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- よく分かる!経済のツボ『GDPが回復すれば景気回復?資源高と総所得の視点』
GDPとGDI
日本の経済規模を表す統計として最も代表的なものに、国内総生産(GDP)があります。GDPとは、1年間に国内で新しく生み出された財やサービスの付加価値の合計で表され、「生産面」や「支出面」に注目したデータといえます。これに対して、日本の経済規模を「所得面(分配面)」から注目したデータに、国内総所得(GDI)があります。GDIとは、1年間に日本国内で国内外から得た所得の合計を表します。私たちが受け取る所得に注目することで、豊かさの実感により近いのはGDPよりもGDIといえるでしょう。生産されたものは支出され、それが分配されて所得となるので、名目上はGDP=GDIとなります。しかし、物価変動の影響を除いた実質面で比較すると、今、実質GDIが実質GDPを大きく下回っている状況にあることがわかります(資料1)。
総所得の視点が重要
実質GDIと実質GDPの差を「交易利得(損失)」と呼びます。交易利得とは、海外の商品(輸入品)の価格低下により、これまでより少ない代金で輸入可能となった場合に増加する利得を示します。同様に、自国の商品(輸出品)の価格上昇によっても利得が得られます。つまり、輸出価格がより高く、輸入価格がより低くなると、交易利得は改善し、実質GDIも増加します。
しかし、現状は交易利得の悪化が続いています。日本は資源のほとんどを輸入に依存しているため、足元で長期化する資源価格高騰が輸入物価の上昇を招き、輸入物価が輸出物価の伸びを大きく上回る状況が続いているからです(資料2)。これにより、交易利得は21年10-12月期には前期から▲3.4兆円もの減少となりました(資料3)。交易利得の減少により、実質GDI成長率は実質GDP成長率を下回る状況が続いています。
今後、国内の生産活動が回復しても、資源高を背景に企業収益が圧迫され、総所得が十分に改善しない状況が続けば、私たちの生活にとって厳しい状況が続くことが予想されます。景気回復のためには、生産の回復に加えて、交易損失を軽減する視点を持った政策が重要となるでしょう。
大柴 千智
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。