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2026.08.05
日本経済
経済理論
資産形成・資産運用
高市政権
経済財政諮問会議(2026年7月30日)解説
〜内閣府年央試算、中長期の経済財政に関する試算、予算の全体像、令和9年度予算の概算要求基準〜
永濱 利廣
- 要旨
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内閣府年央試算によれば、経済成長は賃上げや政策効果、内需回復により、実質GDP成長率は2026年度に0.9%程度、2027年度に1.1%程度へ拡大する見通し。物価・賃金・消費については、GDPギャップは需要超過へ移り、名目賃金上昇が物価上昇を上回る実質賃金プラスと個人消費の増加が続く。設備投資・輸出については、政府の投資促進策や世界経済の回復を背景に増勢・増加基調を維持。
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中長期の経済財政に関する試算によれば、成長見通しは成長戦略実現ケース①では潜在成長率が1%台後半へ上昇し、2040年度の名目GDPは1,100兆円規模に拡大。現状投影ケースでは0%台前半に低下し930兆円程度にとどまる。財政指標は、成長戦略実現ケース①では債務残高対GDP比が安定的に低下し、プライマリーバランスは2027年度に黒字化後拡大。現状投影ケースでは2030年代後半にPBが赤字へ転落。
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令和9年度予算の全体像と概算要求基準(案)によれば、マクロ経済財政運営は「責任ある積極財政」の下、財政運営目標の中核をPB目標から「債務残高対GDP比の安定的な低下」へ転換。予算編成改革と要求ルールは、上限のない『「強く豊かな日本」投資枠』の新設や補正予算依存からの脱却を推進。社会保障費は自然増の範囲で要求し、補正対応していた恒常的施策の当初予算化を図る。
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筆者提言として、目標転換と市場対話について債務残高対GDP比の低下はPB黒字化より厳格な目標であり、財政規律の緩みではない旨を市場に丁寧に説明すべきとした。また、予算の情報発信と比較基準面では、補正依存脱却に伴う誤解を防ぐため、前年度当初との単純比較ではなく「前々年度補正+前年度当初」や「名目GDP比」での情報発信が必要とした。そして、社会保障負担率の評価の面から、国民所得の構造上、実質的な負担軽減につながっていないにも関わらず数値低下が生じ得るため、「成長と分配の質」を含めた検証・管理が必要とした。
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- 目次
1.はじめに
2026年7月30日に開催された経済財政諮問会議では、内閣府年央試算、中長期の経済財政に関する試算、予算の全体像、令和9年度予算の概算要求基準について議論が繰り広げられた。そこで本稿では、会議資料を基に、諮問会議で展開された内容と筆者の意見を紹介する。
2. 令和8年度内閣府年央試算について
(1)経済成長の見通し
2026年度(令和8年度)は、原油価格上昇などの下押し要因があるものの、賃上げによる所得増加や政策効果に支えられ、実質GDP成長率は0.9%程度(名目GDP成長率は3.0%程度)となる見込み。2027年度(令和9年度)は、危機管理投資・成長投資の強化や内需の回復が続き、実質GDP成長率は1.1%程度(名目GDP成長率は3.9%程度)に高まる見通し。

(2)物価・賃金・需給バランス
GDPギャップは、2027年度にかけてプラス(需要超過)で推移する見込み。物価は、消費者物価上昇率(総合)は、2026年度に2.2%程度、2027年度に2.1%程度と試算。

賃金と消費は、労働需給の引き締まりを背景に名目賃金の上昇(両年度とも3.1%程度)が続き、物価上昇を上回る実質賃金プラスが維持され、個人消費も緩やかな増加が続く。

(3) 設備投資と輸出
設備投資は中東情勢等の影響を受けつつも、政府の投資促進策に支えられて増勢が継続。輸出も世界経済の回復に伴い増加基調となる見通し。

3. 中長期の経済財政に関する試算
2040年度までの長期的な経済・財政の姿を、成長戦略の効果等に応じて3つのケースで試算。なお、2027年度以降は追加財政支出として毎年度実質10兆円を機械的に想定。
(1)経済シナリオと成長見通し
成長戦略実現ケース①(イノベーションや資源配分効率化等の効果が十分に発現)では、潜在成長率は1%台後半へ上昇。2040年度の名目GDPは1,100兆円規模、国内民間設備投資は240兆円程度へ拡大。
成長戦略実現ケース②(官民投資効果中心)では、潜在成長率は1%台半ばで推移。2040年度の名目GDPは1,040兆円超となる。
現状投影ケース(追加財政の需要効果のみ)では、潜在成長率は0%台前半へ低下。2040年度の名目GDPは930兆円程度にとどまる。

(2)財政指標(債務残高対GDP比・PB)の動向
公債等残高対GDP比は、成長戦略実現ケース①では、高い成長率やPB黒字の効果が利払い費増(金利要因)を上回り、試算期間を通じて概ね安定的に低下。現状投影ケースでは2030年度頃から上昇に転じる。

プライマリーバランス(PB)は、2025年度に概ね均衡(▲0.2兆円・対GDP比▲0.0%)した後、成長戦略実現ケース①・②では2027年度に黒字化(+1.4兆円・対GDP比+0.2%)し、2030年代半ばまで黒字幅が拡大。現状投影ケースでは次第に黒字幅が縮小し、2030年代後半に赤字転落。

4. 令和9年度予算の全体像(案)民間議員提出資料
(1)マクロ経済財政運営の基本方針
「責任ある積極財政」に基づき、「強い経済」と「財政の持続可能性」の両立を目指す。
これまでのPB目標(骨太2001以来)から一歩進め、骨太方針2026に基づき「債務残高対GDP比の安定的な低下」を財政運営目標の中核に据える。PBは複数年で改善・管理する方針。
(2)予算編成改革のポイント
『「強く豊かな日本」投資枠』を創設し、「責任ある積極財政元年」にふさわしい予算編成を行う。
補正予算依存からの脱却、物価・賃金上昇の適切な反映、成長力強化と名目経済規模拡大に適合した当初予算編成への転換を図る。
社会保障改革(給付付き税額控除や窓口負担割合の見直し)、教育・研究への重点投資、公共事業評価の見直しなどの具体的諸課題を進める。
5.令和9年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針(案)
(1)「強く豊かな日本」投資枠の創設
通常歳出とは別に本投資枠を新設し、要求上限を設けない枠組み(事項要求も可)とする。
経済安全保障上の重要分野等は、複数年度で財源を確保した上で特別会計において別枠管理とすることを検討。
(2)各経費の要求ルール
社会保障費(年年・医療等)は、自然増(+3,900億円)の範囲で要求し、予算編成過程で物価・賃金動向や高齢化要因を加算。
防衛力整備計画対象経費は、防衛力整備計画に基づき要求。
裁量的経費(その他の経費)は、前年度当初予算と同額の範囲内で要求し、+20%までの要望枠を認める。
(3)運用・改革方針
補正予算で対応していた恒常的施策を当初予算化。
補助金・基金の自己点検結果を反映し、歳出の重点化・PDCAを徹底。
6.筆者提言
以上を踏まえ、本会議において筆者は「財政運営目標の転換と市場への理解促進」「予算編成の丁寧な発信と比較基準」「社会保障負担率(KPI)の評価・管理の在り方」の観点から提言を行った。
まず、財政運営目標の転換と市場への理解促進については、PBが昨年度概ね均衡したのは基調的な税収増の上振れによるもので一歩進んだ成果であり、本来の目的であった「債務残高対GDP比」の安定的低下を中核目標とすることは理にかなっていると指摘した。また、国債利回りが名目成長率を上回る局面を想定すると、PB黒字化よりも債務残高対GDP比を下げる方が厳しい目標であり、財政規律の緩みではないことを市場に理解してもらう必要があることも提言した。さらに、「財政健全化(fiscal consolidation)」という言葉が財政引締めや緊縮財政を意味して誤解を与えるため、外された旨を丁寧に説明すべきであるとも指摘した。
予算編成の丁寧な発信と比較基準については、補正予算依存からの脱却により当初予算が大きく変わるため、単純に前年度当初予算と比較するとミスリードになる。「前々年度補正+前年度当初」との比較や、金額だけでなく「名目GDP比」での比較を発信することが重要である。また、概算要求の比較では、特別会計も含めた基準で打ち出すべきであると指摘した。
社会保障負担率(KPI)の評価・管理の在り方について、分母の「国民所得」には企業所得や海外からの投資収益(第一次所得収支)も含まれるため、企業の賃金抑制や海外留保により分母が膨らむと、家計の負担感が減っていなくても見かけ上の負担率が低下してしまう構造的なゆがみがあると指摘した。そのため単体数値の達成のみを追うのではなく、国内投資還元や労働分配を含めた「成長と分配の質」を厳格に検証・管理することが不可欠であると提言した。
永濱 利廣
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

