米国:増減を繰り返すも基調は低調(26年7月住宅着工)

~着工は▲12.4%、許可件数は持ち直すも高金利と政策不透明感で底位推移~

桂畑 誠治

目次

1.住宅着工は悪天候と需要鈍化により大幅減少

26年7月の住宅着工件数(季節調整済、年率換算)は123.9万戸となり、前月比▲12.4%(前月:141.5万戸、同+19.7%)と急減し、市場予想中央値(ブルームバーグ集計)の134.5万戸(同▲5.9%)を大幅に下回った。なお、5・6月分は計2.9万戸下方修正されている。

内訳をみると、着工の基調を示す「一戸建て住宅着工件数」が80.8万戸、前月比▲9.9%(前月:89.7万戸、同+0.9%)と減少に転じた。高止まりする住宅ローン金利による購買力低下と価格高騰が販売を抑制している。さらに、全米各地を襲った猛暑・熱波や局地的な悪天候などの一時的要因、および人件費・資材コストの高騰、労働力不足が建設活動の直接的な下押し圧力となった。

また、月次での変動が激しい「集合住宅着工件数」は43.1万戸、前月比▲16.8%(前月:51.8万戸、同+76.8%)と大幅な反動減となった。既存住宅の慢性的な在庫不足や用途地域規制の緩和に伴う需要はあるものの、過去数年の大量供給による在庫調整局面が続いており、全体としては先行きを模索する底固めの域を出ていない。

地域別では、北東部がプラスを維持した一方、最大市場である南部をはじめ、中西部、西部で大幅な減少を記録した。

図表
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2.許可件数は持ち直すも、建設業者の慎重姿勢で底位推移

着工の先行指標となる7月の住宅建設許可件数(季節調整済、年率換算)は144.3万戸、前月比+5.0%(前月:137.4万戸、同▲2.6%)となり、市場予想中央値(ブルームバーグ集計)の137.5万戸(同+0.6%)を上回った。着工件数の急減とは対照的な動きを見せている。なお、5・6月分は計0.7万戸上方修正されている。

内訳をみると、一戸建てが89.4万戸、前月比+2.5%(前月:87.2万戸、同▲2.2%)と増加に転じた。また、変動の激しい集合住宅が54.9万戸、前月比+9.4%(前月:50.2万戸、同▲3.1%)と大幅に増加した。

許可件数の増加は先行きに対する一部の期待を示すものの、建設業者マインドは低迷している。未販売の完成住宅在庫の積み上がりや建設コスト高への警戒が強く、許可から実際の着工へスムーズに移行するかは不透明である。地域別では、北東部で減少した一方、南部、中西部、西部で増加した。

3.住宅市場は高金利と政策リスクによる不確実性の高まりを背景に停滞感が漂う

住宅市場全体には、住宅ローン金利の高止まりと価格上昇に伴う販売停滞感が色濃く漂っている。これに加え、トランプ政権による関税引き上げ(輸入資材価格の押し上げ)や不法移民取り締まり強化(建設現場における労働力不足と人件費高騰)に対する強い懸念が、供給側の構造的リスクとして浮上している。建設業者はインセンティブ(買戻し特約による金利引き下げ等)の提供で需要喚起を図っているものの、採算性の悪化から新規着工に対して慎重な姿勢を崩していない。

4.先行きは需要鈍化と供給制約により停滞が継続

26年の住宅市場は、実質所得の改善や建設業者による販促策(金利引き下げ特約の提供など)が一定の下支えとなるものの、住宅ローン金利の高止まりと住宅価格の高価格化が需要の重しとなり、住宅販売は弱含みで推移する見通しである。また、関税政策や移民規制に伴う「資材高・人手不足」という二重の供給制約により、建設業者の投資意欲は抑えられ続ける公算が大きい。このため、26年の住宅着工件数は前年比▲3%程度の減少が見込まれ、25年(前年比▲1.1%)に続く減少傾向が継続すると考えられる。

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桂畑 誠治


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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