株高不況 株高不況

日経平均株価6万円について 半導体で説明可能

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月61,000円程度で推移するだろう
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
  • 日銀は利上げを続け、政策金利は26年7月に1.0%、27年7月に1.5%超となろう
  • FEDはFF金利を26年9月に3.5%まで引き下げた後、様子見に転じるだろう
  • 5月7日に日経平均株価は急伸し、終値は62,834円を付けた。WTI原油価格は95ドル近傍と、2月末比で30ドル弱も高い水準にあるにもかかわらず、株価は天井を突き破る勢いで上昇している。この間の株高は、AI需要に裏打ちされた「半導体」に支えられていると言って差し支えない。株価指数において半導体という業種分類は存在しないため、TOPIX33業種の年初来リターンを眺めつつ、半導体の存在感を確認する。

図表
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  • 突出した年初来リターン(105%)を誇るのは「非鉄金属」である。一般的に非鉄金属と聞くと、アルミや銅に関連した製品を手掛ける伝統的かつ成熟した企業を思い浮かべる方が多いと思われる。事実、AI向け半導体が隆盛を極めるまでは、株式市場においても「イノベーションが期待しにくい素材系の銘柄群」という存在でバリュエーションは高くなかった。もっとも、AI関連銘柄の物色が広がって以降、このセクターの見方は大きく変わった。非鉄金属は、半導体とは縁遠いと思われがちであるが、このセクターにはデータセンター向けの電線で圧倒的な競争力を有する企業が含まれているほか、半導体製造に欠かせない高純度金属、銅箔、スパッタリングターゲットといった特殊な製品群で高シェアを誇る企業が複数含まれている。データセンターなどAI関連の実物投資が盛んになると強い恩恵が及ぶため、ゴールドラッシュにおける「つるはし商人」に例えられることが多い。なお自動車向けワイヤーハーネスや従来型の通信、送電用の電線事業はさほど伸長していない。

  • 2位はガラス・土石製品業の32%であった。こちらも半導体との関係が希薄にみえて、実は密接な企業が多く含まれる。製品群としてはガラス繊維(クロス)、セラミックなどがあり、それぞれ半導体製造において重要な役割を担う。ガラス繊維はプリント基板の材料として、セラミックは基盤の製造や装置内での固定などに用いられる。これら製品群を手掛ける企業はその領域においてグローバルニッチの地位を確立しているため、価格決定力が強く、株式市場で極めて高い評価を得ている。なお自動車や住居、オフィスなどの窓ガラスの出荷が著しく伸び、業績が拡大しているのではない。

  • 3位は機械の27%であった。2026年入り後、防衛関連の伸びに一服感がみられるのをよそに、半導体の切断・研磨を手掛ける企業が買われ、高パフォーマンスとなった。4位は電気機器の23%であった。こちらは主として前工程を手掛ける半導体製造装置企業の貢献が大きいほか、検査装置を手掛ける企業の株価上昇が著しい。その他ではNANDフラッシュメモリーやSSDを手掛ける企業や、コンデンサ、パッケージ基板といった電子部品を手掛ける企業の株価が好調であった。他方、ソフトウェア寄りの製造業やゲーム事業を手掛ける企業は、いわゆるSaaSの死の文脈が意識されるなか、株価は軟調に推移している。

  • 半導体関連でいえば、7位(18%)の化学も見逃せない。ここにはシリコンウェーハを手掛ける企業や半導体の化学品(ガス、封止材)で高シェアを有する企業が複数含まれる。セクター全体では、石油化学事業など汎用の化学品は依然として中国勢の価格競争に晒されており、収益環境は厳しいものがあるが、半導体関連の恩恵を受ける数社の株価上昇が効いた。

  • これら広義半導体銘柄の業績見通しは、原油高に襲われた3月以降も順調に拡大している。ここで日米主要株価指数の予想EPSに目を向けると、半導体関連銘柄を(TOPIX対比で)多く含む日経平均株価の強さが際立つ。予想EPSは垂直的な拡大基調にあり、6ヶ月前比年率では+50%もの伸長を記録している。日経平均株価に採用されている半導体関連銘柄のうち、ウェイト上位5社(指数全体の3割程度のウェイトを占める)の上方修正が効いており、それら銘柄の予想EPSは6ヶ月前比年率(単純平均)で+109%となっている。過去数週間の株価上昇を受けてPERはさすがに切り上がってきたが、ここまでの株価上昇は概ね「半導体関連銘柄の業績期待」で説明可能である。

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藤代 宏一


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