暮らしの視点(21):シニア世代の健康をめぐる心がけ

~コロナ禍で生活が変化した人で「心がけ」は高割合~

北村 安樹子

目次

1.感染拡大によるシニア世代の生活への影響

新型コロナウイルスの感染状況の落ち着きを背景に、基本的な感染対策の継続や新たな生活様式のもと、生活の様々な領域で人々の日常が少しずつ戻りつつある。

昨年秋に別稿(「暮らしの視点(14):感染拡大によるシニア世代の生活への影響~リアルな交流・外出機会への影響大~」)でも述べたように、コロナ下の生活では、重症化しやすいとされた高齢者の多くが、様々な形で日常生活への影響を受けたことが明らかになっている。コロナ禍中の2021年1月に政府が行ったこの調査によれば、60歳以上の男女の9割超が感染拡大によって生活に様々な影響があったと答えている。第3波がピークを迎えていた当時、最も多くあげられた影響は「旅行や買い物などで外出することが減った」(68.0%)というものであった(図表1)。また、「友人・知人や近所付き合いが減った」(55.3%)、「別居している家族と会う機会が減った」(47.3%)など、他者とのつきあい・会合等にかかわることをあげた人も7割を超えた。このほか医療・介護サービス利用や仕事・ボランティア活動などの面で影響を受けた人等も一定の割合を占める。これらの影響は高齢者に限らないが、自身・家族への感染や感染拡大への不安が様々な行動の自粛にも結びついてきたことがうかがえる。

図表 1 日本の 60 歳以上男女における感染拡大による生活への影響<複数回答>
図表 1 日本の 60 歳以上男女における感染拡大による生活への影響<複数回答>

2.コロナ禍で生活が変化した人で「心がけ」は高割合

調査が行われてから1年半近くが経過した現在、感染状況は落ち着きを示している。コロナ下の生活が長期化・常態化するなかで、心身の健康維持や運動のための外出は自粛要請の対象ではないことや、活動時に求められる感染予防対策等も具体的に示されるようになった。また、外出機会の減少や活動量の低下にともなう虚弱化を予防・回避するには、体を動かすことや他者とのコミュニケーションが有効であることも、各種メディアをはじめ様々なルートを通じて強調されている。

このようななか図表2のとおり、先の調査に回答した60歳以上の男女では、9割以上が自身の健康について心がけていることがあると答えており、健康に関するこの世代の関心や意欲の高さがうかがえる。その具体的な内容をみると、上位3項目には「休養や睡眠を十分とる」(66.2%)、「規則正しい生活を送る」(61.3%)、「栄養のバランスがとれた食事をする」(58.3%)といった基本的な生活習慣にかかわることが並んでいる。このほか「健康診断などを定期的に受ける」(51.1%)や「気持ちをなるべく明るく持つ」(41.3%)、「趣味を持つ」(38.8%)など、客観的なチェックの機会とともに、メンタリティや余暇など多岐の領域にわたる項目もあげられている。これらはあくまで主観的な回答に基づく結果ではあるが、健康について何らか心がけていることがあるとした人の割合は、コロナ禍による生活への影響があったと答えた人において高く、各々の考えや方法に基づく多様な実践を行っている人が少なくないことがうかがえる。

図表 2 日本の 60 歳以上の男女が健康について心がけていること
図表 2 日本の 60 歳以上の男女が健康について心がけていること

3.健康を心がけた生活を実践する上で求められること

これらの心がけに関し、家族形態やライフスタイルによる違いに注目した場合、配偶者・パートナーとの死別を経験した人や情報機器等を使わない人において「特に心がけていることはない」と答えた人の割合はわずかに高い(図表省略、注1)。前者に関しては、年齢や配偶者・パートナーとの関係性、死別までのプロセスや生活状況等にもよるが、死別の経験やその後の生活では、健康を心がけた生活を送ることが難しくなる場合もあるのかもしれない(注2)。一方、後者に関しては、経済状況や健康状態などとの関連性とともに、使わない生活や使い方がわからないことが、健康を心がける生活を難しくさせているケースもあるのかもしれない。新たな機器の利用を必要としない場合や、利用がストレスにつながる場合もある一方、外出や対人関係などの面で、心身の健康を意識するきっかけを得る場合もあるのではないか。

以上の傾向から、シニア世代では感染拡大による生活への影響を受けた人を含めて、その多くが健康についての心がけを様々な形で意識し、各々の方法やペースでの取り組みを行っていると考えられる。また、自分や家族が健康を心がけた生活を送っていく上で、配偶者・パートナーがいる人の場合、その存在を失った後の生活について想像してみることも時には必要だろう。一方、情報機器に関しては、様々な利用方法を知り必要な場合に利用するためのスキルを身につけておくことが、心身の健康を心がける暮らしにつながる場合もあるだろう。

これらの点に加え、図表2にあげられたような心がけを個々人が実践していく上では、効果的な方法や正しい知識・情報が様々な場や機会を通じて提供されること、個々人がそれらの多様な情報を総合的に判断して実際の行動を行い、自身のライフスタイルに選択的に取り入れていくことも求められよう。


【注釈】

  1. 情報機器の利用状況に関しては、「あなたは、情報機器を使って、どのようなことをされますか」という複数回答の設問に対し、「ファックスで家族・友人などと連絡をとる」「パソコンの電子メールで家族・友人などと連絡をとる」「携帯電話・スマホで家族・友人などと連絡をとる(携帯電話のメールを含む)」「インターネットで情報を集めたり、ショッピングをする」「SNS(Facebook、Twitter、Line、Instagramなど)を利用する」「ホームページやブログへの書き込みまたは開設・更新をする」「ネットバンキングや金融取引(証券・保険取引など)をする」「国や行政の手続きをインターネットで行う(電子政府・電子自治体)」のいずれかを使うかどうかで比較した場合。
  2. 今回の調査結果に関する公表資料では、健康について心がけていることがないとした人の割合は、配偶者・パートナーが死亡している女性に比べ男性でやや高い。

【関連レポート】

  1. 北村安樹子「暮らしの視点(6):中高年シングルの心の危機~最もつらかった出来事は、家族・大切な人との別れ~」2021年1月。
  2. 北村安樹子「暮らしの視点(9):高齢期の健康と共食機会~70歳以上では「知識・話題が増えること」を高評価~」2021年4月。

北村 安樹子

北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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