武器になる経済指標 武器になる経済指標

理想的な米雇用統計 それでも素直になれない株式市場

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月72,000円程度で推移するだろう

  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう

  • 日銀は政策金利を9月に1.25%とした後、27年末までに2.25%とするだろう

  • FEDはFF金利を、年内は3.75%で据え置くだろう

  • 8月米雇用統計は市場予想を大幅に上回る堅調な結果であった。株式はGood news is bad newsの文脈でやや軟調な反応となったものの、雇用統計の内容は米国経済に対する安心感を高めるものであり、好感すべき結果であったと判断している。 FF金利先物が織り込む9月FOMCの利上げ確率は62%と前日から11%pt上昇。年内の利上げ織り込み回数は1.3回から1.4回へと高まった。

  • 数値を整理すると、雇用者数は前月比+16.2万人と市場予想(+5~6万人程度)を大幅に上回った。同時に過去2ヶ月分の数値も合計5.5万人上方修正され、雇用者数の3ヶ月平均値は+7.1万人へと持ち直した。7月雇用統計では雇用情勢の急速な悪化が意識されたが、その懸念は相当程度後退した。民間部門の雇用者数も8月は同+12.7万人、3ヶ月平均では同+7.5万人と伸びた。

図表
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  • 業種別にみても改善の裾野は比較的広い。レジャー・ホスピタリティが前月比+6.2万人と7月の減少から急反発したほか、教育・ヘルスケアが同+2.9万人、建設が同+2.2万人、製造業が同+1.6万人となった。政府部門も同+3.5万人となり、7月の同▲5.0万人から反発した。なかでも地方政府の教育部門が同+4.2万人増加し、前月の減少を概ね取り戻した。一方、情報は同▲2.3万人、金融は同▲1.1万人と減少した。

  • 失業率は4.1%で前月から横ばいであった。もっとも、労働参加率が61.4%から61.6%へ上昇したことを勘案すれば、労働市場の厚みは増している。労働力人口は前月から68.3万人増加した。労働供給量の増加を吸収しつつ、失業率が4.1%で安定したことは、労働需要が底堅いことを意味する。またU6失業率は7.7%へと0.2%pt低下したことも好感される。U6失業率とは、通常の失業者に加えてフルタイム職が見つからず、やむなくパートタイム勤務に従事している人などを失業者とみなして算出する、より広義の失業率である。8月は、経済的理由によるパートタイム労働者が41.4万人減少した。

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  • 次に平均時給に目を向けると前月比+0.3%、前年比+3.1%であった。前年比伸び率は7月の+3.2%から一段と鈍化し、賃金上昇圧力が落ち着いていることを印象付けた。瞬間風速を示す3ヶ月前比年率は+2.8%、その直近3ヶ月平均も+2.7%に留まり、この尺度でみても賃金インフレの兆候に乏しい。ジャクソンホール講演でウォーシュ議長が「賃金指標は必ずしもインフレの基調を説明してこなかった」としたことに留意する必要があるとはいえ、労働市場由来のインフレ圧力が強まっていく状況にはない。なお、この間、平均労働時間は34.3時間から34.4時間へ増加した。名目総賃金(就業者数×時給×労働時間)は前月比+0.7%、前年比では+4.3%となり、過去数ヶ月の減速を帳消しにした。

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  • 以上、8月雇用統計は、9月FOMCの利上げ確率を高めたことによって株式市場で素直に好感されなかったものの、本来的には米国経済の成長期待、すなわち企業業績の拡大期待を強めるものであり、株価上昇要因と理解される。雇用者数が堅調に伸びるなかで、賃金上昇圧力が限定的であることは理想に近い。

藤代 宏一


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