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内外経済ウォッチ『アジア・新興国~トルコショック再び、トルコリラ相場は「不安定な時代」に戻るか~』(2025年5月号)

西濵 徹

目次

イスタンブール市長逮捕を機にリラ相場は混乱

トルコの検察当局は3月、最大都市イスタンブールのイマモール市長の身柄を拘束し、逮捕した。イマモール氏は2019年の同市長選で勝利し、昨年には再選を果たすなど将来の野党リーダーとして存在感を高めてきた。これは、20年以上にわたり同国のリーダーを務めるエルドアン大統領が政治家としてのキャリアを駆け上がるきっかけとなったポストでもある。なお、一昨年の大統領選では野党支持者の間でイマモール氏の擁立が模索されたが、司法を通じた妨害工作に伴い最終的に出馬は叶わなかった。しかし、昨年の市長再選を受けて将来的な大統領選の野党候補として足場固めが進んだ。

一方、イマモール氏には犯罪組織への関与、贈収賄、入札不正、公文書偽造などの容疑で捜査が行われており、検察は今回の逮捕容疑に恐喝と資金洗浄、入札不正を挙げた。また、多数のジャーナリストや実業家も併せて逮捕されており、昨年の市議選に関連してPKK(クルド労働者党)に対する支援を理由に起訴したとしている。さらに、逮捕直前にはイスタンブール大学がイマモール氏を含む28人の学位抹消を明らかにしており、現行憲法に基づけばイマモール氏は次期大統領選への出馬が不可能となる。一連の動きの背景には、イマモール氏の支持率が高く、2028年の次期大統領選を前にその『芽』を摘みたいとの思惑が影響した可能性がある。結果、通貨リラ相場は大きな混乱に直面した。

図表
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2年間の努力は「水の泡」、再び不安定な時代へ

逮捕後の金融市場ではリラのみならず、株式、債券が投げ売られる事態となり、中銀は為替介入や事実上の金融引き締めに追い込まれた。しかし、同国の外貨準備高はここ数年、IMF(国際通貨基金)が国際金融市場の動揺に対する耐性の観点から「適正水準」とされる規模を下回る推移が続いている。このような状況にも拘らず、今回の政治情勢を巡る不透明感の高まりを理由にした資金流出の動きに当局が対応する事態に追い込まれていることは、同国のファンダメンタルズ(基礎的条件)を一段と悪化させることが懸念される。

一昨年以降、トルコでは財務相や中銀総裁など経済チームが中心となる形で『正統的な』政策に舵が切られ、信認回復が進められてきた。結果、インフレは頭打ちの動きを強めるとともに、実質金利もプラスに転じるなど引き締め度合いが強まったことで中銀は一転して利下げに動くことが可能になるなど、金融環境が改善する動きも確認されてきた。しかし、リラ相場を巡る環境が急変したことを受けて、物価動向にも少なからず悪影響を与えるとともに、先行きの政策運営を取り巻く状況は大きく変化することも予想される。一連の政治的な動きをきっかけに一昨年以降における経済チームによる努力は『水の泡』となる可能性も懸念されている。その意味では、トルコリラは『不安定な時代』に突入する可能性が高まっていると捉えられる。

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西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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