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2026.08.13
NISA・iDeCo
資産形成
2025年のNISA利用状況を読み解く(2)
~つみたて投資の広がりと商品選択にみられる変化の兆し~
鄭 美沙
1. つみたて投資枠の利用拡大
前稿「2025年のNISA利用状況を読み解く(1)」では、2026年7月に公表された金融庁の「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)」に基づき、2025年のNISA口座の普及状況を考察した。本稿では、買付額などのデータから実際の利用実態を読み解く。
まず、2025年中における年間買付額をみると(注1)、2025年は18.7兆円と2024年から7%増となった(資料1)。そのうち、成長投資枠が占める割合が67%、つみたて投資枠は33%であり、2024年と比較してつみたて投資枠の割合がやや増えている。

2025年末の全NISA口座数を分母とした1口座当たりの年間平均買付額は、成長投資枠は44.4万円(2024年48.5万円)、つみたて投資枠は22.1万円(2024年19.4万円)と推計される(注2)。2024年と比較して、2025年は特につみたて投資枠の活用が進んだとみられる。なお、この推計には年間買付額が0円の口座も含まれるため、買付実施口座当たりの平均額とは異なる。
年代別に平均買付額の推計値をみると、成長投資枠では60歳代以上で特に減少幅が大きい(資料2左)。一方で、同年代はつみたて投資枠の平均買付額が増加しており、高齢層においてもつみたて投資枠の活用が進んだことがうかがえる(資料2右)。この要因としては、既存のNISA利用者が成長投資枠での買付額を減らす一方、つみたて投資枠での買付額を増やした、あるいは2025年からNISAを利用し始めた人が主につみたて投資枠を利用したという可能性が考えられる。
同様に、30歳~50歳代でも成長投資枠での買付額が減少し、つみたて投資枠では増加している。20歳代では、成長投資枠・つみたて投資枠ともに平均買付額が減少している。20歳代は他の年代と比べてNISA口座数の増加幅が特に大きく、現役世代の中でも1年間買付がなかった口座の割合も高いことを踏まえると(注3)、1口座当たりの買付額そのものが減少したというよりも、分母となる口座数の増加が平均を押し下げた影響があると考えられる。

2. ボリュームゾーンは年間投資額60万円以下
次に、買付額の分布を確認する。資料3は、利用状況別の口座数の割合である。前稿で示したとおり、年間で一度も買付がなかった口座(年間買付額0円)が全年代では36.6%を占める。

これに次いで多いのは、年間買付額が0~60万円の口座である。全年代では35.4%を占め、買付を行っている人のボリュームゾーンとなっている。この割合は2024年と同水準であり、全体の構造にも大きな変化はない。また、特に20歳代では、0~60万円の層が47.9%と約半数を占めており、NISAを利用する若年層では月額5万円以下で投資を行うケースが一般的であることがうかがえる。
3. 若年層で上場株式の購入増加
次に、購入商品の傾向を確認する。上場株式も対象となり、より選択肢が増える成長投資枠における年間買付額の商品別構成比をみると、全年代では投資信託が51.1%、次に国内株式が41.2%を占めた(資料4)。一方で、海外株式は3.9%と、国内株式と比べて著しく少ない。奥田(2026)は、投資信託では海外投資型が中心である一方、上場株式では国内株式が中心と指摘しており、本調査結果でも上場株式について同様の結果がみられた。

一般的に、投資家には「ホームカントリーバイアス」があるといわれてきた。これは、海外資産より自国資産への投資比率が高くなる傾向を指す。その背景には、情報収集の容易さや為替リスクの回避、企業への親近感などがあるとされる。近年、全世界株式に投資するファンドの人気が高まるなど、ホームカントリーバイアスが弱まりつつあるようにもみえる。SNSや生成AIによる翻訳機能の向上により、以前よりも国内外の情報量の差も縮小している。しかし、こうした成長投資枠における国内株式中心の投資傾向を踏まえると、上場株式においてはホームカントリーバイアスが依然として存在していると考えられる。
また、2024年は国内株式と海外株式を合計した上場株式の買付額の割合が43.5%であったが、2025年は45.1%(国内株式41.2%+海外株式3.9%)と若干増加している。年代別では、20歳代が4.4ポイント増と最も大きく、次いで30歳代が3ポイント増であった。特に、若年層において、上場株式への関心が高まりつつあるようだ。
なお、国内株式の保有割合は70歳代以上で大きく上昇する。日本証券業協会(2026)によると、70歳代以上のNISA利用者のうち、有価証券投資の経験年数が10年以上に及ぶ人は76.9%を占め、60歳代の55.7%を大きく上回る。こうした投資経験を通じて金融リテラシーが高まり、上場株式の保有につながっている可能性がある。加えて、現在ほど低コストのインデックスファンドが普及していない時期に投資を始めたため、当初から上場株式を中心に投資してきたという世代要因も考えられるだろう。
4. 投資経験が積み重なるNISA利用者
株式の直接保有を規定する要因について、Christelis et al.(2011)はリスク選好が重要であることを示している。また、Chu et al.(2017)は、自身の金融リテラシーを過信している人ほど、ポートフォリオを株式のみで構成する可能性が高いと指摘している。さらに、Breitkopf et al.(2021)は、保有資産額の大きさが株式保有を促す要因の一つであるとしている。
もっとも、こうした海外の先行研究で示された要因が、現在の日本にも同様に当てはまるとは限らない。例えば、日本証券業協会(2026)によると、個人年収別に成長投資枠で購入した商品をみると、「国内株式」の割合が最も高いのは年収300万円未満の層である。この結果を踏まえると、少なくともNISAを利用した国内株式への投資については、資産額の影響は大きくない可能性がある。
このように投資信託と株式では保有要因が異なると考えられるほか、現在の日本において、どの要因が株式保有に影響を与えるかは必ずしも明らかではない。投資信託からNISAを始めた人が株式保有に移行するにあたっては、リスク選好や資産額、金融リテラシーなど複数の要因が関係する可能性が考えられる。
新NISAの開始から2年が経過し、制度開始と同時に投資を始めた人は投資歴2年となった。この間に、金融リテラシーや投資への自信を高めた人も少なくないだろう。鄭(2025)では2024年の若年層のNISA利用傾向を「とりあえずインデックスファンド」と評した。奥田(2026)によると、2025年もその傾向が継続しているようだ。一方で、3節で述べたように、若年層においては上場株式の購入割合が微増しており、投資行動に変化の兆しもみられる。今後は、NISA利用者の金融リテラシーや投資経験の蓄積に伴い、若年層の株式の直接保有が進むのかを含めて、投資行動の変化を継続的に検証していく必要がある。
【注釈】
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2025年1月1日~12月31日の利用枠で買付けがあった金額。
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成長投資枠(12.5兆円)およびつみたて投資枠(6.2兆円)の年間買付額を、2025年12月末時点のNISA口座数(2,820万口座)で除して算出。2024年および年代別の数値についても同様の方法で算出。
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鄭美沙(2026)「2025年のNISA利用状況を読み解く(1)~NISAが普及してもなお残る『なぜ日本人は投資をしないのか?』という課題~」参照
【参考文献】
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奥田宏二(2026)「新NISA、『株式は日本、投信は海外』はなぜか~投資の二重構造を分析する~」
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日本証券業協会(2026)「新NISA開始後の利用動向に関する調査報告書」
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鄭美沙(2025)「新NISA、若者はどう使ったのか?~『とりあえずインデックスファンド』の次に向けて~」
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鄭美沙(2026)「2025年のNISA利用状況を読み解く(1)~NISAが普及してもなお残る『なぜ日本人は投資をしないのか?』という課題~」
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Breitkopf, N., S. Knüpfer, and E. Rantapuska(2021)“Mutual Fund and Share Ownership in Finland: Trends and Patterns in 2004-2016,” Nordic Journal of Business, 70(4), 287–308.
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Christelis, Dimitris & Georgarakos, Dimitris & Haliassos, Michael (2011)“Stockholding: Participation, location, and spillovers,” Journal of Banking & Finance, Elsevier, vol. 35(8), pages 1918-1930, August.
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Chu, Z., Wang, Z., Xiao, J. J., & Zhang, W (2017) “Financial literacy, portfolio choice and financial wellbeing” Social Indicators Research, 132(2), 799-820.
鄭 美沙
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。