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- 時事雑感(2025年10月号)
中央銀行には主に「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」といった役割が与えられていることが一般的で、これらを通じて一国の物価や金融システムの安定を図り、最終的には経済の健全な成長に資することが目的とされる。金利や通貨供給量のコントロールは、そのための主要な手段となる。こうした中央銀行の役割は、国によって多少の違いはあるものの、物価の安定という点では共通している(米国の中央銀行であるFRBは物価の安定に加え、雇用の最大化という目標も定められている)。
もっとも、物価の安定を維持することは容易ではない。たとえば、景気が過熱すると需給が逼迫してインフレ圧力も高まる。このような局面では中央銀行は金利を引き上げ、行き過ぎたインフレ上昇を抑えようとする。ただし、金利上昇の副作用として景気には減速圧力がかかる。インフレ抑制に手間取れば、高金利政策も長期化し、場合によっては不況に陥るリスクもある。それでも、インフレを放置することで生じる中長期的な経済への悪影響に比べれば、短期的な景気の減速は許容しうる範疇と考えられる。
一方で、数年に一度の選挙で国民の信を問う政治家にとっては、短期的であっても景気の動向は自身の評価に直結するため、景気減速は許容しがたい。したがって、引き締め的な金融政策を政治は嫌うことが多い。特に独裁的な国家では、中央銀行の政策に直接圧力をかける例もある。ただし、こうした国では金融政策に対する信認が低下し、国債価格の下落(金利の上昇)や通貨安に見舞われることもある。
そのような事態が、今、世界の金融市場の中心的な役割を担い、基軸通貨国である米国で起きている。トランプ米大統領は、これまで度々FRBの金融緩和の遅れを非難してきた。そして、遂に8月にはFRBの理事1名の解任を発表した。これは、112年にわたるFRBの歴史で初めてのことだ。最近の金価格の一段の上昇やユーロ高は、米ドルに対する信認の低下が一因とも言われている。このことは、“トランプ関税”以上に、グローバルマーケットを揺るがすリスクを内包している問題ではないか。
嶌峰 義清
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

