武器になる経済指標 武器になる経済指標

5円を超える円高の背景にあるもの

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月72,000円程度で推移するだろう
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
  • 日銀は政策金利を9月に1.25%とした後、27年末までに2.25%とするだろう
  • FEDはFF金利を、年内は3.75%で据え置くだろう
  • ドル円は9月2日から4日にかけて5円を超える幅で円高方向に推移した。この間に材料視された発言等を以下で整理する。なお、報道などから判断すると、為替介入やレートチェックが実施された可能性は低い。数分で急落するのではなく、数時間にわたって断続的に円高が進行した値動きから判断しても、為替介入とは考えにくい。

  • 円高の背景として、その起点になったのはG20会合に絡めた話題でベッセント財務長官が複数回にわたり、日本の金融政策や財政政策に言及したことがあろう。ベッセント財務長官は8月30日に「円の大幅な過小評価に対処するための日本の断固とした市場介入および金融政策上の措置を強く支持する」、8月31日に「日本政府や日銀が、より円高につながるような措置をとるだろうと確信している」と2日連続で為替に言及した。また、ドル円が再度160円を超えていた9月1日時点では「再度の為替介入が必要なほど無秩序な円安ではない」としたうえで、「日銀は正しい行動を取るだろう」と発言した。ベッセント財務長官の発言もあって9月の金融政策決定会合における利上げ確率は9割程度まで上昇した。

  • この間、Fedからもドル安・米金利低下を促す材料が2つあった。一つは、ウィリアムズ・NY連銀総裁が「利回りを押し上げているのは、米国経済の力強さと、AIやデータセンター、テクノロジー全般への大型投資に支えられた堅調な経済見通しだ。したがって、私はこれを経済の強さを反映したものだと捉えている」として、そのうえでインフレ予想は「しっかりとアンカーされている(well anchored)」との見解を示したことである。長期金利は上昇しているものの、人々のインフレ予想が上放れていない以上、慌てて金融引き締めに動く必要はないとの含意があったように思える。同総裁はインフレ率が2%を上回っている主因は、⁠関税と原油高であるとの見解を示した。飽くまで一時的との見解であろう。事実、NY連銀やミシガン大学が調査する消費者の中長期的なインフレ予想は安定している。

  • もうひとつは、9月3日のウォーラー理事の発言で、これもまたドル安と米金利低下の材料となった。同理事は「エネルギー価格の上昇や関税は、現時点では持続的なインフレ圧力の重要な源泉とは見ていない」とし、いわゆる「二次的波及」が観察されていないことに触れ、「適切な政策スタンスに関する自分自身の判断は、8月のインフレ動向から得られる情報に大きく左右される」とした。金融政策とインフレを巡っては「来年まで待とうとは言わないが、多少なりとも改善が見られるかどうか、様子を見よう」として、早期の利上げにやや慎重な見解を示した。これを受けてFF金利先物が織り込む9月の利上げ確率は6割程度から5割程度へと低下した。

  • この間、日本側の要因としては9月2日の高田委員の講演で利上げペース加速がより強く意識されたことがあった。講演原稿では、従来通りのタカ派的な見解を示したうえで「日本は機動的な利上げが必要な新たな局面に入った」と示し、その後の質疑応答では「単にこれまでは0.25%というような状況で、24、25年ときましたけれども、そういうものだけではなくて、幅広い選択肢の中で、環境の変化に応じた、内外の環境変化に応じた対応をしていく必要があるのではないか」として、25bp刻み以外の選択肢を仄めすかような発言をした。現時点で50bp利上げの可能性はゼロに近いと判断されるが、高田委員の講演を経てOIS金利から逆算した日銀の利上げ確率は高まっており、9月会合は105%(0.263%相当)の利上げが織り込まれている。12月会合まで拡張すると、累積1.96回分(0.489%相当)となっており、これが為替市場で相応に意識されていると考えられる。

  • 筆者は9月FOMCで利上げが見送られると予想している。日銀については9月に利上げを決定した後、12月会合における追加利上げを予想する。

藤代 宏一


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