インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

四半期見通し『アジア・新興国~中国は「K字型」、アジアは構造に依存~』(2026年4月号)

西濵 徹

目次

中国景気は「K字型」の様相を呈する展開が続く

2025年の中国の経済成長率は+5.0%となり、全人代で掲げた政府目標(5%前後)を達成した。米中摩擦を背景に対米輸出は大幅に減少したが、実質的な人民元安による輸出競争力の維持も追い風に、米国以外の国・地域への輸出が拡大し、輸出全体ではプラス成長を維持した。一方、不動産不況の長期化や若年層の雇用回復の遅れ、内需喚起策の効果一巡により、個人消費をはじめとする内需は低調に推移している。ただ、GDP統計は供給サイドの統計で構成されており、需要面の不透明感は残るものの、供給主導による成長が続いている状況である。

米中関係は2025年10月の首脳会談やトランプ大統領の訪中予定を受けて改善の兆しがあり、2026年の対米輸出は底入れが見込まれる。ただし、迂回輸出の経済的メリット低下や米国以外向け輸出の積み上げ余地の縮小など、輸出拡大は容易ではない。トランプ関税の行方も不透明で、実質的な人民元安誘導が輸出下支えの手段として活用される余地がある。内需面では、当局による追加的な景気刺激策への期待はあるものの、不動産不況の長期化や雇用機会の減少により、恩恵を受ける層と受けない層の格差(K字型)が拡大するであろう。全人代では、2026年の成長率目標を「4.5~5.0%」に引き下げたが、供給サイド主導の不均衡な成長が続くと予想される。

図表
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アジア新興国景気は経済構造に左右される展開

アジア新興国では、対米輸出依存度の高さからトランプ関税の悪影響が懸念されたが、関税本格発動前の「駆け込み」輸出や税率引き下げの合意により、影響は軽減されている。中国による迂回輸出の対応も定義が不明確であり、影響は限定的にとどまった。各国でインフレが落ち着いて利下げによる内需喚起も進み、2025年は内・外需ともに拡大し、多くの国で成長率は堅調に推移した。インドでは、ロシア産原油輸入を理由に米国から追加関税を課されたが、対米輸出依存度は低く、内需喚起策でインフレを抑制しつつ景気下支えを図った。さらに、米国との関税引き下げ合意およびEUとのFTA締結により、今後の外需環境の改善も期待される。

米中摩擦の緩和は外需の追い風となり得るが、中国との税率差の縮小、迂回輸出の減少、駆け込み輸出の反動など輸出環境は厳しさが増す。トランプ関税を巡る不透明感に翻弄される懸念もくすぶる。さらに、アジア新興国は中国の「デフレの輸出」圧力にさらされ、競争環境の激化が予想される。インドは、米印通商合意による関税引き下げ、インフレ鈍化や利下げを背景に、短期的に内需が下支えされると期待される。一方、中東情勢の悪化による原油高がインフレや対外収支の悪化を招くリスクは高まっている。各国は景気下支え策を強化する見込みだが、景気動向は経済構造に左右されるであろう。

図表
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西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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