内外経済ウォッチ『米国~FRBは失業率の上昇で9月に利下げ決定も~』(2024年8月号)

桂畑 誠治

目次

政策金利高止まりのもと景気減速の動き強まる

米国では、24年半ばにかけて景気の減速感が強まっている一方、インフレの鈍い低下が続いている。FRBは、24年6月まで7会合連続で政策金利を5.25%-5.50%に維持し、高い水準での政策金利の据え置きが長期化している。金融当局がインフレの先行き不透明を警戒し過ぎ、政策対応が後手に回ることで、景気後退に陥るリスクが高まりつつある。

企業の景況感は、個人消費など最終需要の鈍化、コスト増加、政策の先行き不透明感の高まり等によって、悪化しつつある。6月のISM景気指数をみると、製造業が48.5(前月48.7)と拡大・縮小の分岐点である50を小幅下回って推移しているなか、非製造業が48.8(前月53.8)と前月比▲5.0%ポイントと50を下回り、非製造業の活動が6月に縮小したことが示された。現時点では、景気の減速の継続を示していると判断されるが、景気下振れのリスクは確実に高まっている。

また、雇用情勢では、失業率が5月に4.0%(前月3.9%)と22年1月以降で初めて4%台に上昇したうえ、職探しを諦めた人の労働市場からの退出による失業者数の減少がなければ、4.2%に上昇していた。

一方、インフレでは、PCEコアデフレーターが5月に前年同月比+2.6%(前月同+2.8%)と減速した。また、3ヵ月前対比年率で+2.7%(前月同+3.5%)とやはり伸びが低下し、短期的なインフレ圧力の緩和が示された。ただし、インフレ目標の2%を大きく上回っているうえ、6カ月前対比年率では+3.2%(前月同+3.2%)と高い伸びにとどまっており、中期的なインフレ圧力は依然強い。

景気悪化を回避するための利下げの可能性も

パウエルFRB議長は7月2日に「米経済は力強く、労働市場も強いことから、われわれは時間をかけて正しく対応することが可能であり、それが我々の計画である」と景気や労働市場が強いため、インフレ低下の確信を持てるまで時間をかける余裕があるとの判断を維持した。それでも、パウエル議長は「ディスインフレの軌道に戻りつつあることを示唆している」とインフレ低下を評価し、「労働力需要と供給のバランスが改善の方向へ大きく動いた」と労働市場の逼迫緩和が大幅に進んだとの認識を示した。

9月のFOMCでは、今後公表される6、7、8月のコアインフレの上昇モメンタムが低い伸びにとどまれば、利下げが決定される可能性が高い。また、コアインフレの上昇モメンタムが低下せず、インフレ率が目標に向けて低下するとの確信を持てない場合でも、景気減速により失業率が4.3%程度に上昇していれば、FRBは深刻な景気後退を防ぐために利下げを決定すると予想される。

資料1 ISM景気指数の推移
資料1 ISM景気指数の推移

資料2 PCEコアデフレーター
資料2 PCEコアデフレーター

桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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