デジタル国家ウクライナ デジタル国家ウクライナ

英首相の座を狙うバーナム氏が国政復帰

~近く労働党の党首選が開始されよう~

田中 理

要旨
  • 18日に行われた英下院補選では、次期首相就任を目指すバーナム・マンチェスター市長が勝利した。近くスターマー首相に対して、労働党の党首辞任を求める「党首チャレンジ」が開始されよう。秋にはバーナム氏が新首相に就任する可能性が高い。労働組合に近く、公共サービスを重視するバーナム氏が首相に就任すれば、財政拡張が意識されやすい。金融市場の不安定化を避けるため、バーナム氏は最近、財政運営を巡る発言を軌道修正しているが、スターマー政権時代の緊縮的な財政運営から何らかの変化があると考えるのが自然だ。財務相人事の行方とともに、次期政権がどの程度財政運営を修正するかに注目が集まる。

18日に行われたイングランド北部メーカーフィールド選挙区の下院補欠選挙は、中道左派の与党「労働党」に所属するマンチェスター市長のバーナム氏が54.8%の支持を集めて勝利した。政権奪取の機会を窺う右派ポピュリスト政党「リフォームUK」のケニヨン氏は34.5%で次点の支持を集めたが、リフォームUKからの離党者が新たに結党した新興右派ポピュリスト政党「リストア・ブリテン」のシェパード候補が6.8%の支持を集め、二大政党への批判票や保守票の一部が分散したため、バーナム氏の勝利につながった。バーナム氏は2024年の総選挙で当時の労働党の候補が獲得した得票率から9.6%上積みし、政権発足後にリフォームUKの躍進と労働党の支持低迷が進むなかにあって、リフォームUKに勝てる次期党首候補であることを改めてアピールする結果となった。

次期首相の最有力候補であるバーナム氏が国政に復帰したことで、労働党の次期党首選出手続きが近く始動する可能性がある。5月の統一地方選挙後にスターマー首相を批判して閣僚を辞任したストリーティング元保険相は、来週中にスターマー氏が自ら辞意を表明しない場合、労働党の党首選の開始につながる「党首チャレンジ」を開始する可能性を示唆している。国民の審判を得ない首相交代には批判がつきまとう。候補者間の政策論議をするために、夏場の選挙キャンペーンと投票で次期党首を選出し、秋の労働党大会で承認し、議会で首相選任投票を行う可能性が高い。秋にはスターマー首相が退陣し、バーナム首相が率いる新政権が誕生するだろう。

バーナム氏は党内で労働組合に近い「ソフトレイバー」に属し、労働党の変革を訴えている。マンチェスター市長としての成功経験に基づき、かつて民営化した水道やエネルギーなど、一部の公益企業に対する公的関与の拡大、公共サービスや公的住宅建設の拡大、そのための財源を確保する不動産関連の増税などを主張してきた。金融市場ではバーナム氏の首相就任時には財政拡張色が強まるとの警戒が根強い。金融市場の反応に配慮し、バーナム氏は財政関連の発言のトーンを修正し、市場の信頼を回復しようとしている。ただ、低迷する労働党の支持率を引き上げ、次の総選挙でのリフォームUKの政権奪取を阻止するためには、スターマー路線からの政策修正が必要となる。財政運営がどの程度変化するかを巡って、金融市場の疑心暗鬼が続くとみられ、党首選での同氏の公約や次期財務相人事などに注目が集まる。

以 上

田中 理


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ