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内外経済ウォッチ『欧州~新政権発足も不安定なフランス政局~』(2024年11月号)

田中 理

目次

来年後半に再選挙の可能性も

フランスでは極右勢力による政権奪取が不安視された国民議会(下院)選挙の決選投票から2ヶ月半近くが経過した9月中旬、ようやく新政権が発足した。マクロン大統領に首相として政権発足を託されたのは、英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)協議で、EU側の主席交渉官を務めたバルニエ氏。同氏は幅広い政治勢力の結集を目指して協議を重ねたが、議会の最大勢力となった左派会派が政権への参加を見送った。大統領を支持する中道会派と、かつての二大政党の一角で、中道右派の共和党系会派が政権を支える。

両会派の合計議席は212と、議会の過半数(289)に満たない。新政権が議会で法案を通すのは事実上不可能な状況で、議会採決を迂回する特別な立法手続き(憲法49条3項)に頼らざるを得ない。この手続きを利用する場合、議会は24時間以内に内閣不信任案を提起することができ、信任されれば法案が成立するが、不信任となれば内閣が総辞職する。つまり、新政権は法案審議の度に内閣不信任投票に晒されることになる。政権運営の機会を奪われた形の左派会派は、新政権との対決姿勢を強めている。極右勢力はひとまず政権発足を黙認したが、いつでも政権を倒すことができる状況にある。議会の前倒し解散が解禁される来年後半にも再選挙が行われるとの観測も浮上している。

図表
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財政運営を巡る不安は払拭されず

新政権にとっての喫緊の課題は、来年度の予算案をまとめ、財政運営に対する信頼を回復することだ。企業の競争力を回復し、危機下の国民生活を守るため、フランス政府はこれまで巨額の財政出動や税・社会保障負担の軽減を進めてきた。そのため、フランスでは財政再建が計画通りに進んでいない。EUはフランスが財政規律を逸脱している恐れがあるとして、是正措置(過剰赤字手続き)を開始した。フランス政府が提出した来年度予算案や中期の財政構造計画を精査し、11月中旬を目途に必要な追加措置などを勧告する。フランス政府は勧告内容を反映した予算を年末までに議会で成立させることを目指す。

6・7月の国民議会選挙に先駆けて、極右政権や左派政権の誕生による財政悪化が不安視され、フランスの国債利回りに上昇圧力が及んだ。域内の安全資産とされるドイツ国債との利回り格差は、新政権の誕生後も高止まりしたままだ。新政権が発表した予算案は、歳出削減や大企業向け増税を盛り込むが、従来の計画対比で財政赤字が膨れ上がるとしている。EUの財政規律が求める財政赤字の対国内総生産(GDP)比率が3%を下回るのは、当初計画の2027年から2029年に先送りされた。EUや格付け機関が新たな財政計画をどのように評価するかに注目が集まる。

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田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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