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- 内外経済ウォッチ『日本~65歳以上の高齢者はどのように働いているのか?~』(2021年4月号)
65歳以降働く人達の働き方は?
2021年4月から改正・高年齢者雇用安定法が施行され、企業は従業員に対して「70歳までの就業確保措置」を講ずるよう努力することが求められるようになる。長寿命化・高齢化に伴い、長く働く社会への移行が進められているが、65歳以降に働くイメージの湧かない人も少なくないと思われる。そこで、直近の経済統計を用いて、65歳以降も働き続ける人達がどのように働いているのかを簡単に整理してみた。
資料1は就業者の就労形態について年齢階層別に分類したものである。2020年の65歳以上就業者の就労形態は、役員が110万人、正規雇用者が120万人、非正規雇用者が390万人、自営業・家族従業者が286万人となっている。最も多いのは非正規雇用者として働く人たちだ(65歳以上就業者の43%)。正規雇用者として働く人の割合は、25~34歳の73%をピークに年齢が高くなるにつれて低下していき、65歳以上では1割強程度となる。役員として企業で働く人たちも1割強程度であり同程度だ。65歳以降も正規雇用の職に就く人は、かなりの少数派であることがわかる。そして、非正規雇用の次に多い働き方が「自営業・家族従業」(32%)であり、「正規雇用」を上回り2番手だ。この自営業・家族従業者について業種別にみると農業が多く、建設業、洗濯理容美容浴場業、飲食店が続く(資料2)。
シニア起業に拡大余地
65歳以上の自営業・家族従業者は「従来から個人経営していた人」が65歳になっても事業を続けている、というケースが多いと考えられる。一方で、総務省統計によれば起業者に占める60歳以上割合が上昇しており、企業で勤め上げた後に起業するケースも増えているとみられる。筆者も不動産会社を引退した後にマンション管理士として働く人や、行政機関での経験を活かして社会保険労務士として独立した人と会う機会があった。ちょうど資料2においても、不動産業や専門サービス業が上位に位置している。
改正・高年齢者雇用安定法は、就業確保措置として「起業した従業員と業務委託契約を結ぶ制度の導入」を含む。働く側も起業を視野に入れることで、キャリアの選択肢を増やすことができるだろう。終身雇用の見直しや働き方の多様化の中で、雇用時の経験を生かした形でのシニア起業は、今後も増える余地があろう。
星野 卓也
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。