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財政改革検討本部提言(2026年6月25日)解説

〜強い経済と財政の持続可能性を両立させる『責任ある積極財政』〜

永濱 利廣

要旨
  • 自民党の財政改革検討本部が、高市政権の「サナエノミクス(責任ある積極財政)」を具体化し、「骨太方針2026」への反映を目指す提言をまとめた。

  • 長期デフレから「成長型経済」への移行に伴い、債務残高対GDP比の低下やPBの着実な改善がみられるとし、地政学リスクを注視しつつ、「強い経済」と「財政の持続可能性」の両立による経済の好循環を目指すべきとしている。

  • 提言では、従来のデフレ型財政からの脱却に向け「投資の促進」「予算編成の刷新」「財政運営の転換」を求めている。

  • 本提言は、2026年4月の経済財政諮問会議で民間議員が提示した「予算編成の5原則」と内容・方向性が完全に一致しており、5つの核心である「中核目標の転換」「名目規模拡大への対応」「新たな投資枠の別枠管理」「補正依存からの脱却」「市場の信認確保」の全てで足並みが揃っている。

  • 諮問会議による論理補強と、財政改革検討本部による政治的提言が緊密に連携しており、両者の議論は「骨太方針2026」の策定に向けた一枚岩のポリシーパッケージとなっている。

目次

1.はじめに

自由民主党政務調査会の財政改革検討本部が「財政改革検討本部提言〜強い経済と財政の持続可能性を両立させる『責任ある積極財政』〜」をまとめた。

そこで本稿では、「骨太方針2026」への反映を目指して策定された本提言の主な内容を、項目ごとに解説するとともに、経済財政諮問会議での議論との比較を行う。

2.基本的な考え方

まず提言では、経済の転換点として、長引くデフレとコストカット型経済から、賃上げ率が2年連続で5%を上回るなど、新たな「成長型経済」への移行段階を迎えているとしている。こうした中で、財政状況の改善も指摘している。具体的には「責任ある積極財政」の推進により、債務残高対GDP比は低下傾向にあり、プライマリーバランス(PB)も2001年度以降で最も改善するなど、財政は着実に改善しているとしている。そして、高市内閣の方針を踏襲し、中東情勢の緊迫化などのリスクを注視しつつ、「強い経済」と「財政の持続可能性」の両立による経済の好循環を目指すとしている。

3.強い経済の構築に向けた投資の促進

こうした中で、強い経済の構築に向けた投資の促進として3点提言している。まずは「補正予算依存」からの脱却である。具体的には、予算の予見可能性を高めるため、補正予算は緊要性の高いものに限定し、恒常的な施策は原則として当初予算で措置する形へ根本から改めるとしている。

2点目が「新たな投資枠」の創設である。こちらは危機管理や成長投資のために、通常の歳出とは別枠の投資枠を創設するとしている。そして3点目として「つなぎ国債」の活用である。こちらはGX経済移行債やAI・半導体産業への公的支援と同様に、償還財源の裏付けがある「つなぎ国債」を発行して先行投資を可能にするとしている。なお、この経費は債務残高対GDP比やPB等の指標の計算から除くべきとも提言している。

4. 経済の成長力強化にふさわしい予算編成

こうしたことを踏まえ、予算編成面では主に2点提言している。まずは、デフレ型予算からの脱却である。こちらは、従来の「一律抑制型の上限」に基づく予算編成を改め、物価・賃金の上昇や名目経済規模の拡大を的確に反映した予算へと見直すべきとしている。

そして2点目が、基金事業のルール見直しである。こちらは、成果管理を徹底することを前提に、原則3年以内とする現行ルールの不適用も含め、柔軟で効率的な資金管理ができるよう見直すべきとしている。

5. マーケットの信認を確保するための財政運営

一方、市場の信認の側面でも2点提言している。まずは、柔軟なPB目標の運用である。こちらは、財政運営の中核を「債務残高対GDP比の安定的な低下」とし、単年度のPB黒字化時期を機械的に追い求めるのではなく、経済環境や状況に応じた柔軟な対応を容認すべきとしている。そして2点目が、多角的な財政指標の検証である。こちらは、市場の信認を確保するため、単一の指標に依存せず、名目・実質GDP成長率、長期金利、部門別収支、PBなど多角的な指標を用いて分析・検証を行うべきとしている。また、第三者レビューや独立的な検証機能の在り方も検討すべきとしている。

そして最後に、「責任ある積極財政」のもとで強い経済と財政の持続可能性を両立させることが、今を生きる国民と未来の国民への責任であり、未来に自信を持てる国を創り上げていくと結んでいる。

6.経済財政諮問会議での議論との比較

以上の内容を、現在の高市政権下における経済財政諮問会議内での議論と比較した場合、内容や方向性の相違点はほぼ皆無であり、完全に足並みが揃っていると言える。

この自民党・財政改革検討本部の提言と、経済財政諮問会議内での議論が「ほぼ同一のパッケージ」となっている主なポイントは以下の通りである。

一致している5つの核心(予算編成の5原則)

2026年4月の経済財政諮問会議で民間議員から提案された「予算編成の在り方の抜本的見直し(5つの原則)」は、党提言の構成と完全に一致している。

1.中核目標の転換:単年度PB管理から「債務残高対GDP比の安定的な低下」へのシフト。

2.名目規模拡大への対応:インフレ(物価・賃金上昇)を反映し、経済成長にふさわしい規模への見直し。

3.「新たな投資枠」の創設:危機管理や成長投資を別枠管理とし、国債(つなぎ国債等)を財政規律のカウントから除く特例扱いとする点。

4.補正依存からの脱却:緊急性の高いものに限定し、恒常的施策は当初予算化する。

5.市場の信認確保と対話:SDSA(確率的債務持続可能性分析)の活用や独立的な第三者レビューの検討。

この背景には、高市政権が掲げる「サナエノミクス(責任ある積極財政)」の具体化に向けて、官邸(経済財政諮問会議)と与党(自民党・財政改革検討本部)が強固に連携し、一体となって「骨太方針2026」のベースを構築しているという実態がある。

民間議員側がマクロ経済学的な論理補強(インフレ局面における金利と成長率の関係など)を行い、党側がそれを政治的な提言(案)として「骨太方針」へ反映させるよう政府に迫る、という極めて緊密な連携構造になっているため、両者のペーパーに齟齬が生じないのは必然と言える。

現在進行中の政策議論においては、「両者は完全に同じ方向を向いた、一枚岩のポリシーパッケージである」というのが正確な見方といえよう。


<参考文献>自由民主党政務調査会「財政改革検討本部提言」(2026年6月25日)

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

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