2025年7-9月期GDP(2次速報値)

~設備投資の下振れを主因に、前期比年率▲2.3%へ下方修正~

新家 義貴

投資の下振れを主因に、前期比年率▲2.3%へ下方修正

本日内閣府から公表された2025年7-9月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比年率▲2.3%(前期比▲0.6%)と、1次速報の前期比年率▲1.8%(前期比▲0.4%)から下方修正された。概ね市場予想(前期比年率▲2.0%)並みの結果でありサプライズはなかった。なお、名目GDPは前期比年率▲0.2%(前期比▲0.1%)と、プラスだった1次速報(前期比年率+0.5%)からマイナスに修正されている。名目成長率がマイナスになるのは24年1-3月期(前期比年率▲2.8%)以来のこと。

今回の下方修正の主因は設備投資。1次速報では前期比+1.0%と強かったが、2次速報では▲0.2%と小幅ながら減少する形に変わった(前期比年率の寄与度:1次速報+0.7%Pt → 2次速報▲0.1%Pt)。そのほか、公共投資(1次速報:前期比+0.1% → 2次速報:▲1.1%)、政府消費(1次速報:前期比+0.5% → 2次速報:+0.2%)といった公的需要も下方修正されている。民間在庫変動の前期比年率寄与度は1次速報の▲1.0%Ptから2次速報では▲0.5%Ptへと上方修正されたもののの、設備投資等の下振れの影響が大きく、GDP成長率全体では下方修正となっている。

今回の2次速報では設備投資の下方修正が目立っており、1次速報対比で内容もやや悪化している。ただ、住宅投資と輸出が足を引っ張ることでマイナス成長という構図は1次速報から変わっておらず、景気認識に修正をもたらすほどではないだろう。

7-9月期マイナス成長の主因である住宅投資については、法改正を前にした駆け込みの反動が影響したことで急減(前期比▲8.2%、前期比年率寄与度▲1.4%Pt)したが、前期比ベースでの落ち込みは一時的なものにとどまる可能性が高い。また、輸出についても4-6月期の増加からの反動やサービス輸出減といった面もあるため、7-9月期の成長率の弱さについて過度に悲観視する必要はないだろう。下方修正された設備投資についても、4-6月期の高い伸び(前期比+1.3%)の反動の面が大きそうだ。このように、7-9月期はマイナス成長となったものの、これまでのプラス成長と均してみれば景気は上向きと言って構わない。当初懸念されていたような、トランプ関税の影響で日本からの輸出が失速するといった事態は避けられており、景気腰折れに直結する動きは現時点で確認されない。

基準改定で名目GDPの水準が大幅上方修正

今回の2次速報値公表に際しては、通常の1次速報から2次速報への改定のほか、24年度について速報値から年次推計値への変更、さらには約5年に一度の「基準改定」が実施された(2015年基準→2020年基準)。これは、「産業連関表」、「住宅・土地統計」、「国勢統計」といった構造統計をベンチマーク(基準)として取り込み、過去の計数を再推計する作業である。

影響が大きかったのはGDPの水準である。今回の基準改定等により、2024年度の名目GDPの水準は624.4兆円と、これまでの615.5兆円から26.9兆円(改定前GDP比4.4%)も上方修正されている。また、直近の数字である25年7-9月期の名目値(季節調整済年率換算)では29.2兆円もの上方修正だ。産業連関表の反映でソフトウェアを中心に設備投資の水準が大きく嵩上げされたことや、住宅・土地統計の反映により住宅賃貸料が上振れたことなどで個人消費の水準も上方修正されている。基礎統計において、これまで反映しきれていなかった部分が一部把握できるようになったことの影響が大きいようだ。

一方、成長率については水準ほどの変更はない。24年度の実質GDP成長率も前年比+0.5%と、改定前の+0.6%から僅かな修正にとどまる。ただ、そのなかで多少目を引いたのが21年度(+0.8%Pt上方修正、改定前+3.1%→改定後+3.9%)と23年度(▲0.5%Pt下方修正、改定前+0.4%→改定後▲0.0%)。23年度は僅かながらマイナス成長という形に変わった。それぞれ個人消費の改定(21年度上方修正、23年度下方修正)が影響している。

個人消費については、20年度のコロナショックからのリバウンドがこれまで想定されていたよりも大きかったという形になった(21年度+1.0%Pt上方修正)。一方、22年度以降については伸びが下方修正されている(22年度▲0.2%Pt、23年度▲0.6%Pt、24年度▲0.5%Pt)。物価上昇による下押しがより明確になっている。

10-12月期はプラス成長を見込むも、多くは期待できず

10-12月期についてはプラス成長を予想している。7-9月期の成長率を大きく押し下げた住宅投資は、前期比でみれば反発するだろう。住宅着工は駆け込み需要の反動から急減した4、5月からは持ち直しており、進捗ベースで計上される住宅投資も10-12月期に前期比で上向く見込みだ。また、設備投資も緩やかな増加が見込まれることに加え、個人消費も冬のボーナス増の支えもあり小幅プラス程度は見込めそうだ。

一方で懸念されるのは輸出の動向である。米国経済は底堅く推移しているが、方向としては減速傾向にある。関税引き上げの価格転嫁もこれから徐々に進んでいくことが予想されることに加え、雇用情勢に陰りが出ていることが、低所得者層を中心として個人消費を下押しするとみられる。また、日本からの対米自動車輸出については、これまでは輸出価格を関税の分だけ引き下げることで現地での販売減を回避してきたが、関税率が15%に定まったことで今後は値上げに踏み切る可能性が高く、米国内での販売台数も下押しされるだろう。

このように、10-12月期はプラス成長復帰が予想されるものの、輸出が低調に推移することで、7-9月期の大きな落ち込みの後にしては物足りないものになるとみられる。年度下期の日本経済は、牽引役に欠けるなか緩やかな持ち直しにとどまることが予想される。

需要項目別の動向

設備投資は前期比▲0.2%と、1次速報の+1.0%から大きめの下方修正となった。これは、法人企業統計の結果が反映されたもの。3四半期ぶりのマイナスではあるが、減少幅は小さいことに加え、4-6月期に前期比+1.3%の高い伸びだったことの反動の面も大きいだろう。省力化投資やデジタル・研究開発投資といった構造的な押し上げ要因もあって、均してみれば設備投資は緩やかな増加傾向という判断に変わりはない。

自動車など一部製造業には逆風が吹いているものの、全体として企業収益はなお高水準にあり、トランプ関税の影響を受けにくい非製造業を中心に業績は底堅い。価格転嫁の進展もあって非製造業の収益環境は改善しており、企業マインドが冷え込んでいる状況にはない。こうした収益環境の良さを背景に、設備投資も緩やかな増加傾向にある。この先、輸出の下振れを主因として製造業の設備投資が抑制されるリスクは残るものの、現時点では投資計画が一斉に先送りされるような局面には至っていない。

民間在庫変動は前期比寄与度▲0.1%Pt(前期比年率寄与度:▲0.5%Pt)と、1次速報(前期比寄与度▲0.2%Pt、前期比年率寄与度▲1.0%Pt)から上方修正された。1次速報で仮置きだった原材料在庫が、法人企業統計の結果を受けて上方修正されたことが影響している。

公共投資は前期比▲1.1%と、1次速報の同+0.1%から下方修正された。1次速報で未反映だった9月分の建設総合統計の結果が下振れたことが影響している。

図表
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新家 義貴


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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