米国:イラン攻撃前の好調さ確認(26年2月ISM非製造業)

~活発な事業活動が景気を牽引~

桂畑 誠治

要旨
  • 26年2月のISM非製造業景気指数(総合、季節調整値)は、56.1と前月(53.8)から2.3ポイント上昇し、市場予想中央値(53.5)および筆者予想(54.2)を大幅に上回った。トランプ政権による関税賦課が景気減速懸念を招く中、国内需要の堅調さを背景に、22年7月(56.5)以来の高水準を記録した。米国とイスラエルによるイラン攻撃が実施される直前において、非製造業部門は好調さを増していたことが裏付けられた。
  • 2月のISM非製造業景気調査を項目別にみると、入荷遅延が53.9(前月比▲0.3ポイント)と低下した一方、新規受注が58.6(同+5.5ポイント)、事業活動が59.9(同+2.5ポイント)、雇用が51.8(同+1.5ポイント)といずれも上昇した。
  • 新規受注は上昇ペースを加速させており、サービス需要の強さを裏付けている。事業活動も高い水準に上昇するなど、非製造業部門の景況感は極めて良好である。雇用指数も上昇し、労働市場の改善を示した。なお、入荷遅延の高止まりは、需要増よりもトラック輸送等のボトルネックの影響が依然として大きいことを示唆している。こうした中、仕入価格指数は低下したものの高水準を維持しており、インフレ圧力が依然として根強いことが示された。
  • 回答者のコメントによると、業界ごとの状況は分野によって明暗が分かれる。公益やデータセンター関連、卸売は天候や需要増を背景に堅調な一方、建設は高金利と資材高で停滞し、教育は人件費増と資金不足から保守的な運営を強いられている。共通の懸念材料は、関税とコスト増である。農業のように既に対応を済ませた業界もあるが、鉱業や不動産では政府の追加措置への不透明感から投資抑制の動きがみられる。また、半導体やメモリの供給制約、輸送費の急騰が利益を圧迫しており、企業は調達先の多様化やコスト管理の徹底といった防衛策を講じている。総じて、地政学的リスクと物価高が事業の不確実性を高めている状況がみられる。
  • 以下で、構成項目を詳細に分析する。新規受注指数は大幅に上昇し、高い水準となった。業種別では、拡大した業種が18業種中15業種(前月10業種)に増加、縮小は2業種(同6業種)に減少しており、需要の広がりが示された。コメントでは、「AIデータセンターの需要拡大に伴うコスト上昇を受け、年内の購入を前倒しで実施している」、「消費需要の力強さや金利の安定、サプライチェーンの改善、サービス部門の活動の活発化が見られる」といった需要の強まりを指摘する声があった。
  • 事業活動指数は一段と上昇し、高水準となった。拡大した業種は18業種中13業種(前月11業種)へ増加し、縮小した業種は小売業の1業種(同3業種)に減少した。関税の影響を受け易い卸売業が価格上昇リスクの抑制に動いたことで拡大を続けたほか、需要旺盛な公益、医療・社会支援、建設業、情報、金融・保険、企業向けサービス、教育サービス、専門・科学・技術サービスが拡大を維持した。また、鉱業、不動産・賃貸・リース、宿泊・飲食サービス、農林水産業が拡大に転じた。コメントには、「原子力業界は新型原子炉の建設に向けて準備を加速させている」、「2026年に向けた新たな規制要件への対応から、ライフサイエンス分野の顧客が拡大した」といった、規制変更に伴う需要増も報告された。
  • 雇用指数は拡大を示す水準で上昇した。雇用の拡大した業種数が18業種中7業種(同5業種)に増加、縮小した業種数は5業種(同8業種)に減少した。コメントには、「事業活動の活発化を見込み採用活動を行っている」との指摘があった一方、「ICE(移民・関税執行局)の活動の影響で一部の従業員が出勤しなくなっている」との声もあった。 入荷遅延は、小幅低下し、物流の遅れが若干和らいだことを示唆している。
  • インフレ関係では、仕入価格指数が63.0と前月比▲3.6ポイント低下したものの、依然として高い水準にある。18業種中16業種(前月17業種)で上昇し、支払価格の下落を報告した業種はゼロであった。
  • 2月に拡大を報告した業種は、18業種中14業種(前月11業種)に増加した。
  • 米国経済全体の景気動向を示す「ISM総合景気指数(非製造業景気指数と製造業景気指数の合成)」は、2月に55.7と前月比2.0ポイント上昇し、拡大ペースの加速を裏付けた。1、2月平均では、製造業が52.5(10-12月期48.2)、非製造業が55.0(同52.7)とともに大幅に改善した。この結果、同期のISM総合景気指数は54.7(同52.3)へと一段と高まっており、26年1-3月期の米景気が加速していることを示唆している。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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