、障害をもつ人の運動不足を解消し、体力を向上させる効用がある。スポーツを通じてストレスを解消し、精神的な安定を図ることもできる。さらに障害者本人の健康維持・増進だけでなく、スポーツを通じて社会参加の機会を得られることも重要だ。

たとえば、チームや団体に参加することで、他の人との交流を通じたコミュニケーションの機会が増える。また、スポーツのなかで自分の役割を果たすことにより、自己肯定感や自尊心を高めることができる。

さらにパラスポーツには、「ライフパフォーマンス」を向上させる効力があるという。ライフパフォーマンスは耳慣れない言葉だが、スポーツ庁によると、「困難な状況に陥ったとしてもそれを乗り越える力であり、それぞれのライフステージにおいて、環境変化や加齢等に心身機能を適応させながら、個々の課題解決や目的達成に向けて発揮できる能力」である。そして「ライフパフォーマンスの向上を目指すことは、心身の保持増進はもとより、QOLを高めることなど、Well-beingの最大化に資する」とされている(注2)。その意味では、ライフパフォーマンスの向上に、スポーツを通じた意識の変化、他者との関わり合いも重要といえる。2023年に実施されたスポーツ庁「障害児・者のスポーツライフに関する調査研究」によると、「運動・スポーツをやってよかったこと」として、「ストレスが解消される」「体力・身体的機能が向上した」などに加え、「行動範囲が拡大した」「自信がついた」「友人が増えた」などが挙げられている(図表1)。

図表1 運動・スポーツをやってよかったこと
図表1 運動・スポーツをやってよかったこと

すなわち、スポーツを通じた行動範囲の拡大、自己肯定感の向上、人的ネットワークの拡充などが、ライフパフォーマンスの向上の要素になるのではないか。また、上達したい、勝ちたいという目標ができ、「やる気」が増す。敵・味方に分かれて競技することで、仲間や指導者とのコミュニケーション能力も向上する。新しいメンバーとの交流により、コミュニケーションの取り方を学んだり、互いに応援し合う仲間ができることにもつながる。さらにスポーツのルールに従うことや、競技を通じて自身の感情の起伏に対応することも学べるだろう。

3.パラスポーツの普及に向けて

今後さらにパラスポーツを普及させるには、パラスポーツへのアクセシビリティを高めていくことが重要である。障害者のスポーツを振興しているパラスポーツ関係団体は各都道府県にあり、各協会のHPには体験イベントや教室などの情報が掲載されている(図表2)。

また、障害者のことをよく理解してくれるパラスポーツ指導者が各地に配置されている。障害についての医学的な知識や精神面に関する理解があり、かつスポーツ指導についての知識と技能を身につけた指導者だ。パラスポーツ指導者の資格をもつ人は、2024年7月現在、初級19,606人、中級4,124人、上級873人の合計24,567人であり(注3)、主に障害者スポーツセンターや地域のスポーツクラブ、フィットネスクラブ、特別支援学校に所属している。

図表2 公益財団法人日本パラスポーツ協会HPにおける地域のパラスポーツ関係団体の案内
図表2 公益財団法人日本パラスポーツ協会HPにおける地域のパラスポーツ関係団体の案内

パラスポーツの普及に向けたその他の課題として、競技用の道具や機材の手配がある。たとえば、競技用の車椅子などが必要となるパラスポーツは少なくない(図表3)。現状、自治体と障害者スポーツ協議会との共同事業で競技用車椅子のレンタルを行うなど、パラスポーツを始めやすいような取組みが増えているが、今後さらなる強化を期待したい。

図表3 競技用車いす(バスケットボール用)
図表3 競技用車いす(バスケットボール用)

2024年8月にはパリ2024パラリンピックが開催され、パラアスリートの活躍に注目が集まるだろう。パラリンピックをきっかけに、パラスポーツを始めたいと思う障害者が身近な場所でスポーツを体験できるよう、様々な支援が望まれるところである。


【注釈】

  1. 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会HP

  2. スポーツ庁 スポーツ審議会健康スポーツ部会(第28回)(2024年7月)

  3. 公益財団法人日本パラスポーツ協会HP「パラスポーツ指導者とは

【参考文献】

  • 後藤博「パラスポーツがもたらす共生社会~スポーツを通じた協働・共生~」2022年12月

  • スポーツ庁「Sport in Lifeガイドブック」(2024年3月)

後藤 博


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。