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内外経済ウォッチ『欧州~風雲急を告げるフランス政局~』(2025年11月号)

田中 理

目次

フランス新首相が史上最短の26日で辞任

フランスの政局混乱が続いている。9月に内閣信任投票が否決され、バイル首相が辞任したのに続き、後を継いだルコルニュ首相は10月初旬、就任から僅か26日で辞任した。ルコルニュ氏は2017年にマクロン大統領が就任して以来で7人目、2024年以降で5人目の首相だった。フランスでは国家元首である大統領が主に外交や国防を担当し、首相が閣僚を率いて内政全般を指揮する。首相の任命権は大統領が持つが、国民議会(下院)は内閣不信任案を提出することができ、議会の支持が得られない首相が政権運営を行うことは難しい。マクロン大統領を支持する中道勢力は、議会の過半数の議席を持たず、政権運営に苦慮している。

マクロン大統領は首相の辞任から4日後に改めてルコルニュ氏を首相に再任命した。政権存続が危ぶまれたが、野党勢の反発が大きい年金改革(年金の支給開始年齢の引き上げ)を2027年の大統領選挙まで凍結することで、内閣不信任案を乗り切った。財政再建が遅れるフランスの政府債務はユーロ圏内で、ギリシャとイタリアに次いで3番目に高い。ルコルニュ首相は財政再建路線を維持する方針で、年金改革凍結による財政収支の悪化を穴埋めする増税措置や歳出削減を計画している。今後、本格化する来年度の予算協議で、改めて野党の協力を取り付けることができるかは予断を許さない。

図表
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総選挙となれば極右の政権奪取も

今後も首相交代が相次ぐ場合、政治膠着を招いているとして、首相の任命権と議会の解散権を持つマクロン大統領の責任を問う声が高まりかねない。議会を前倒しで解散し、総選挙を行う可能性が高まる。最近の世論調査では、大統領を支持する中道勢力、野党の左派勢力が支持を落とす一方、野党の極右勢力が支持を伸ばしている。

フランスの議会選挙は小選挙区・二回投票制で行われ、初回投票で50%以上の票を獲得した候補がそのまま勝利する。勝者が確定しない場合、初回投票の上位2名と12.5%以上の票を獲得した候補が決選投票に進出し、決選投票で最多票を獲得した候補が勝利する。前回2024年の議会選挙では、極右政党の政権奪取を阻止するため、3人以上の候補が決選投票に進出した選挙区の多くで、中道勢力と左派会派が候補者を一本化した結果、極右の議席が伸び悩んだ。次の選挙では、中道勢力と左派勢力がともに支持を落としているうえ、両勢力間の関係が悪化しており、反極右での選挙協力が機能するかは分からない。国民連合単独、或いは移民政策などの立場が近い共和党と合わせた過半数到達や、過半数に近い議席を獲得する可能性も排除できない。穏健化しているとは言え、極右が主張する政策の具体策は不透明な点も多く、政権奪取時の経済混乱に注意が必要となる。

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田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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