内外経済ウォッチ『米国~FRBと市場の乖離は26年も~』(2025年12月号)

桂畑 誠治

目次

FRBは10月に利下げとQT終了を決定

米国では、関税政策によって不確実性が高まるもと、労働市場の軟化が続く一方、インフレ率が下げ渋っていた。このような中、10月1日に始まった政府機関の一部閉鎖が続いており、経済統計の公表が停止され、航路図のない航海を迫られている。

10月のFOMCで、FRBは2会合連続の利下げと、バランスシートの縮小策を12月1日に終了することを決定した。FFレート誘導目標レンジを25bp引き下げ、3.75~4.00%とする決定に10人が賛成したが、ミランFRB理事は50bpの利下げが適切、シュミッド・カンザスシティ連銀総裁は据え置きが適切として、25bpの利下げに反対した。

パウエル議長は、「インフレ率がやや高止まりしているが、労働市場が徐々に冷え込みつつある」と指摘、「労働市場の悪化リスクが高まる形でのリスクバランスの変化を考慮し、より中立的な政策スタンスに向けてさらなる一歩を踏み出すことが適切と判断、リスク管理として利下げを決定した」と説明した。

FOMCメンバーの金融政策の見方は大きく分かれている

パウエル議長は、FOMCメンバー内で今後の金融政策の経路を巡り「見解が大きく分かれた」と強調した。インフレは上振れリスク、労働市場には下振れリスクがあるため、何をすべきか、どのくらいのスピードでやるべきかについて様々な意見があると説明した。そのうえで、次回12月のFOMCでの追加利下げは、既定路線ではないと強調し、金融市場の25bpの利下げ期待をけん制した。

労働市場の悪化を回避するための利下げは終了か

10月の民間統計をみると、ISM景況調査では、製造業が48.7(前月49.1)と50を下回った一方、非製造業が52.4(同50.0)に上昇しており、景気の緩やかな減速傾向を示している。ただし、同統計の雇用DIは雇用の縮小ペース鈍化を示したほか、ADP民間雇用者数は前月比で増加に転じるなど、労働市場の更なる軟化を示さなかった。一方、インフレ面では、金融市場での期待インフレ率を示す指標「10年債利回り-インフレ連動(TIPS)10年債利回り」は、11月6日にかけて安定を続けており、関税賦課の物価への影響が一時的なものとなる期待が維持されていることを示している。

政府機関の一部閉鎖は、景気押し下げ要因であり、労働市場の軟化と期待インフレ率の低下に繋がる可能性がある。このため長期のインフレ上振れリスクを、労働市場の悪化リスクが引き続き上回っているとFRBは判断し、リスク管理として追加利下げを実施する可能性が高い。ただし、26年は、これまでの利下げや、不確実性の緩和、減税によって、経済成長が押し上げられるとみられ、FRBは25bpの利下げ1回を想定しているが、FF先物は3回程度を織り込んでおり、26年の金融市場はボラティリティーが高い恐れがある。(11月7日時点)

桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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