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2026.07.21
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米国:中東緊迫の反動で6月鉱工業生産は下振れ
~単月減速もAI・自動車が押し上げ基調維持~
桂畑 誠治
- 目次
1.生産は拡大も市場予想を下回る
26年6月の米国鉱工業生産は、前月比+0.1%(前月+0.1%)と市場予想中央値同+0.2%を下回った。イランを中心とした中東情勢の緊迫化に伴い先行きへの不確実性は高いものの、足元の生産拡大のモメンタムは確実に強まっており、26年入り後の生産活動は総じて活発化していると評価できる。
部門別の動向をみると、それぞれ特有の構造要因が影響した。まず公益事業は、6月の気温上昇や5月の落ち込みの反動もあり、同+0.4%(同▲0.7%)とプラスに転じた。一方、鉱業部門は、前月比+0.4%と5月の同+1.1%からプラス幅を縮小した。これは新規の油田・ガス田を掘る掘削活動が同+0.3%と前月の高い伸び(同+5.0%)の反動で、鈍化したことが影響している。さらに、製造業部門は、前月に高い伸びを示した自動車部門が同+0.7%とプラスを維持したものの前月から減速したことや、ハイテクやハイテク以外の部門の伸び率低下などを受け、同0.0%(同+0.1%)と横ばいに鈍化し、市場予想中央値の同+0.1%を下回った。4月にかけて高い伸びとなった反動や、米国とイランの戦闘終結に向けた動きを受け駆け込み需要が弱まったとみられ、6月単月では生産活動が鈍化した。

2.6月単月で減速・減少した一部業種も含め、基調としては強い堅調さを維持
製造業全20業種のうち、6月に拡大したのは9業種と、5月の14業種から大幅に減少した。プラス成長となった業種では、石油・石炭製品(+2.1%)、アパレル・皮革(+1.9%)、自動車・同部品(+0.7%)、印刷・同サポート(+0.4%)、食品・飲料・たばこ(+0.1%)家具・同関連製品(+0.3%)一次金属(+0.2%)、コンピューター・電子(+0.1%)、プラスチック・ゴム(+0.1%)。一方で、その他製造業(▲1.6%)、木材製品(▲0.8%)、一般機械(▲0.7%)、非鉄(▲0.6%)、電気設備・機器・同部品(▲0.6%)、紙・パルプ(▲0.4%)、繊維(▲0.3%)、化学(▲0.2%)、その他耐久財(▲0.2%)、加工金属(▲0.2%)といった素材・消費財関連を中心に低下が目立ち、航空宇宙・その他輸送機器(▲0.2%)を含めた計11業種(前月6業種)は縮小を余儀なくされた。このように、6月単月ではAI・自動車等が強い一方で、個人消費の選別化や生活防衛意識による消費財や非耐久財が鈍化するなど製造業の二極化が示された。
もっとも、四半期(26年4-6月期)で製造業部門の詳細をみると、6月単月で減速・減少した一部業種も含め、底堅い自動車需要や強固なAI需要が強力な下支えとなり、基調としては堅調さを維持している。前期比年率で、販売需要の底堅い自動車・同部品(+16.8%)が高い伸びとなった。また、旺盛なハイテク需要を背景にコンピューター・電子(+11.9%)が高い伸び、データセンターや送電網の増設ニーズを受けて電気設備・機器・同部品(+7.9%)、一般機械(+3.1%)、非鉄(+5.4%)、加工金属(+2.1%)、一次金属(+4.1%)といった素材関連も総じて拡大した。政府の国防支出の拡大に支えられ航空宇宙・その他輸送機器(+9.7%)が堅調な拡大を示した。このほか、その他製造業(+12.7%)、木材製品(+13.8%)が高い伸びとなった。
3.鉱工業生産の回復トレンドは加速も、設備稼働率は依然として低水準
生産の基調を3ヵ月移動平均・3ヵ月前対比年率で確認すると、6月の鉱工業全体は公益のマイナス幅拡大にもかかわらず、製造業、鉱業の押し上げによって同+4.0%(前月+2.8%)へと加速しており、堅調さを保っている。鉱業は+7.5%(同+4.2%)へと加速した。また、製造業生産は+4.7%(同+4.9%)と鈍化したが高い伸びを維持した。このベースでは、自動車も同+16.8%(同+13.9%)と高い伸びを維持したほか、ハイテク関連が+9.7%(同+8.0%)と二桁の伸びを続けた時期よりも鈍化しているものの、増勢を維持し全体の底上げに寄与している。
一方、生産能力の拡大が続くなかで生産が小幅上昇したものの、6月の設備稼働率は鉱工業で76.1%(前月76.1%)と横ばいにとどまった。しかし、製造業は生産の鈍化・縮小によって75.7%(前月75.8%)と低下した。これらは依然として長期平均(1972~2025年平均)をそれぞれ3.3ポイント、2.5ポイント下回っており、足元の生産の勢いは強いものの、サプライチェーンにおける生産能力の余力は依然として大きいままである。サプライチェーンの供給制約やインフレ圧力が落ち着いており、経済の過熱感が抑えられていることを示唆している。市場ではインフレ再燃に伴う利上げが強く警戒されているものの、生産・稼働率の面からは直ちに需要超過による過熱を示唆するものではなく、金融引き締め加速への過度な懸念を和らげる材料といえる。
4.2026年通期の製造業生産の加速予想
26年通期の製造業生産の見通しについては、今後さらなる加速が予想される。足元の前年同月比の伸びは製造業全体で+1.1%(前月+1.5%)と鈍化したが、通期では前年比+1.5%(25年+0.8%、24年▲1.0%)に達する見込みである。これは、2025年に成立した「OBBBA (One Big Beautiful Bill Act) 」による各種減税や投資促進策の効果が本格化し、個人消費の底上げや企業の設備投資拡大を直接的に支えるためである。さらに、旺盛なAI需要の急拡大や、製造業の国内回帰、地政学リスクの長期化に伴う軍事装備品の需要増、そして歴史的に低い水準にある在庫を背景とした意図的な在庫補充活動などが、今後の米国製造業を強力に牽引していくものと期待される。





桂畑 誠治
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 桂畑 誠治
かつらはた せいじ
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経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済
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