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経済財政諮問会議(2026年10月9日)解説

〜責任ある積極財政に基づく『中長期経済財政計画』の実行~多角的な分析・検証に基づく柔軟な経済財政運営~

永濱 利廣

要旨
  • 基本方針(骨太方針2026): 実質1%超・名目3%超の成長率や2040年度の投資・GDP目標などを掲げ、計画を定期的な実行・点検・見直しの枠組みとして具体化すべき。

  • 各種戦略の整合的推進: 成長戦略等をマクロ経済財政の目標と整合させ、労働・社会保障・教育研究・社会資本・地方行財政などの重要テーマに対応すべき。

  • 柔軟な経済財政運営: 単一の指標に頼らず複数のケースを多角的に分析し、債務残高の悪化兆候に際して早期の政策対応や複数年度の視点による柔軟な運営を行うべき。

  • 推進体制の再構築: 一体改革推進委員会の機能を発展させ、成長投資の効果検証や毎年度の予算編成等への反映サイクルを構築すべき。

  • 筆者提言として、急激な財政緊縮を避けるための事前のリスク管理と丁寧なメッセージの発信を提案。また、債務だけでなく政府「資産」の動向(金融資産の増加など)も重視した多角的な検証の重要性を指摘。そして、資本だけでなく労働についてもKPIを設定し、サプライサイド(供給力)強化の姿勢を定量的に示すことも提言。

目次

1. はじめに

2026年9月30日に開催された経済財政諮問会議では、責任ある積極財政に基づく『中長期経済財政計画』の実行~多角的な分析・検証に基づく柔軟な経済財政運営~について議論が繰り広げられた。

そこで本稿では、会議資料を基に、諮問会議で展開された内容と筆者の意見を紹介する。

2. 骨太方針2026における「中長期経済財政計画」の基本方針

『骨太方針 2026』では、実質1%超・名目3%超の成長率、2040年度の国内投資額250兆円・GDP1,100兆円弱、債務残高対GDP比の安定的な引下げなどの目標を掲げ、これを「中長期経済財政計画」として位置づけている。

そして、計画を単なる将来見通しで終わらせず、政策の実行・点検・見直しを定期的かつ継続的に行う政府全体の運営枠組みとして具体化することを求める。

3. 各種戦略の整合的推進と重点課題への対応(「強い経済」の構築)

重要戦略の整合性確保として、成長戦略や地域未来戦略、人口総合戦略などの重要戦略を、マクロ経済財政の目指す姿と整合的に推進するため、経済財政諮問会議で積極的に議論する必要が提言された。

成長志向で持続可能性を確保するための重点テーマ:

労働: AIやロボットの最大限の活用による付加価値向上と、満たされない労働需要への対応。

社会保障:社会保障サービスの確保と現役世代の負担軽減の両立、持続可能な介護システムの構築。

教育・研究:AI時代に対応した教育・研究力の強化(基盤的経費の強化、大学規模の将来像など)。

社会資本: 戦略的なまちづくりや、技術を活用した選択的なインフラの集約化・更新。

地方行財政: 自治体機能の維持に向けた目標の設定、国・自治体・民間の役割分担。

4. 経済成長と財政の持続可能性を両立する経済財政運営

多角的な分析・検証に基づく仕組みとして、一つの見通しや単一の指標に依拠せず、複数の指標や異なる前提に基づく複数のケースを用いて幅広い可能性を分析すべきとされた。

また、早期の政策対応として、債務残高対GDP比が上昇するまで見直しを待つのではなく、目標実現が困難となる重要な兆しが見られた段階で要因を分析し、成長戦略の再構築や歳出・歳入の見直しなどの政策対応につなげるべきとされた。

さらに、各種ショックへの柔軟性の確保として、景気変動や市場動向に左右される指標に基づく単年度での厳格な管理ではなく、複数年度の視点から経済・財政状況や不確実性に応じた運営を行うべきとされた。

図表
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5. 推進体制の再構築

これまでの「経済・財政一体改革推進委員会」が担ってきた進捗管理・機能を発展させ、中長期経済財政計画の推進体制として再構築すべきとされた。

成長投資の実施状況や民間投資の誘発効果などを検証し、分析結果を毎年度の予算編成や各種基本計画・方針に反映させるサイクルを構築すべきとされた。

6. 筆者提言

以上を踏まえ、本会議において筆者は「責任ある積極財政に基づく『中長期経済財政計画』の実行」の観点から提言を行った。

まずは、計画の点検・検証とメッセージの重要性についてである。具体的には、債務残高対GDP比が上がり始めてから慌ててプライマリーバランスを急激に締め出すような運営を行うと、かえって急進的な財政緊縮を招くリスクがあるとした。そして、今回の計画はそうした急激な調整を避けて、事前のリスク管理や機動的な対応を行おうとするものであり、その旨のメッセージを明確かつ丁寧に打ち出しておく必要があると提言した。

続いて、多角的な検証における「資産」動向の重視についてである。具体的には、諸外国(英国やカナダ、ニュージーランドなど)では、債務の指標だけでなく、政府の「資産」の動向や、純債務による財政目標の管理を重視する分析が標準的になっているとした。そして、我が国においても、一般政府の金融資産残高が株価上昇等により過去9か月間で82兆円増加し、990兆円に達するなど、年金を含む財政全体にとって大きなメリットとなっているとした。このため、こうした財政の持続可能性に関する指標の動向についても、幅広く分かりやすく示していくことが重要であると提言した。

図表
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最後に、潜在成長率の引き上げに向けた計画の整合的な進捗管理についてである。というのも、高市内閣の政策はデマンドサイド重視やリフレ政策などと主張される向きもあるが、実際は供給力の強化(サプライサイド)を重視しているということである。実際、投資拡大(370兆円超のマクロ指標)だけでなく、労働投入の拡大につながる政策(労働時間規制の見直し、所得連動型給付、ベビーシッター支援など)についても、これまでにない難しい課題にチャレンジしていることを評価したうえで、資本だけでなく労働についてもKPIを設定して定量的に進捗確認を行い、サプライサイドを重視しているというメッセージをしっかりと伝えていくことが重要であると提言した。

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

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