インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

ニュージーランドのインフレ確認も、RBNZにとっては「想定内」か

~インフレ率は加速もコアインフレ率は安定、RBNZはしばらく様子見姿勢が可能になるか~

西濵 徹

要旨
  • 年明け以降、RBAの断続利上げとRBNZの様子見姿勢を背景に豪ドルはNZドルに対して強含み、5月末に13年ぶりの高値をつけたが、足元では潮目が変化している。RBAは高金利と物価高の副作用を懸念し、6月会合で4会合ぶりに据え置き、市場では利下げ転換観測が強まっている。一方RBNZは7月会合で約3年ぶりの利上げに転じ、先行きも慎重に追加利上げを進める姿勢を示した。この金融政策の方向性の変化が、豪ドル/NZドル相場変化の背景にある。
  • 4-6月期インフレ率は前年比+4.1%と加速し、4四半期連続でRBNZ目標レンジ(2〜3%)を上回った。ただしこれは主にエネルギー価格上昇によるもので、食料・エネルギーを除くコアインフレ率は+2.5%とやや鈍化し目標レンジ内にとどまる。貿易財・非貿易財ともに価格転嫁の広がりは限定的で、サービス価格も鈍化しており、賃金上昇圧力も高まりにくい状況にある。このためRBNZが利上げペースを加速させる材料には乏しい。
  • 対米ドルでは、イラン情勢の再エスカレーションによる原油高でFRBの利上げ観測が強まりやすく、かつRBNZも利上げを急がない見通しであることから、上値の重い展開が予想される。一方、対円では日本の政策要因や日銀の利上げハードルの高さから円安が意識されやすく、NZドルは堅調に推移すると見込まれる。
目次

【「豪ドル>NZドル」が続いたオセアニア通貨は足元で変調】

年明け以降のオセアニア通貨を巡っては、オージー(豪ドル)がキウィ(NZドル)に対して強含みする展開が続いてきた。その結果、豪ドル/NZドル相場は5月末に一時13年ぶりの高値を記録した(図1)。背景には、RBA(オーストラリア準備銀行)とRBNZ(ニュージーランド準備銀行)の金融政策の違いがある。RBAは2月に2年3ヵ月ぶりの利上げに踏み切り、3月、5月と3会合連続の利上げを実施するなど、金融引き締めの動きを強めてきた。一方、RBNZは2月会合で当面様子見姿勢を維持し、ハト派姿勢に傾く考えを示した。その後もRBNZは4月会合、5月会合と連続で政策金利を据え置いたため、豪ドルはNZドルに対して強含む展開となった。

図表
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しかし、RBAとRBNZの政策スタンスが「逆転」したことで、そうした流れに変化の兆しが出ている。イラン情勢の悪化を受けた原油などエネルギー資源価格の上昇を背景に世界的にインフレ圧力が強まるなか、原油備蓄が乏しいオーストラリア、ニュージーランド両国においてもエネルギーを中心とするインフレが顕在化している。こうしたなか、オーストラリアではRBAによる断続的な利上げ実施を受けて高金利と物価高の共存状態が長期化、その副作用が懸念される状況のなかで、RBAは6月会合で4会合ぶりに政策金利を据え置いている。RBAは追加利上げの可能性を排除しない考えを示しているものの、金融市場では、一転してRBAが利下げに転じるとの見方が強まっている。一方で、RBNZは7月の定例会合で約3年ぶりの利上げに舵を切るとともに、先行きも追加利上げを慎重に進める姿勢をみせた。このように金融政策の方向性が「RBNZ>RBA」へと転じたことが、足元の豪ドル/NZドル相場の変化につながっている。

【4-6月インフレ率は前年比+4.1%に加速も、コアインフレ率は落ち着いた推移】

NZドル相場が強含んでいる背景には、景気に持ち直しの動きが確認されていることも影響している。イラン情勢の悪化を受けた原油高を背景とするエネルギー価格上昇への懸念の高まりも利上げ観測を後押ししてきた。こうしたなか、4-6月のインフレ率は前年同期比+4.1%と前期(同+3.1%)から加速して2023年10-12月以来の高い伸びとなり、4四半期連続でRBNZのインフレ目標(2~3%)の上限を上回った(図2)。これはRBNZが7月会合時点で示した見通し(前年比+3.9%)を上回ったため、一見すればRBNZによる追加利上げを後押しすると判断される。

図表
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とはいえ、4-6月の物価上昇は、ほぼエネルギー価格の上昇によるものといえる。食料品とエネルギーを除いた4-6月のコアインフレ率は前年同期比+2.5%と前期(同+2.6%)からわずかに伸びが鈍化してRBNZの目標レンジ内にとどまり、エネルギー以外の物価は落ち着いた推移が続いている。エネルギーを除いた貿易財物価の上昇ペースはわずかなものにとどまるとともに、非貿易財の物価上昇ペースは鈍化しており、価格転嫁の動きが広がっていない様子がうかがえる。雇用の回復ペースが緩やかなものにとどまり、賃金上昇圧力が高まりにくいなかで、サービス物価の上昇ペースも鈍化していることも、その背景にある。このため、前述の通りRBNZは7月会合で先行きも追加利上げを慎重に進める考えを示したが、利上げペースを加速させる材料とはならないと判断される。

なお、RBNZは5月会合時点では、4-6月のインフレ率が前年比+4.3%に加速し、その後も高止まりするとの見通しを示していた。その後は原油高の動きが一服したことを受けて、7月会合でインフレ見通しを下方修正した経緯がある。

【NZドルは日本円に対して強含みしやすい地合いが続くか】

金融市場においては、RBNZが利上げを加速させるとの見方が強まり、これを反映してNZドルは対米ドルで持ち直す動きをみせてきた(図3)。足元ではイラン情勢が再びエスカレートしており、落ち着きを取り戻した原油価格は上昇に転じるなど、世界的なインフレを招く懸念が高まっている。このため、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ観測を背景に米ドル高圧力が高まりやすい状況にある。さらに、RBNZは追加利上げを急がない可能性が高まっていることを勘案すれば、NZドルの対米ドル相場は当面上値の重い動きをみせると見込まれる。一方、日本円に対しては、高市政権による「骨太の方針」に加え、日銀にとって追加利上げのハードルが高いことも重なり円安が意識されやすく、NZドルは対円で堅調な動きをみせる展開が続くであろう。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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