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2021.10.18
テクノロジー
デジタル化・DX
イノベーション
AI(人工知能)
オーラAIの衝撃
~リアルタイムに精神状態を可視化するテクノロジー~
柏村 祐
1.オーラAIの登場
オーラとは、人がもつ独特の雰囲気やその人が発するエネルギーを意味する。人のオーラを肉眼で見ることはできないが、オーラAIは、画像を通じて人が発する微振動を検知し、分析することによりリアルタイムでその人の精神状態を可視化するテクノロジーである。
この微振動に基づく画像の視覚化技術は、怒り、緊張、攻撃性などのさまざまな精神状態、気分、意識を画像上の光の帯の色と相関させることに成功しており、ロシア企業により開発された。可視化された精神状態は、様々な色と大きさのオーラで表現され、赤色は攻撃的、黄色は緊張、緑色は平静、水色は安息、紫色は疲労や倦怠を意味する(図表1)。

オーラAIはどのような場面で活用されているのだろうか。その1例としてセキュリティ分野におけるイベント会場への入場者チェックが挙げられる。ロシアelsys社によれば、ピーク時に1日の来場者数が12万人、大会を通じた全来場者数270万人に達した2014年のソチオリンピックで導入され、オーラAIが不審者の疑いありと検知した人のうち92%は実際に不審者として入場拒否となった。入場拒否となった理由は薬物、火薬などの持込禁止が72%、異常行動が8%、チケット無しが20%であった。オーラAIが不審者を検知するタイミングは、入場者がゲートを通るタイミングである。多数の人が来場する中、不穏なオーラを発している人をリアルタイムで検知し、事前に設定された閾値を超えるとモニター上に対象者を撮影した写真が保存される。セキュリティを担当する職員は、その写真をもとに不審者の疑いがあると判定された人を効率的に調査することができる(図表2)。

また、オーラAIは、リアルタイムでの検知に留まらず、監視カメラが過去に録画した映像も解析できる。例えば、2013年4月に発生したボストンマラソンの自爆テロ犯人の映像を解析し、群衆の中から犯人のテロリスト特定に成功している(図表3)。

2.活用が見込まれる分野
オーラAIは今後どのような分野に活用が可能だろうか。 例えば、昨今スーパーマーケットやコンビニでエコバック万引きと呼ばれる盗難が増加しているが、オーラAIを利用すれば、万引きを行う可能性がある不審者をいち早く検知することができ、店員が不審者に声掛けをすることで万引きの未然防止につながる。また、お店に限らず人が集まりやすい公共交通機関や空港などでも活用できるだろう。
加えてオーラAIは、人の不安や邪悪といったネガティブな感情を察知するのみならず、好き、好意を持っているといったポジティブな感情も検知できる。例えば、自分と会話している相手が発する様々な感情を可視化し、スマートフォンやビデオ会議で写っている相手が自分に好意を抱いているのか、嫌悪感を持っているのか、愛しているのか、無関心なのかなどをオーラAIは判定できる。また人間のみならず、愛犬などのペットにも適用することにより、動物のオーラを検知する試みも行われている(図表4)。

オーラAIは、人間の微振動により生じるオーラから様々な感情を把握することができる最先端のテクノロジーである。今後、犯罪防止への活用に留まらず、人とのつながりの円滑化や、ペットとのコミュニケーションに応用することができれば、言語や主観を超えたコミュニケーションの世界を我々にもたらすという可能性を秘めたテクノロジーと言えるのではないだろうか。
柏村 祐
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘等を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針等と常に整合的であるとは限りません。