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- フランス予算審議、極右がキングメーカーに浮上
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- フランス政府は1日に閣議決定した2027年予算案で、財政再建を軌道に戻すため、新たに430億ユーロの財政改善措置を盛り込んだ。だが、少数与党のルコルニュ政権には予算を成立させる議会基盤がなく、前年に予算成立で協力した穏健左派政党の社会党は、大統領選を前に政権との対決姿勢を強めている。代わって予算成立の鍵を握りつつあるのが、大統領選挙での勝利を目指す極右政党の国民連合(RN)だ。今後の焦点は、年金抑制や増税・歳出削減を巡る修正を通じ、社会党またはRNの不信任回避を取り付けられるかに移る。
430億ユーロの追加財政措置を盛り込んだ政府予算案
フランス政府は10月1日、2027年予算案を閣議決定した。2026年に国内総生産(GDP)比で5.4%程度に膨らむ見通しの財政赤字を、2027年に5.0%へ縮小することを目指す。財政再建を軌道に戻すには540億ユーロの財政改善措置が必要とされ、既に決定済みの措置に加えて、2027年予算案で新たに430億ユーロを盛り込んだ。このうちの約6割は歳出抑制を通じて捻出するとしており、公務員給与の算定基準の凍結、国防など一部の優先分野を除く省庁予算の削減、地方政府への歳出削減要求、年金給付の物価連動の一部停止、医療費の伸び抑制、疾病手当や労災給付の厳格化などを実施する。歳入面では、年金受給者向け所得控除の縮小、企業向け社会保険料負担軽減措置の縮小、糖分含有量の多い加工食品への課税強化などを盛り込んだ。家計や企業を対象とした一律の大型増税は見送ったが、税・社会保険料負担のGDP比は現在の43.9%から2027年に44.2%へ上昇する見通しだ。
前年の予算成立を支えた社会党は態度を硬化
予算審議は難航が避けられない。9月24日付けレポート「難航するフランスの予算協議」で指摘した通り、ルコルニュ首相が率いる政府は国民議会(下院)で過半数を持たず、予算成立には野党の協力が必要となる。憲法49条3項に基づく手続きを用いれば、議会で予算法案そのものを採決することなく成立させることができるが、野党は内閣不信任案を提出できる。不信任案が否決されれば法案は採択されたものと見做される一方、可決されれば内閣は総辞職する。
前年の予算協議では、予算未成立のまま越年した後、穏健左派の野党・社会党(PS)の協力で予算成立に漕ぎ着けた。社会党は、マクロン大統領の目玉政策である年金改革の停止などを条件に、49条3項発動後の内閣不信任案への賛成を見送り、予算成立と政権存続を容認した。今回発表された予算案には、社会党が求める富裕層や高収益企業への課税強化などが盛り込まれなかった一方で、年金や社会保障を中心に幅広い負担を求める措置が含まれている。社会党のフォール第一書記は政府の予算案について、「何も変わらなければ不信任にする」と警告している。2027年春の大統領選挙が近づくなか、社会党が再び予算成立と政権存続に協力する政治的なハードルは前年より高まっている。政府が再び社会党の不信任回避を取り付けるには、予算案の大幅な修正が必要になる。
予算成立のキングメーカーに浮上する国民連合
こうしたなか、予算成立の鍵を握りつつあるのが、大統領選挙での勝利を目指す極右政党・国民連合(RN)だ。RNの大統領候補であるルペン氏は、年金の物価連動を抑制する措置などに反対しており、今回の政府案に反対票を投じる可能性を示唆している。同時に、「不完全な予算であっても、予算がないよりマシ」との趣旨の発言を示唆しており、予算成立そのものを阻止しない可能性も示唆している。政府が49条3項を発動した場合でも、他の野党が提出する内閣不信任案への賛成を見送る可能性がある。
RNは財政再建そのものを否定している訳ではなく、年金受給者や現役世代への負担増に反対する代わりに、政府機関の経費削減、外国人向け給付の削減、欧州連合(EU)への拠出金削減などを要求している。政府案には、外国人が一部の社会給付を受給する際の居住要件を厳しくする措置など、RNの主張と重なるものも含まれる。政府側はRNへの譲歩との見方を否定しているものの、RNが予算成立を左右する可能性が高まっている。
不信任回避に向けた与野党協議が本格化
予算案は10月中旬から国民議会の本会議で本格的な審議に入る。例年の審議日程を考えると、まずは歳入部分を審議し、その後に歳出部分や社会保障予算の審議が続き、11月中旬にかけて国民議会での審議が進められ、年内の成立を目指すことになる。この1ヶ月余りが、ルコルニュ政権にとって野党との妥協点を探る重要な期間となる。まずは議会審議を通じて野党の修正案を部分的に取り込み、そのうえで通常採決を目指すのか、49条3項を用いるかを判断することになるだろう。予算案そのものへの積極的な賛成を取り付けることが難しい場合も、社会党かRNの少なくとも一方が内閣不信任に加わらない内容まで予算案を修正できるかどうかが重要となる。
焦点の1つが年金給付の抑制だ。政府案では、低額年金を物価連動停止の対象外とする一方、月額1260ユーロを上回る年金については物価連動を停止する。年金抑制を緩和する代わりに富裕層や大企業への課税を強化する方向であれば社会党との距離を縮めやすくなり、歳出削減を上積みし、外国人向け給付などを厳格化する方向であればRNの要求に近づく。両党が求める修正の方向性は大きく異なり、政府は限られた財政余地のなかで難しい選択を迫られる。
予算審議が映す大統領選前の政治力学
政府にはもう1つの非常手段も残されている。憲法47条では、議会が予算案の提出から70日以内に審議を終えなければ、政府は予算案の規定を政令(オルドナンス)によって実施することが認められている。今回の場合、12月17日がその期限となる。現在の政治体制(第五共和制)の下でこの手法が実際に使われた例はなく、実施すれば大きな政治的な反発を招く可能性がある。
2027年予算を巡る攻防は、単なる財政再建策の調整にとどまらない。大統領選挙を目前に控え、各党が政権との距離の取り方を模索するなか、前年まで予算成立を支えた社会党との協力関係は弱まり、代わってRNの対応が政権存続を左右する可能性が増している。ルコルニュ政権にとって残された選択肢は、社会党かRNのどちらかに全面的に接近することではなく、双方との交渉を続けながら、少なくとも一方が不信任に踏み切らないぎりぎりの妥協点を探ることになる。予算審議の行方は、大統領選挙を前にフランス政治の重心がどこへ移りつつあるのかを映し出すことにもなりそうだ。
田中 理
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