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2026.07.27
日本経済
経済効果
経済理論
資産形成・資産運用
高市政権
経済財政諮問会議(2026年7月21日)解説
〜日本成長戦略(案)と経済財政運営と改革の基本方針 2026(案)〜
永濱 利廣
- 要旨
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過去の投資不足・デフレ思考から脱却し、令和9年度(2027年度)を初年度として2040年度までに「名目GDP 1,100兆円規模」「国内民間設備投資額 250兆円」を目指す。シーリングを設けない『「強く豊かな日本」投資枠』の創設や特別会計の活用により財源を確保しつつ、補正予算依存からの脱却と国・地方の債務残高対GDP比の安定的低下を図る。
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17戦略分野(AI・半導体、GX、防衛、先端医療等)の62技術を対象に、時間軸に沿った3フェーズ(①商用化・量産化、②実証、③研究開発)でポートフォリオ管理を行い支援する。
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全国への投資波及に向け、①新技術立国、②スタートアップ(10万社目標)、③金融の活用、④人材育成(理系等の大学定員比率50%)、⑤労働市場改革、⑥家事負担軽減、⑦賃上げ(実質賃金年1%上昇目標)、⑧サイバーセキュリティの各施策と目標を設定する。
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成長戦略の効果を全国に広げるため、「戦略産業クラスター」「地域産業クラスター」「地場産業成長」の3つの計画・プランを推進し、交付金拡充や人材育成枠を創設する。
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筆者は、過去のクールジャパン機構の累積損失事例を教訓に、明確な規律や出口戦略なき資金供給を警戒すべきと提言。欧米(米CHIPS法、英産業戦略諮問会議、仏「フランス2030」)のような厳格なKPI管理・返還条項・進捗管理を取り入れ、「5W1Hに基づくPDCA」と「ポートフォリオ管理」を徹底して状況に応じた予算組み替えを行うことで、「責任ある積極財政」を担保すべきであると主張した。
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- 目次
1. はじめに
2026年7月21日に開催された経済財政諮問会議では、日本成長戦略(案)と経済財政運営と改革の基本方針 2026(案)が公表され、議論が繰り広げられた。
そこで本稿では、会議資料を基に、諮問会議で展開された内容と筆者の意見を紹介する。
2. 日本成長戦略の全体像と「責任ある積極財政」
過去の「投資不足」やデフレ思考から脱却し、供給力強化と経済規模の拡大、そして税収の自然増を目指す「責任ある積極財政」へと転換する。令和9年度(2027年度)をその初年度と位置付け、2040年度までに「名目GDP 1,100兆円に迫る規模」「国内民間設備投資額 250兆円」 の実現を目指す。
まず、『「強く豊かな日本」投資枠』の創設では、従来のシーリング(一律抑制)を設けず、複数年度の計画に基づき必要な財源を適切に確保する仕組みを導入する。そして、経済安全保障上、特に重要な分野等は特別会計で別枠管理し、つなぎ国債等も活用して十分な規模を担保する。
また、財政持続可能性との両立では、国・地方の総債務残高対GDP比の安定的低下を重視しつつ、補正予算依存を脱却して恒常施策は当初予算で措置する。
3. 戦略17分野と官民投資の推進
17の戦略分野において62の「主要な製品・技術等」を特定し、2040年度までに累計370兆円超の官民投資を想定している。
そして、時間軸を意識したポートフォリオ管理として、持続的な成長に向け、62の製品・技術を以下の3つのフェーズに分類して支援する。①商用化・量産化段階(足元の収益源 / 37項目)として、半導体、バーティカルAI、ゲーム、バイオ医薬品、データセンター等。②実証段階(次の稼ぎ頭 / 20項目)として、フィジカルAI、自動運転技術、量子コンピューティング、水素、洋上風力等。③研究開発段階(将来の成長の芽 / 5項目)として、次世代ワイヤレス、フュージョンエネルギー、量子通信・ネットワーク等。
なお、主要な17の戦略分野としては、AI・半導体 / デジタル・サイバーセキュリティ / 情報通信 / 量子 / 防衛産業 / 航空・宇宙 / 海洋 / 造船 / マテリアル / 合成生物学・バイオ / 創薬・先端医療 / 資源・エネルギー安全保障・GX / フュージョンエネルギー / 防災・国土強靱化 / 港湾ロジスティクス / フードテック / コンテンツ、が掲げられた。
4. 国内投資を全国へ広げる「8つの分野横断的課題」
国内投資の基盤を固め、全国へ波及させるために設定された課題と主な目標は以下の通り。

5. 「地域未来戦略」との連携(産業クラスターの形成)
成長戦略の投資効果を全国へ届けるため、地域における3つの計画・プランを後押しする。1つ目が 「戦略産業クラスター計画」であり、17分野に関連する大規模投資を起点とし、インフラ(道路・港湾等)や拠点整備を国主導・特別枠で重点推進する。二つ目が「地域産業クラスター計画」であり、都道府県が主導するサプライチェーン企業の投資を促進する。そして三つ目が「地場産業成長プラン」であり、市町村が主導する地域産業の育成を目指す。
なお、共通支援手法として、「地域未来交付金」の拡充や地方財政措置、実業系教育機関(高専・専門高校等)を活用した産学官での人材育成枠を創設する。
6. 筆者提言
以上を踏まえ、本会議において筆者は、日本成長戦略に関して「過去の教訓と制度運用の徹底」「諸外国のグローバルスタンダード事例」「ポートフォリオ思考によるガバナンス」の観点から提言を行った。
まず、過去の教訓と制度運用の徹底の観点として、クールジャパン機構の業績不振(累積損失)のような事例を教訓にし、明確な規律や出口戦略のない資金供給が国家財政を損ねるリスクを防ぐ必要があり、高市政権においては、今回の骨太方針に明記された「5W1Hを念頭に置いたPDCA」と「戦略分野のポートフォリオ管理」を徹底して実行に移すべきであると主張した。
そして、諸外国のグローバルスタンダード事例として、アメリカ(CHIPS法によるマイルストーン設定と資金交付・返還条項の連動)、イギリス(産業戦略諮問会議によるエビデンス検証)、フランス(「フランス2030」での16のKPI管理)のように、厳格な進捗管理と規律の仕組みが諸外国では成果を上げていることを紹介した。
また、ポートフォリオ思考によるガバナンスの観点として、17分野・62技術に及ぶ先端投資において全てが成功するとは限らず、途中で成果が出にくい分野が生じること自体は問題ないとし、重要なのは、戦略分野全体を1つのポートフォリオとして捉え、厳格なPDCAを通じて状況変化に応じ効果的に予算を組み替えていくガバナンスであると主張した。そして、海外並みの規律・管理仕組みを早期に具体化し、「責任ある積極財政」を担保することが求められると提言した。
永濱 利廣
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

