武器になる経済指標 武器になる経済指標

日米金融政策 日銀と「骨太ショック」

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月72,000円程度で推移するだろう

  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう

  • 日銀は政策金利を26年12月に1.25%とした後、28年央までに2.0%とするだろう。

  • FEDはFF金利を、年内は3.75%で据え置くだろう。

  • 今週予定されているFOMCと日銀の金融政策決定会合を控えて、それぞれの論点を整理する。

  • まずは7月30日午前3時に結果が発表されるFOMCについては、FF金利(誘導目標レンジ上限)は3.75%で据え置きが予想される。7月24日時点ではイラン情勢の不透明感から原油価格が高止まりしていたことなどを背景に、38%の確率で利上げが織り込まれていたが、25日以降、米国が空爆を一時停止し、イランも「米側が停止を続ける限り攻撃を止める」と表明したこともあって、WTI原油価格が80ドル台半ばへと回帰した。これを受けてインフレに対する警戒感が幾分和らぎ、それに応じて金融市場における利上げ織り込み度合いも低下した。ウォーシュ議長はインフレに対する警戒感を滲ませつつも、6月CPIで示された足もとの物価上昇率の落着き、労働市場に過熱感がみられないことを根拠に政策金利の据え置きを決定するだろう。

  • ウォーシュ体制のFOMCでは、情報発信が減少するとの見方が多い。7月FOMC後の記者会見も、景気や物価認識はもちろん、将来の政策金利について多くを語らない姿勢が維持される見込みである。総じて、ヒントに乏しいイベントになると予想される。なお、情報発信の見直しの一環として、ドットチャートが廃止されると取り沙汰されている。この点については、金利形成における羅針盤が失われるとの悲観的な見方もあるが、コロナ期以降、市場参加者がドットチャートに依存する度合いは明らかに低下していることから、これが廃止されても金利が不安定化する可能性は低いだろう。事実、2019年頃まではドットチャートで示される中立金利が30年債利回りの決定に一定の影響を与えていたようにみえたが、2022年以降の金利上昇局面ではほとんど関係がみられなくなっている。

図表
図表

  • 次に7月31日の日銀金融政策決定会合については、政策金利の据え置きが極めて高い確度で予想される。円安進行、原油価格の再上昇などインフレ加速要因があるとはいえ、2会合連続の利上げは考えにくい。展望レポートで示される経済・物価見通しは、事前の報道に基づくと、2026年度のGDP成長率が上方修正される一方、物価は小幅に下方修正される。もっとも、そうした見通しの変化が「半年に一度の利上げ」に変更を迫ることには至らないと判断される。

  • 注目はむしろ8月10日に公表予定の「主な意見」における政府の見解であろう。6月の金融政策決定会合における「主な意見」(6月24日公表)では以下のような内閣府の出席者の声が記載され、そこに日銀に対する圧力を感じ取った市場関係者は少なくなかった。

「今回の利上げにつき説明責任を果たすとともに、過度な景気変動が生じた場合には主体的かつ適切な対応が重要である。今後の成長型経済への変化が重要であり、マクロの需給動向と物価の関係の慎重な確認が必要である」

「高市内閣が進める危機管理投資・成長投資等の取組につき理解の上で適切な政策運営を期待する」

筆者の認識が正しければ、「骨太ショック」の素地を作ったのは、この「主な意見」で明らかになった政府の姿勢である。骨太の方針は最終版で「安定的な物価上昇」の実現が強調されたほか、脚注に「金融政策の具体的な手法については日本銀行に委ねられる」と加わり、日銀の独立性を少しでも脅かすような表現は修正された。それもあって、ひとまず長期金利上昇には歯止めがかかった。ただし、7月会合における政府の見解が再び「圧」を感じさせるような内容となれば、長期金利が不安定化する可能性がある。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。