AI活用支援セミナー AI活用支援セミナー

「ジェネるAI」の衝撃

~定額減税を事例に検証。ポスト「ググる」時代に求められる新たなスキルとは?~

柏村 祐

目次

1.検索エンジンの課題

インターネットを通じて膨大な情報が手に入る現代社会において、検索エンジンは私たちの生活に欠かせない存在となっている。しかし、検索エンジンを使って目的の情報を探す過程は、時としてストレスを伴うものである。検索結果として表示されたリンクをクリックし、実際のページを確認しなければ、求める情報が含まれているかどうかわからない。1つ1つのリンクを開いて中身を確認するのは面倒で、時間がかかる作業だ。また、検索結果に表示されるページの情報は玉石混交であり、信頼できるソースなのか判断が難しい。こうした状況に直面すると、検索エンジンを使って情報を探すことを躊躇してしまう。

そのようななか、近年、AIの急速な発展により、従来の検索エンジンとは一線を画す新しいタイプの検索ツールが登場した。この革新的なAIは、ユーザーの質問を理解し、関連する情報を収集・分析して、簡潔で的確な回答を生成する。リンクをクリックして情報を探す必要がなく、信頼できる情報ソースから最適な回答を即座に得ることができる。つまり、「ググる」時代から新たな検索の時代へと移行しつつあるといえる。

そこで本レポートでは、この新しいタイプの検索AIを「ジェネるAI」と名付け、その実力を詳しく検証していく。「ジェネる」という言葉には、AIが情報を生成(ジェネレート)するという意味を込めている。この「ジェネるAI」の登場は、私たちの情報検索のあり方に大きな変革をもたらすかもしれない。そこで、本レポートでは、この「ジェネるAI」の実力を詳しく検証していく。

2.ジェネるAIの能力

「ジェネるAI」は従来の検索エンジンとは異なり、ユーザーの質問に対して直接的な回答を提示するという革新的な機能を備えている。このAIの能力は、概要検索、深堀検索、関連検索の3つのカテゴリーに分類することができる。概要検索では、ユーザーが入力した質問にもとづいて、AIがインターネット上の関連する情報を収集し、それをわかりやすく要約して簡潔な回答を提供する。このプロセスは、日常的な情報検索を劇的に速く簡単にすることが可能である。深堀検索では、ユーザーの質問をより深く理解し、詳細な情報を提供することが可能だ。関連検索では、ユーザーの質問に直接答えるだけでなく、関連するトピックや追加の情報も提示される。これらの能力を組み合わせることで、「ジェネるAI」はユーザーの多様な情報ニーズに対応できるのである。

それでは、実際にこれらの検索能力がどのように機能するのか、具体的な例を交えてみていこう。事例としては多くの国民が関心のある所得税・住民税の定額減税について取り上げる。

まず、概要検索について、AIに「所得税・住民税の定額減税とは?」と入力した。その結果、AIは「所得税・住民税の定額減税とは、令和6年度税制改正に伴い、2024年分の所得税・住民税の徴収額から定額が控除されることを言います」という概要を記載のうえ、図表1のように対象者の要件や算出方法について詳細な説明結果を作成した。作成された結果の引用元も明示されるため、信頼のおける情報ソースなのかもシームレスに確認できる(図表1赤枠)。

図表 1
図表 1

次に、深堀検索について確認してみよう。概要検索で出力された結果の中で、さらに深堀りしたい内容があれば、それをAIに質問すればよい。ここではAIに「所得税・住民税の定額減税の狙いは?」と入力した。その結果、AIは「所得税・住民税の定額減税の主な狙いは以下の通りです」と回答したうえで、物価高騰下での家計支援、デフレ脱却に向けた消費喚起、幅広い世帯への恩恵、即効性のある経済対策という4つの項目を回答した(図表2)。

図表 2
図表 2

さらに、関連検索では、AIが回答した内容の最後尾に、「所得税・住民税の定額減税の狙いは?」に関連する質問が自動で表示された(図表3)。ユーザーがさらに関連した検索を行いたい場合、AIが推薦した関連質問の中から興味のある質問を選択すればよい。ここでは、提示された3つの質問の中にある「定額減税が適用される所得層はどのように決まりますか?」について回答を求めてみた。

図表 3
図表 3

その結果、AIは「定額減税の適用対象となる所得層は、所得税と住民税で判定基準の年度が異なります」と回答したうえで、定額減税の適用対象となる所得層についての詳細な情報をわかりやすく提示した(図表4)。

図表 4
図表 4

以上の事例から、「ジェネるAI」は単一の質問に対し要点を簡潔にまとめた回答を提示できるだけでなく、ユーザーの関心に合わせて関連トピックへと掘り下げていくことができる。特に、複数の信頼できる情報ソースが明示され、ワンクリックで参照できる点は画期的だ。これにより、ユーザーは回答の信頼性を容易に確認でき、さらなる情報収集も簡単に行える。従来の検索エンジンでは、検索結果のリンクを1つ1つクリックして情報を探し、ソースの信頼性を自分で判断する必要があったが、「ジェネるAI」ではそのプロセスが大幅に簡略化されている。つまり、「ジェネるAI」は単なる検索ツールの枠を超え、リサーチやファクトチェックを強力にサポートするアシスタントとしての役割を果たすのである。

3.「ジェネるAI」と協働する時代に求められる新たなスキル

「ジェネるAI」の登場により、私たちは「ググる」時代から「ジェネる」時代へと移行しつつある。この変化は、単なる検索方法の変化にとどまらず、私たちの情報収集や問題解決のあり方そのものを大きく変えていくだろう。「ジェネるAI」を効果的に活用するには、従来の検索エンジンとは異なる新たなスキルが求められる。図表5は、「ググる」時代と「ジェネる」時代に求められる能力の違いを示したものである。

図表 5
図表 5

まず、AIに的確な質問を投げかけ、必要な情報を引き出す能力が重要になる。「ジェネるAI」は、ユーザーの質問の意図を理解し適切な回答を生成するが、質問の仕方によって、得られる情報の質や量が大きく異なる。したがって、自分の知りたいことを明確に言語化し、AIに伝えることが求められる。

次に、AIから得られた回答を批判的に吟味し、自分なりの解釈を加える能力も必要だ。「ジェネるAI」は膨大な情報から最適な回答を提示するが、常に完璧とは限らない。時には不正確な情報が含まれていることもあるだろう。そのため、AIの回答を鵜呑みにするのではなく、その内容を精査し、自分の知識や経験と照らし合わせて評価することが重要である。

さらに、「ジェネるAI」を活用して新たな知見を生み出していく創造力も求められる。AIとの対話を通じて、これまで気づかなかった視点や発想を得ることができる。それをもとに、人間ならではの感性や経験を活かして、イノベーティブなアイデアを生み出していくことが期待されている。

「ジェネるAI」の登場により、検索に時間をかけなくて済むようになり、知りたい内容がまとまった形で提示されるようになった。これにより、調べものに費やす時間が少なくなり、業務の効率化につながるだろう。また、AIの回答をきっかけに、さらに深堀りして調べることもできる。「ジェネるAI」は、私たちの仕事や生活において、より便利で効率的な情報収集を可能にするツールとして、重要な役割を果たすようになると考えられる。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ