米国:7月小売売上高は反動で減少も、基調は巡航速度を維持

~FRBのタカ派的な据え置き政策を支持~

桂畑 誠治

要旨
  • 7月の小売売上高は前月比▲0.6%と、市場予想に反して減少。大型イベント効果の剥落や夏の大型セールの前倒しに伴う反動減、およびトランプ政権の政策不透明感(関税・移民政策等)による消費者マインドの低下が影響した。
  • ただし、今回の小売売上の減少は一時的な落ち込みにとどまる。株高による資産効果や年初からの税還付効果、そして安定した雇用・給与環境が消費を下支えしており、拡大トレンド自体が崩れたわけではない。
  • 今後も、給与所得と雇用の安定を背景に個人消費は緩やかな拡大を続けよう。こうした底堅い消費トレンドは、FRBによるタカ派的な政策金利据え置きスタンスを支持する公算が大きい。
目次

図表
図表

1.小売売上高は市場予想に反して減少

2026年7月の小売・飲食サービス売上高は、前月比▲0.6%(前月改定値:+0.2%)と市場予想中央値(ブルームバーグ集計:同+0.1%)に反して失速した。過去2カ月(5、6月分)の数値も合計で0.1%下方修正されている。自動車や無店舗販売の減少が全体を押し下げた。一方、前年同月比は+5.0%(前月:+6.8%)と伸びは鈍化したものの、引き続き堅調な拡大を維持している。

価格変動の大きいガソリンを除くベースでは前月比▲0.6%(前月:+0.8%)と失速した。また、自動車を除く小売・飲食サービス売上高は、前月比▲0.3%(前月:▲0.2%)と市場予想中央値(同+0.2%)に反して続落となった(過去5、6月分は合計で0.1%下方修正)。さらに、自動車・ガソリンを除く小売・飲食サービス売上高は、同▲0.2%(前月:+0.4%)と市場予想中央値(同+0.3%)に反して下落した(過去5、6月分は合計で0.1%下方修正)。


コントロール・グループ売上高(自動車ディーラー・ガソリンスタンド・建材資材店・飲食店を除く小売・飲食サービス売上高で、GDPの個人消費算出に使用される)は、前月比▲0.4%(前月:同+0.4%)と市場予想中央値(同+0.3%)に反して縮小した。5、6月分が合計0.3%下方修正されたことは、4-6月期の個人消費改定値の下方修正要因となるほか、7-9月期の消費を押し下げる圧力となる。

図表
図表

2.小売売上の基調はイベント剥落と反動で勢いは鈍化

小売売上高の基調を判断するうえで重要なコア小売売上高(自動車・ガソリン・建材を除く小売・飲食サービス売上高)は、前月比▲0.3%(前月:+0.4%)と失速した。5、6月分の合計0.2%の下方修正もあり、3カ月移動平均・3カ月前対比年率では+6.5%(前月:+8.5%)へと減速している。7-9月期も同+1.0%へと急減速した(4-6月期は前期比年率+8.5%へ下方修正:速報値+9.1%)。

サッカー北米W杯に伴うインバウンド・関連消費の反動減に加え、例年7月に実施される大規模オンラインセールが6月に前倒しされた影響で、7月の小売が弱くなった。もっとも、地政学リスクに伴う不透明感や物価高が購買力の重石となる一方、安定した雇用環境・給与所得、年初からの税還付に伴う手元資金の余力、株高による資産効果、企業の積極的な販促が、消費の腰折れを防ぐ構図が維持されている。ただし、物価上昇分を考慮した実質ベースでの購買力の低下に留意が必要である。

図表
図表

図表
図表

3.業態別では自動車、無店舗が大幅減

7月の業態別の詳細をみると、主要13業態のうち7業態で前月比プラスとなり、増加業態の数は前月から横ばいとなった。増加した業態では、衣料品(前月の減少から大幅増)、家具、薬局がプラスに転じた。百貨店を含む一般小売や飲食店も拡大を続けた。

一方、減少・鈍化した業態をみると、自動車・同部品および無店舗小売の急減が全体を大幅に押し下げた。家電も減少したほか、ガソリンスタンドはガソリン価格下落や需要低下の影響でマイナスが続いた。建設資材、スポーツ用品・本・趣味用品、その他小売、食品・飲料も伸び悩んだ。

4.今後の実質個人消費は緩やかな拡大を維持も、FRBのタカ派的な据え置きスタンスを支持

7-9月期の実質個人消費は、トランプ政権の関税・移民政策をめぐる先行き不透明感が消費者マインドの持続的な重石となるなか、イベント効果の剥落やセール前倒しの反動によって減速するものの、給与所得の拡大や株高による資産残高の増加等が引き続き支えとなり、全体としては巡航速度(緩やかな拡大)へ回帰すると予想される。ただし、資産効果を享受する高所得世帯が消費を牽引する一方、物価高による実質的な購買力の目減りや高金利の影響を受けやすい低所得層を中心とした節約志向は強まっており、消費の二極化が継続しよう。

総じて、こうした個人消費の巡航速度での拡大と労働市場の安定が維持されるなかで物価が高止まりする場合、FRBは2%の物価目標達成に向け、タカ派的な政策金利の据え置きの長期化、あるいは状況によって利上げを選択肢として残さざるを得ないと考えられる。

図表
図表

図表
図表

図表
図表

図表
図表

図表
図表

図表
図表

桂畑 誠治


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ