米国: 供給不安が押し上げる見掛けの加速(26年4月PMI)

~中東情勢緊迫化に伴うパニック買い、供給網リスク、インフレ圧力~

桂畑 誠治

要旨
  • 26年4月のS&Pグローバル米国総合購買担当者指数(PMI)速報値は52.0と、前月の50.3から1.7ポイント上昇し、市場予想中央値の50.6を大幅に上回った。部門別にみると、製造業PMIは54.0 (前月52.3)と1.7ポイント上昇し、景況判断(拡大縮小)の分岐点である50を9ヵ月連続で上回った。サービス業PMIは51.3と前月の49.8から1.5ポイント上昇し、拡大圏を回復した。製造業とサービス業の活動がともに活発化し、全体の拡大ペースが加速している。 トランプ政権による関税政策やイランへの軍事行動といった政策不確実性が高まる中においても、総合PMIは拡大を示す水準を維持しており、調査対象企業の活動や民間需要の底堅さが改めて示された形となった。ただし、発表元は「生産と受注の拡大は、安全在庫の積み増しに一部起因している可能性がある」と一時的な需要押し上げの可能性を指摘している。調査回答者からは、価格上昇や供給不足を見越したパニック的・緊急的な買いへの言及があり、パンデミック時に見られた状況を想起させるとの見解が示されている。これはサプライチェーンの混乱リスクが再び高まっていることを示唆している。
  • 主要項目の動向では、総合新規受注は、50.9(前月51.0)と微減し、需要の拡大ペース鈍化を示した。内訳をみると、製造業が54.8(同52.3)と上昇した一方、サービス業は50.2(同50.8)へ低下した。 総合雇用は50.2(同49.7)とわずかに拡大圏に浮上したが、全体としては雇用の伸び悩みを示唆している。製造業が49.4(同50.1)と縮小圏まで低下した一方、サービス業が50.3(同49.7)と拡大圏を回復した。
  • インフレ関連では、総合投入価格が62.6(前月60.9)、総合産出価格は59.9(同58.1)とともに上昇した。関税や賃金上昇に加えて、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖がエネルギー・資源価格を押し上げており、企業がコスト増を価格転嫁している様子が顕著となっている。製造業では、産出価格が61.9(同59.6)と上昇したが、投入価格が69.1(同65.1)とそれを上回るペースで上昇。財価格の押し上げが続く中でも、製造業のマージンは若干の悪化が示された。サービス業でも投入価格指数が61.5(同60.2)、産出価格指数が59.6(同57.9)と上昇しており、依然として強いインフレ圧力が継続している。
  • 詳細な構成要素をみると、製造業では雇用が49.4(前月50.1)へ低下したものの、生産が55.7(同53.2)、新規受注が54.8(同52.3)、在庫が50.7(同50.0)とそれぞれ上昇した。寄与度では雇用が▲0.15ポイントの押し下げとなった一方、新規受注が+0.76ポイント、生産が+0.63ポイント、入荷遅延が+0.32ポイント、在庫が+0.08ポイントの押し上げ寄与となった。 サービス業では、活動指数が51.3(前月49.8)と上昇し、事業活動の回復を示した。新規受注は、50.2(同50.8)へ低下したが、先行きを示す「将来の活動指数」は62.7(同61.5)と高水準を保持。サービス関連企業は、依然として先行きに対し楽観的な見方を維持している。
  • 四半期ベースの基調を確認すると、4月の総合PMI(52.0)は、1-3月期の平均51.7から上昇した。これは米民間需要の拡大ペースが緩やかに加速したことを示している。サービス業が51.3(同51.4)とわずかに低下した一方、製造業が54.0(1-3月期52.1)と力強く上昇したことが、全体の拡大ペース加速を牽引した。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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