内外経済ウォッチ『米国~FRBは不確実要因の増えるなか利下げ継続へ~』(2025年11月号)

桂畑 誠治

目次

FRBは9月に6会合ぶりの利下げを決定

米国では、関税政策によって不確実性が高まるなか、景気が緩やかに減速し、労働市場の軟化が続く一方、インフレ率が下げ渋っているため、引き続き労働市場の悪化とインフレの上振れが同時に起きるリスクが懸念されている。

9月16、17日のFOMCで、FRBはFFレート誘導目標レンジを25bp引き下げ、4.00~4.25%にすることを賛成多数で決定した。FRB理事に就任したばかりのミラン氏は、50bpの利下げが適切として反対したが、パウエルFRB議長は「50bpの利下げに対する支持は広がらなかった」と説明した。

6会合ぶりの利下げの背景として、パウエル議長は、「インフレ率は最近上昇し、依然としてやや高い水準」、「失業率は依然として低水準だが、徐々に上昇しており、雇用の伸びは鈍化している」と労働市場の軟化を指摘した。そのうえで、「短期的には、インフレリスクは上振れに、雇用リスクは下振れに傾いている」としたが、「雇用のマイナス面が拡大したことで、バランスが変化した」と雇用の増加ペースの大幅な鈍化や失業率の上昇など労働市場の需給バランスが悪化したことを受け、「今回の会合では、より中立的な政策スタンスに向けて更なる一歩を踏み出すことが適切であると判断した」と説明した。

政府機関閉鎖による不透明感の高まりは利下げ要因

今後、半導体などへの関税賦課などによって、高い不確実性が続くことに加えて、26会計年度(25年10月~26年9月)予算が、9月30日までに成立しなかったため、10月1日から政府機関の一部が閉鎖されている。10月8日時点で、暫定予算成立の目途は立っておらず、政府機関の閉鎖が長期化する恐れがある。労働省、商務省などの閉鎖によって、FRBの金融政策を判断するうえで重要な雇用統計(9月分)等の経済指標の公表が延期されているほか、10月分の雇用、物価統計の調査が正確に行えない可能性もあり、不確実要因がさらに増加した。

ただし、民間統計をみると、9月のISM景況調査では、製造業が49.1と50を下回っているうえ、非製造業が50まで低下しており、景気の減速を示している。また、同統計の雇用DIは雇用の縮小を示しているほか、ADP民間雇用者数は、9月に前月比で減少するなど、労働市場の更なる軟化を示している。他方、インフレ面では、金融市場での期待インフレ率を示す指標「10年債利回り-インフレ連動(TIPS)10年債利回り」は、10月8日にかけて安定を続けており、関税賦課の物価への影響が一時的なものとなる期待が維持されていることを示している。政府機関の閉鎖は、景気抑制要因であり、期待インフレ率が上昇する可能性は低い。FRBは、指標発表の再開を待つことで、景気や労働市場が想定以上に減速することを回避するため、年内利下げを継続する可能性が高い。

図表
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桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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