内外経済ウォッチ『米国~FRBの利下げ前倒しでインフレ上昇リスク~』(2024年11月号)

桂畑 誠治

目次

FRBは9月に4年半ぶりの利下げを決定

FRBは、24年9月17、18日に開催されたFOMCで、20年3月以来、4年半ぶりとなる利下げを決定した。政策金利を市場予想中央値の25bpを上回る50bp引き下げ、FFレート誘導目標レンジを4.75~5.00%とすることを賛成多数で決定した。

声明文では、経済の堅調が続くもと、雇用やインフレの鈍化によって、リスクバランスが概ね均衡したとの判断が示された。経済の堅調が持続しているが、FOMC参加者の想定を上回って労働市場が軟化したほか、インフレが目標に向けて低下するとの確信を持ったことを背景に、労働市場の更なる軟化の回避を目指して、FRBは大幅利下げを実施した。パウエル議長は50bpの利下げについて「後手に回らないという我々の決意の表れ」と説明し、予防的な大幅利下げだったことを強調した。パウエル議長は今後の金融政策運営に関して、「適切であれば、より速いペースやより遅いペースで利下げを行うほか、休止することもできる」と今後の利下げペースは、データ次第であり、会合ごとに決定する方針であることを強調した。

同時に公表されたFOMC参加者の経済・金利予測(24年9月)のドットチャート(FFレート誘導目標レンジの中央値、年末)は、24年末4.375%(24年合計100bp利下げ)と前回6月時点の予想5.125%(同25bp利下げ)から大幅に引き下げられ、11、12月FOMCでそれぞれ25bpの追加利下げが適切と予想していることが示された。利下げ回数は、25bpを1回と計算すれば、24年4回(6月見通し1回)、25年4回(同3回)と増加した一方、26年は2回(同4回)と減少し、26年末までに合計10回の利下げと前回の9回から1回の増加にとどまった。利下げを前倒しすることで、景気・労働市場の悪化を回避できるとの見方が示された。

図表
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FRBの利下げ前倒しでインフレ再上昇のリスク

10月4日に公表された9月の雇用統計では、失業率が4.1%(前月4.2%)と予想外に低下したほか、非農業部門雇用者数が前月差+25.4万人(同+15.9万人)と大幅に加速した。3カ月移動平均で前月差+18.6万人(前月同+14.0万人)と加速したものの、年初のような勢いはなくなっており、鈍化している。また、6ヵ月移動平均では前月差+16.7万人(前月同+17.6万人)と減速した。これらは、米経済成長が巡航速度に鈍化することを示唆している。同時に、インフレが鈍いながらも低下傾向を辿ると予想されることから、政策金利を高い水準に長期間据え置いた影響を早期に緩和し、失業率の上昇を回避するために、FRBは25bpの利下げを25年半ばにかけて継続すると予想される。市場金利の低下、株などの金融資産や不動産資産の増加などにより、経済成長が押し上げられよう。一方、FRBは経済成長の加速でインフレへの懸念を強め、FF金利を3.5%前後に引き下げた後、様子見に転じる公算が大きい。

図表
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桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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