- 要旨
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2024年に始まった新NISAでは、成長投資枠で買われる上場株式の約9割を国内株式が占める一方、投資信託買付額上位には海外を主な投資対象とする商品が並ぶ。本稿はこの「株式は日本、投信は海外」という二重構造を投資枠の使い方、年代、購入理由から分析した。
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国内株式への偏りが特に強いのは、成長投資枠だけを使う層と高齢層だ。日証協の調査を用いた試算では、2025年に成長投資枠だけを使う層では購入銘柄の約79%を国内株式が占める。年代別の国内株式比率をみると、20代以下の24.8%から70代以上の74.0%まで年齢とともに上昇する。
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つみたて投資枠は若年層ほど利用率が高く、全世界株式や米国株式のインデックス型が継続して買われている。投信では海外の成長性が重視される一方、成長投資枠では株価、配当、企業業績、株主優待など個々の銘柄に関する理由が重視される。投資先を選ぶ際に重視する点の違いが、二重構造の要因と考えられる。
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今後、高齢層では資産の取り崩しが進む一方、若年層による海外型投信の積立は長期にわたって続く。現在の傾向が続けば、NISAを通じた資金はこれまで以上に海外へ向かいやすくなる。国内への資金流入を増やすには、幅広い企業で一株あたり利益を持続的に増やし、利益を成長投資や株主還元につなげることで、日本市場が長期の投資先として選ばれる実績を積み重ねる必要がある。
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- 目次
1. 新NISAで個人マネーはどこに向かったのか
2024年に新NISA(少額投資非課税制度)が始まって2年半が経過した。金融庁によると、2024~2025年の買付額は36.1兆円となった。NISA制度開始以来の累計買付額は2025年末時点で71兆円にのぼり、2027年末に56兆円という政府目標を上回る。
NISAを通じた個人マネーは何に向かったのだろうか。買付の内訳をみると、二つの傾向が見てとれる。株式は国内、投資信託は海外という流れだ。本稿では、投資家の年代と投資枠の使い方から買い手を分け、購入理由から国内株と海外投信の選ばれ方の違いを分析する。
2. 新NISAにみられる二重構造
新NISAには二つの投資枠がある。一つは上場株式や投信など幅広い商品を購入できる成長投資枠だ。年間240万円まで投資できる。もう一つのつみたて投資枠は、対象商品が長期の積立・分散投資に適した一定の投信等に限られる。年間投資枠は120万円だ。
金融庁によると、2024~2025年のNISA買付額のうち、約7割にあたる24.9兆円を成長投資枠が占めた。成長投資枠の内訳は、投信等(ETF・REITを含む)が約13.9兆円、上場株式が約11兆円となっている。成長投資枠で買われた上場株式は国内株式が中心で、2025年には上場株式5.6兆円のうち5.2兆円、91.4%を占めた。NISAを通じた株式投資は国内に向かっている。外国株の場合、情報収集や取引の面で負担が大きく、また米国株の配当金は非課税メリットが十分に生かせないといった要因も考えられる。
ここからは投信に目を向ける。金融庁の統計では、投信の投資先地域は分からないため、日本証券業協会の主要証券会社10社集計を参照する。成長投資枠の投信買付額上位10銘柄を月次で追うと、海外投資型が中心となっていることが分かる。2024年2月から2025年9月までの20ヵ月のうち、16ヵ月は国内投資型が1銘柄も入っていない。2025年10月以降、毎月1銘柄は入るようになったが、海外投資型中心という状況は変わっていない(資料1、左図)。

つみたて投資枠では、上位銘柄の地域別構成はより変わらない。2024年2月から2025年7月までの18ヵ月は国内0・内外3・海外7で一度も変わらず、2025年8月以降は国内1・内外2・海外7が11ヵ月続く(資料1、右図)。
投信が海外に偏るのは、選べる商品が限られているためではない。金融庁によると、2026年8月10日時点のつみたて投資枠対象商品361本のうち、公募投信の株式型は197本で、その内訳は国内66本・内外36本・海外95本となっている。株式型に限れば国内株式に投資する商品が3分の1を占める。近年ではSNSで全世界株式型投信や米国株式型投信を勧める情報が多く、NISAを通じて初めて投資する人はこうした影響もありそうだ。
3. 国内株式比率は高齢層ほど高い
次に国内株式を買っているのはどのような層かを探る。まず、投資枠の使い方によって国内株式の割合に大きな差がある。日証協が2025年に新NISAで金融商品を購入した個人を対象に実施した調査によると、対象者の半数超は2025年に二つの投資枠で購入したが、約2割は成長投資枠だけで購入した(注1)。筆者の試算では、成長投資枠で購入された銘柄に占める国内株式の割合は全体で48.2%だが、つみたて投資枠との併用者でみると34.0%に下がる。公表された延べ銘柄数から試算すると、2025年に成長投資枠だけで購入した層では、国内株式が約79%を占める(注2)。国内株式への偏りは、この層で特に強い。
年代による差も大きい。成長投資枠で購入された銘柄に占める国内株式の割合は、20代以下の24.8%から年齢とともに上がり、70代以上では74.0%に達する(資料2)。高齢層ほど成長投資枠で個別株を、若年層ほど投信を購入している。

なお、日証協調査の延べ銘柄数ベースでは、外国株式はどの年代でも少数にとどまる。成長投資枠で購入された銘柄に占める外国株式は全体で2%程度だった。個別株を買う場合に国内株を選ぶ傾向は、年代を問わず共通している。年代によって分かれるのは、成長投資枠で個別株を買うか、投信を買うかという点だ。
高齢層では、成長投資枠の購入金額も大きい。70代以上の平均購入金額は約113万円で、20代以下の約64万円を大きく上回る。高齢層は国内株式の割合が高く、成長投資枠への投資額も大きい。この組み合わせが、株式買付の国内偏重を支えている(注3)。
4. 若年層は海外投信を積み立てる
つみたて投資枠の利用率は若年層ほど高い。2025年中に購入した割合は、20代以下の95.3%に対して、70代以上では51.5%にとどまる。利用しない理由として、高齢層では「長期つみたてを行う年齢ではない」が多く挙げられた。自身で運用を続けられる期間の見通しが、積立を利用するかどうかに影響している。つみたて投資枠で2025年中に購入した人は、日証協の調査対象者の約8割を占める。成長投資枠と比べると一人あたりの購入金額は小さいが、その多くが継続して買うことで投資額が積み上がる。
買われる商品をみると、どの年代でも全世界株式や米国株式に投資するインデックス型が上位を占め、その割合は若年層ほど高い(資料3)。若年層ほど利用率が高いつみたて投資枠で、海外を主な投資対象とする商品が継続して買われている。投信を通じた海外への資金は、定期的な買付として積み上がっていく。

5. 投信と国内株は選ばれる理由が違う
国内株と海外投信では、投資対象だけでなく、選ぶ際に重視する点が異なる。日証協の調査で購入理由をみると、その違いが鮮明になる。つみたて投資枠では、「海外の成長性への期待」が31.2%で最も多く、「日本国内の成長性への期待」の16.0%を大きく上回る(資料4、左図)。海外の成長性への期待が、商品を選ぶ主な理由となっている。

成長投資枠の購入理由で上位に並ぶのは、中長期的な株価の上昇、配当、企業業績、株主優待など、個々の銘柄に関する理由だ。「日本国内の成長性への期待」は8.3%にとどまる(注4)。年代別にみると、高齢層では中長期的な株価の上昇や配当を購入理由に挙げる割合が高い。
つみたて投資枠では海外という地域が選ばれ、成長投資枠では個々の銘柄が選ばれる。年代によって利用する投資枠と買う商品が異なり、それぞれで重視される条件も違う。この組み合わせが、集計値では「株式は日本、投信は海外」という二重構造として表れている。
6. NISAを通じた資金は海外にさらに向かう可能性
新NISAをめぐっては、家計資金が海外資産へ向かうとの指摘がなされてきた。本稿でも、投信買付額上位には海外を主な投資対象とする商品が並ぶことを確認した。つみたて投資枠では上位銘柄の構成がほぼ固定され、若年層ほど全世界株式や米国株式のインデックス型を購入する割合が高い。若年層による積立が長期間続く一方、国内株式の購入割合が高い高齢層では、今後、資産の取り崩しが増えると見込まれる。現在の「株式は日本、投信は海外」という二重構造は、時間の経過とともに海外型投信の比重が高まる方向へ変化する可能性がある。
NISAの目的は、家計の安定的な資産形成を支えることにある。海外を含む商品への投資は、長期の分散投資という制度の目的にも沿っている。一方で、税制優遇を通じた海外資産の買付が円売り要因になっているとの指摘も一部にある。
NISAの制度設計で参考にされた英国でも、家計資金を国内企業へ振り向ける政策が検討された。2024年3月、ハント財務相(当時)は、年2万ポンドの通常のISA枠に加え、英国関連資産に投資できる5,000ポンドのUK ISAを発表した。英国企業への資金供給を増やすことが目的だった。しかし、制度の複雑化や効果を疑問視する声が上がり、新政権は同年秋に導入を見送った(注5)。
英国では、追加枠を利用する投資家が通常枠などの資産配分を調整すれば、英国株への資金流入の純増効果は限られるとの指摘もあった。非課税枠の設計によって資金の向きを変えようとする手法には限界がある。
では、海外型投信を積立投資の入口とした若年層が、国内へ目を向ける条件は何だろうか。つみたて投資枠の購入理由で最も多く挙げられたのは「海外の成長性への期待」であり、「日本国内の成長性への期待」を大きく上回った。投信を選ぶ際には、投資対象地域の成長性が明示的に判断されている。国内株式型投信は、つみたて投資枠の株式型商品の約3分の1を占めており、一定の品揃えがある。国内株式型投信が選ばれるかどうかには、商品設計や手数料とともに、日本経済と国内企業の中長期的な成長がどう評価されるかが影響する。
新NISAは、家計の資産形成を支える制度として定着した。その資金が国内へ向かうかどうかは、日本市場全体が長期の投資先として選ばれるかに左右される。その鍵を握るのは、幅広い企業による一株あたり利益の持続的な増加だ。そのためには、各企業が利益を成長投資や株主還元へ着実に振り向けるとともに、市場を映す指数も新たな成長企業を適切に取り込んでいく必要がある。こうした企業と市場双方の変化が実績として積み重なれば、国内株式型投信は若年層の長期積立における有力な選択肢として定着していくだろう。
【注釈】
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日証協「新NISA開始後の利用動向に関する調査」は、2025年に新NISAで金融商品を購入した7,926人を対象に、2026年1月に実施したインターネット調査。報告書は、ネット系証券・ネット系銀行の利用者の割合が実態より高めに出ている可能性を指摘している。
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成長投資枠だけを利用する層の国内株式比率は、日証協の公表値を基に筆者が試算した。成長投資枠全体の延べ11,143銘柄と、つみたて投資枠との併用者の延べ7,630銘柄について、それぞれの国内株式比率48.2%、34.0%から算出した。公表比率を用いた概算のため、端数処理の影響がある。
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購入銘柄の種類は、回答者が2025年中に購入した最大5銘柄についての延べ銘柄数を基数としている。平均購入金額は、回答者一人あたりの成長投資枠全体の購入金額であり、国内株式だけの購入金額ではない。
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購入理由は、回答者が2025年中に購入した最大5銘柄について複数回答で尋ねたもの。成長投資枠の集計には、国内外の個別株のほか、投信やETFなども含まれる。
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英国財務省「Spring Budget 2024」「UK ISA consultation」、Financial Times “‘British Isa’ plan scrapped by government”を参照。
【参考文献】
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金融庁(2026)「NISA口座の利用状況に関する調査結果(2025年12月末時点)」
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金融庁(2025)「NISA口座の利用状況に関する調査結果(2024年12月末時点)」(2026年7月3日更新)
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金融庁(2026)「つみたて投資枠対象商品の概要について(2026年8月10日時点)」
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日証協(2024~2026)「NISA口座の開設・利用状況調査結果(証券会社10社)」(各月)
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日証協(2026)「新NISA開始後の利用動向に関する調査報告書」
奥田 宏二
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