- 要旨
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- USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
- 日銀は利上げを続け、政策金利は26年7月に1.0%、27年7月に1.5%超となろう
- FEDはFF金利を26年9月に3.5%まで引き下げた後、様子見に転じるだろう
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5月5日に3月の米JOLTS統計が発表された。この指標はFedの金融政策を読むにあたって有益な情報を多く含んでおり、その重要性は雇用統計に匹敵すると筆者は理解している。結論を先取りすると、労働市場の底堅さとインフレ圧力の減衰を示唆する結果であり、利下げの可能性を高めたと判断される。年内の利下げ観測がほぼ完全に消失している現状を踏まえると、利下げ観測の復活は株式市場の燃料補給になり得る。
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3月の求人件数は前月比▲0.8%、687万件であった。2ヶ月連続で減少したものの、3ヶ月平均でみれば下げ止まっており、企業の採用意欲が粘り強いことが示された。Fedが注目している失業者数一人あたりの求人件数は0.95へと上昇し、こちらも下げ止まりの傾向が確認できた。ここから判断する限り、労働需給が一段と緩む状況には至っていない。この間、転職活動の活発度合いを示す自発的離職率は2.00へと上昇した。基調的に下げ止まったかどうかは微妙であるが、一方的な低下は回避されており、賃金上昇圧力は適度に残存していると考えられる。解雇率は2025年末頃に急低下した後、3月は1.18%まで上昇したものの、依然として低水準にある。こちらは低水準で推移する新規失業保険申請件数と整合的である。
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雇用者数の伸びが鈍いなかでも、労働需給が安定を維持していることは心強い。Fedの利下げを阻害するほどの強さではないが、失業率の低位安定が保たれれば、金融市場のボラティリティは抑制される。
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Fedの金融政策を巡っては、年内の利下げ織り込み回数が0回近傍まで低下し、2027年以降も据え置きとの予想が支配的になっている。年初の段階では年内2回の利下げが織り込まれ、3月FOMCで更新されたドットチャートでも年内1回の利下げ見込みとなっていたが、イラン情勢の悪化に伴う原油高を受けて、利下げ予想は急速に萎んだ。一部では2027年入り後の利上げ転換も意識されている。
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利下げ観測が盛り上がらない背景としては、ウォーシュ新議長の見解が6月FOMCまで判明しないという事情があるだろう。同氏がどれほど利下げに前向きであるかは判然としないが、4月に実施された公聴会においては、Fedが政策目標としているPCE(コア)デフレーターは関税の影響もあって実勢を反映していないとの見解を示し、そのうえでトリム(刈り込み)平均の物価指標が適しているとの見解を示していた。3月時点においてコアPCEデフレーターは前年比+3.20%であったのに対してダラス連銀が算出したトリム平均PCEデフレーターは前年比+2.36%、6ヵ月前比年率で+2.18%と大きく下方乖離している。新議長がこの点を重視するのであれば、再び利下げ観測が台頭してくるのではないか。

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また、NY連銀のウィリアムズ総裁は5月4日に「インフレが低下しているという事実を反映するため、いずれ金利を引き下げる必要がある」、「インフレは今年、これまでの予想よりも高く推移しており、そのため利下げの時期は先送りされると考えているが、基本的な見方自体は変わらない」、「パンデミックからの回復局面にあった2021年の世界経済が経験した深刻な供給不足や、サプライチェーンの混乱を想起させる。しかし当時とは異なり、労働市場がインフレ圧力を強めているわけではない」などと利下げに前向きな発言をしている。Fedの中枢メンバーであるウィリアムズ総裁がこのような姿勢を示しているにもかかわらず、FF金利先物の年内利下げ織り込み度合いが0回近傍にあることには違和感を禁じ得ない。
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一部には予想インフレ率の高止まりがFedの利下げを阻害するとの声もある。5月7日に発表されたNY連銀集計の4月の予想物価上昇率は1年先が3.64%(3月:3.42%)、3年先が3.15%(同3.08%)、5年先が3.01%(同3.05%)であった。1年先は原油価格(ガソリン価格)に引っ張られた格好である一方、3年先と5年先は安定していた。Fedは短期の予想物価上昇率を重く取り扱うことはないと考えられる。この間、債券市場の予想インフレ率(BEI)は10年が上昇傾向にあり、2023年以来の高水準となっている。原油高が当面の消費者物価を押し上げるとの見方が支配的になっていることが窺えるが、(5年後以降の予想物価上昇率を反映する)5年先5年BEIは原油高が発生する以前から形成されてきたレンジ内に収まっており、このことは予想物価上昇率がアンカーされた状態にあることを示す。原油高に起因する物価上昇が賃金インフレに伝播するといった二次的波及の芽は現時点で観察されていない。
- 4月FOMCではハマック・クリーブランド連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ローガン・ダラス連銀総裁が(金利据え置きには賛成票を投じるも)追加利下げを示唆する文言を巡って異を唱え、意見集約の難しさが話題となった。もっとも、議長を含む7名の理事とNY連銀総裁は利下げの道を閉ざすことに消極的な姿勢を維持している。発言力で加重平均したFOMC参加者の総意は依然として利下げ方向にあるように思える。
藤代 宏一
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