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- 内外経済ウォッチ『アジア・新興国~AI・半導体は韓国経済の救世主となるか~』(2026年8月号)
主要株式指数は過去最高値更新で活況を呈する
韓国金融市場では、主要株価指数(KOSPI)が一時最高値を更新するなど活況を呈している。世界的なAI(人工知能)・半導体関連投資の活発な動きを追い風に、時価総額上位の半導体関連株の上昇が相場をけん引している。同国ではここ数年、株式市場改革が進められてきたことも株価上昇を後押ししている。
若年層を中心とする個人投資家は外国株など海外資産への投資を拡大させており、ウォン安圧力を強める一因となるなど、株価と通貨が対照的な動きをみせている。当局はウォン安阻止に向けて、NDF(ノン・デリバラブル・フォワード)取引の監視を強化する方針を明らかにした。こうした当局の対応は、指数算出会社であるMSCIが同国の市場区分を「新興国」に据え置く一因となっている。直近の世論調査では、景気動向や物価対策、ウォン安対策の不満が、李在明(イ・ジェミョン)政権への支持率が急落する要因となるなど、政権は苦境に直面する。
AI・半導体関連投資は外需をけん引
しかし、金融市場の活況をもたらしている世界的なAI・半導体関連投資の旺盛な動きは、同国経済にとって追い風となっていることは明らかである。6月の輸出額は前年同月比+70.9%と1978年10月以来の高い伸びとなるなど急拡大し、単月ベースの輸出額も過去最高を更新した。半導体の輸出額は前年比で約3倍となり、足元の輸出急拡大の動きをけん引した。
李政権はAI・半導体を軸とする産業戦略発表
李大統領は6月29日、AIと半導体を軸とする新産業戦略を発表した。具体的には、この分野を主導するサムスン電子とSKハイニックスが同国南西部に計800兆ウォン規模を投資し、各々2ヵ所の半導体製造拠点を新設することを明らかにした。また、政府も2029年までにAIデータセンター向けに550兆ウォンを投資するとともに、2035年までに計1,000兆ウォン超の投資を目指す方針を示している。
李政権が同国南西部をAI・半導体のクラスターに指定した背景には、韓国経済の首都ソウルへの一極集中が進むなか、政権公約として地域格差の是正による経済の活性化を目指したことも影響している。足元では、半導体関連産業はソウル近郊に集積しており、これが分散されることは関連インフラのボトルネックの緩和につながるとの見方もある。一方で、クラスターの拠点とされる光州市や全羅南道は与党・共に民主党が一貫して地盤としてきたため、計画そのものが「我田引水」であるとの批判もある。さらに、半導体クラスターの建設には膨大な電力と水、高度な物流、充実したサプライヤー網、高度で熟練した労働力が必要であり、これらの供給が需要に見合う形で拡大しない可能性もある。とはいえ、世界的にAI・半導体に対する投資が活発化するなか、その供給拡大に向けた先行投資に舵を切る意義は小さくない。
金融市場の活況の背後で経済は「K字型」
その一方、足元の韓国経済はAI・半導体関連とそれ以外の産業との差が歴然とする「K字型」の様相を強めており、輸出にもそうした動きがみられる。こうした事情は、KOSPIの構成銘柄すべての時価総額に対して、サムスン電子とSKハイニックスの2社の時価総額が約5割を占めていることにも現れている。その結果、2社の株価の動きにKOSPIが大きく左右され、過去数ヵ月にわたって度々サーキットブレーカーが発動する事態に発展している。AI・半導体関連は、引き続き韓国経済の成長の主要エンジンとなることが期待される一方、その恩恵が、個人消費をはじめとする内需の持続的な拡大へと波及するかどうか、政権の舵取りは重要さを増している。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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