内外経済ウォッチ『米国~FRBは不確実なトランプ2.0への対応に自信~』(2025年3月号)

桂畑 誠治

目次

FRBは25年1月に4会合ぶりの据え置き

FRBは、24年9月から12月にかけて3会合連続、合計1%pの利下げを実施した後、25年1月28、29日のFOMCで政策金利を据え置き、FFレート誘導目標レンジを4.25~4.50%に維持することを全会一致で決定した。据え置きの背景として、24年に1%pの大幅な利下げを実施したことで、引き締めの程度が弱まった中、景気が好調さを維持し、労働市場が堅調に推移した一方、インフレ低下の動きが年末に停滞したこと等が挙げられる。

FOMC声明文の現状判断において、景気は変更されず、雇用、インフレは上方修正された。雇用情勢について「失業率はここ数カ月低水準で安定しており、労働市場は引き続き堅調」と上方修正された。パウエル議長も「雇用創出は失業率を一定に保つ水準に一致している」と前回から判断を上方修正した。ただし、インフレ低下のため、これ以上の労働市場の軟化は必要ないとの見方は維持された。インフレについて、「インフレ率は依然としてやや高い水準」と足元のインフレ統計が前年比で上昇したことを受け、前回含まれていた「2%に向けて前進」との文言が削除された。ただし、パウエル議長は「インフレを巡る状況は引き続き改善していくと予想している」と、今後インフレが低下するとの見方を示した。リスクについて声明文で、雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡しているが、「経済見通しは不確かであり、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」と、引き続きインフレ率の上昇と労働市場悪化のリスクを注視していることを示した。

追加利下げの条件はインフレ低下か、労働市場悪化

金融政策についてパウエル議長は「我々は、事前に決められた道筋をたどっているわけではない」と改めて指摘したうえで、「経済が引き続き好調さを維持し、インフレが2%に向けて持続的に低下しなければ、我々はより長期間にわたり抑制的な政策金利を維持する」と据え置きの長期化の可能性を指摘した一方、「インフレの実際の進展」、あるいは「労働市場が予想よりも急速に弱まるか、悪化すれば、それに応じて政策を緩和することができる」とインフレの更なる低下や労働市場が悪化すれば、利下げを実施すると説明した。

米経済安定、利下げで不確実性への対応能力高まる

トランプ2.0について、パウエル議長を含むFRBは、どのような政策が実施されるか展開を見ている段階と説明したが、関税、移民、財政、規制の4つの分野での大幅な政策変更によって、不確実性が高まっている可能性を指摘した。「それらがどのように展開するかを見極めるまでは、政策対応がどうあるべきか急いで判断しない」との考えを示した。そのうえで、パウエル議長は、「金融政策は、我々が二重の使命の両面を追求する上で直面するリスクと不確実性に十分対応できる態勢が整っている」とFRBには、インフレ、労働市場のリスクのほか、不確実性の高いトランプ政権の政策を忍耐強く観察し、理解を深め、事態の進展を見守る余裕があるとの認識を示した。このため、トランプ2.0の影響などを拙速に判断せず、FRBは、トランプ2.0の政策が進展されていくもとで、景気、雇用、インフレへの影響をデータで確認しつつ、慎重に金融政策運営を行うと見込まれる。

トランプ2.0による25年の経済への影響をみると、規制緩和が経済活動の押し上げに繋がる一方、トランプ関税をきっかけとした先行き不透明感の高まりや、ドル高の進展のほか、不法移民の取り締まり強化等は、経済活動やインフレの抑制に繋がるとみられることから、FRBは25年に慎重なペースで利下げを実施する公算が大きい。

桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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