米国:3月鉱工業生産は予想外の縮小も基調は回復トレンド継続

~中東情勢が重石となる一方、AI需要が下支え~

桂畑 誠治

要旨
  • 26年3月の鉱工業生産は、前月比▲0.5%(前月:同+0.7%)となった。これは市場予想中央値同+0.1%(筆者予想:同+0.1%)に反する縮小。背景には、イランを中心とした中東情勢の緊迫化に伴う不確実性の高まりがあり、企業が設備投資や掘削活動に対して一時的に様子見姿勢を強めたことが影響したとみられる。しかし、1-3月期全体では前期比年率+2.4%と加速しており、26年入り後の生産活動は総じて活発化していると評価できる。 内訳をみると、各部門で特有の抑制要因が働いた。まず鉱業は、エネルギー価格の上昇局面であったものの、イラン・中東情勢の混乱による先行き不透明感が投資を抑制し、前月比▲1.2%(前月:同+2.1%)と失速した。公益は、暖冬の影響で暖房需要が減少し、同▲2.3%(前月:同+1.8%)と大幅なマイナスに転じた。また、製造業は自動車部門の縮小などが響き、同▲0.1%(前月:同+0.4%)と、市場予想中央値の同+0.1%(筆者予想:同+0.1%)を下回る結果となった。
  • 製造業部門の詳細をみると、AI需要が下支えとなる一方で、業種間での二極化が鮮明となっている。製造業全20業種のうち、3月に前月比で拡大したのは11業種と、2月の12業種から減少した。プラス成長となった業種では、強固なAI需要を背景にコンピューター・電子、電気設備・機器・同部品等が伸長したほか、非鉄、プラスチックなどの素材関連も総じて拡大した。具体的には、石油・石炭製品(+1.4%)、電気設備・機器・同部品(+1.1%)、航空宇宙・その他輸送機器(+1.0%)、コンピューター・電子(+0.8%)、その他耐久財(+0.7%)、加工金属(+0.7%)、その他製造業(+0.7%)が高い伸びを示した。次いで、プラスチック・ゴム(+0.3%)、非鉄(+0.2%)、木材製品(+0.2%)、紙・パルプ(+0.1%)の計11業種(前月12業種)が拡大した。 一方、縮小した業種は、自動車・同部品(▲3.7%)、印刷・同サポート(▲2.3%)、家具・同関連製品(▲1.4%)、繊維(▲1.2%)、アパレル・皮革(▲1.2%)の落ち込みが目立ったほか、一次金属(▲0.6%)、一般機械(▲0.3%)、食品・飲料・タバコ(▲0.3%)、化学(▲0.1%)の計9業種(前月7業種)に増えた。
  • 生産の基調を3ヵ月移動平均・3ヵ月前対比年率で確認すると、3月の鉱工業全体は鉱業、製造業の押し上げによって同+2.4%(前月+2.1%)とプラス幅を拡大しており、拡大ペースの加速が伺える。製造業生産は+3.0%(同+0.7%)と増加ペースが速まった。同ベースでは、ハイテク関連が+8.7%(同+10.4%)と高い伸びを維持したほか、自動車も同+12.2%(同+1.0%)と大きく増勢を強め、全体の押し上げに寄与した。 ただし、3月の設備稼働率については、生産能力の拡大が続くなかで生産が減少したため、鉱工業で75.7%(前月76.1%)、製造業で75.3%(前月75.5%)とともに低下した。依然として長期平均(1972-2025年)をそれぞれ3.7ポイント、2.9ポイント下回る水準にあり、生産能力の余力は大きいままである。
  • 26年通期の製造業生産の見通しについては、加速が予想される。足元では前年比の伸びが製造業全体で+0.5%(前月+1.1%)と鈍化しているものの、通期では前年比+1.5%(25年+0.9%、24年▲1.0%)に達する見込み。これは、減税に伴う個人消費の喚起や設備投資の拡大に加え、旺盛なAI需要、製造業の国内回帰、地政学リスクに伴う軍事装備品の需要増、そして低い在庫水準を背景とした在庫補充活動などが、今後の生産活動を強力に牽引すると期待されるためである。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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